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Planar T* FE 50mm F1.4 ZAとPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM

「50mmレンズと言えば標準レンズ」って、いつの時代の話なんですか?
20年以上前からカメラとセットになってるのはズームレンズで、50mmがセットになってるなんてAFが当たり前になっていない30年とか40年以上前の話では?
そんな太古の昔の話を常識のように出されてもなぁ。。。

〝標準〟の意味から考えるとちょっと面倒なので軽く流したい気持ちもありますが「50mmレンズと言えば標準レンズ」という書き出しを見ると毎回思います。

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model : 百川晴香

その標準(50mm)レンズですが、標準と言うくらい普通の存在で汎用性があり使用頻度が高く当然人気もあって、それ故に開発が盛んで高性能であるはずなのですが、ズームレンズは勿論、他焦点距離に較べ長らく進歩の波から取り残されていた感は否めません。

それもこれも「50mm(標準)レンズは最初に手にする基本レンズだから小型軽量安価であって当然」とか古の教えを風潮する人々の固定観念が、希に浮き世離れしたようなレンズは登場したものの全体的な進化の波を止めていたんじゃないかと思うのですが、この10年程でしょうか、ようやく真っ当な進化を始め現代的になってきたように感じると同時に、今までの鬱憤を晴らすが如くExtremeなレンズも登場してきて各社が技術を競い合う競争の激しい焦点距離になってきたと思えます。

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最近写真を始めた方には信じられないと思いますが、50mm F1.4って10年ちょっと前の2000年代後半までは各社レンズ構成が6群7枚で共通していて断面図も皆酷似してたんですよ。
たぶん70年代とか、或いはもっと前から小変更はあれど基本は同じだったんじゃないでしょうか。

どこどこがパクった、と言うより性能やら生産性/効率を求めたら各社同じ結論に行き着いてしまった、と言う気がするのですが、見た目は似ていても出てくる描写は各社で微妙に異なり、そこは面白かったですね。
下はMINOLTAのAF 50mm F1.4ですが、2021年現在のCanon EFマウントやPENTAX Kマウントの同クラスとちょっと形状が異なるだけで素人目には同じっすw
Nikon Fマウントだけは2000年代後半に(描写の面からではなく、おそらくは別の要因で)新装したので現行Fマウントの50mm F1.4は違いますが、旧いDタイプのレンズは同じ構成。
構造的な違いというと円形絞りのMINOLTA(KONICA MINOLTA)と超音波モーターレンズ駆動のCanonくらいかな。

各社研究の果てに同じ結論に行き着いてしまった程に完成度の高い構成だったのだと考えられますが、まさに進化が止まっていた感じです。
ついでにF1.8も5群6枚と似た構成で有りました。


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長い前置きから本題です。
SONYにはFullflame対応の50mmクラスが豊富に存在し、AマウントではMINOLTAから受け継いだ50mm F1.4 (SAL50F14)や50mm F2.8 Macro (SAL50M28)、FEマウントでは純粋な50mmであるFE 50mm F1.8 (SEL50F18F)や距離の近いSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (SEL55F18Z)等があり、近々F1.2やF2.5も追加されます。
他にもMINOLTAからSONYへ受け継がれなかったAFレンズ(F1.7)もあるので純正or純正に近い AF 50mmレンズの種類は呆れる程豊富と言えるでしょう。

そんな中からPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA(SEL50F14Z)とPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM(SAL50F14Z)について書いてみようかと思いますが、興味のある事以外は関心が無いので確認はしていません。
また、注釈がない限り唐突に現れる画像の使用レンズはバラバラで、比較画像は露出に関して似た方向に調整していますが、それ以外の色傾向や歪み補正、周辺減光補正等はしていません。
特に色の違いなど後処理だけでなく、カメラ内部でどうとでもなる&それを売りにしているカメラもあるので無意味ですからねwww

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model : 楠原安里梨

この二つのレンズの発売時期は3年違ってPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAは2016年、Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMは2013年なので最新とは言えないのですが、個人的な感覚だと双方新しいです。

Aの方は、この年にFEマウントが発表になり、実質Aマウント最後のレンズだったような記憶が… 50mm F1.4が業界的に高額/高性能化するなかでSONYでの初期段階という印象があります。
FEの方はFE 50mm F1.2 GMと言う本命が控えているのでF値違い、ブランド違いとはいえ実質というか認知として旧型になるのかしら?
構成はFEの方がEDレンズってのを使ってピントの合った前後に発生する軸上色収差を補正し、より現代的な開放画質になっています。



それぞれAマウントとFEマウントですが、Aマウントレンズの一部(SSMやSAM)は多くのFEマウントでも純正マウントアダプター経由で一部機能を除き問題なく使えるので比較検討対象に成り得る…と言うか、価格や性能を踏まえるとした方が良いですね。 焦点距離は違いますが85mm F2.8 SAM (SAL85F28)とかスーパーレンズだし。
ボディによっては全てのAマウントが捕食対象となるので、それはそれで大変ですけれども、全体的にFEよりC/Pは良いのでお得感はあります。
ただ、LA-EA4だけは止めておくべきです。
これに搭載されたAFはAマウント低価格カメラを使用した人には最悪と認知されているはず。 こんなものを使ってまでAFに拘るべきじゃないです。

さて、外見を見比べると、較べるのが間違いだったと思えるような大きさの違いが。 たった三年で設計基準(大きさと重さの許容範囲)が大きく変わった事が窺い知れますが、コンパクトを旨とする筈のミラーレス用レンズPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が大きく重いと言うのは本末転倒感を多大に感じさせますw

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FEにはSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (SEL55F18Z)と言う小型レンズの存在があり、より高い性能を目指し大きさと重さを許容したと言う事でしょうし、発売時点でも2021年現在でもこれより大きく重い50mmレンズは存在するので、そう考えたら普通?
いや、やっぱり普通じゃないな…
フードも花形でデカいし。
85mm(FE 85mm F1.4 GM)と大きさが変わらないとかどうかしてる。 重量は軽いけど、一昔前のF2.8通し標準ズームとあまり変わらない大きさ。
さすがにメーカーも判っているのか自制心があるのか〝小型・軽量化を実現〟とか謳ってない。
鏡胴は金属ですが、あんまり金属感はないような印象です。

それに較べてPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMは金属とガラスの塊感がプンプンしますが、案外小さく軽い。
500gを超える72mmフィルター径のレンズに対して〝小さく軽い〟と称するのはだいぶ間違っていると思いますが、でかいレンズを見慣れている事もあってか馬鹿デカい感じはしません。 単に大きいだけ。
マウントアダプター(LA-EA3)を介してもAの方が少々小さくて軽い。
ただ、太さは同じ位で、持った感じも同じ気がするので、実使用時に大きさの違いを感じるのは可搬時くらいですかね。

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMは高性能50mmF1.4の先駆けだと思っている、SIGMA AF 50mm F1.4 EX DG HSM (2008年発売)のサイズ感を思い出しました。
このレンズ、真ん中番長で真ん中だけならたぶん、今でも最高に性能が良いんじゃないかと、そんな気がする。

これらレンズの大きさ/重さが許容できるかどうかは、70-200/F2.8を持ち歩いていた時があった経験則で言えば〝使いたければ大きさ/重さは関係無い〟ですね。 それを尤もらしく正当化する為に〝許容範囲内〟とか〝適度なサイズ感〟とか曖昧な表現をしますが、最初に許容範囲を示さないと明確に判りませぬw
個人的にPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAは完全に常用許容範囲外。 このサイズが許されるならCanon EOS 1D系やNikon D一桁を普段使い出来る感覚です。
以前秋葉原で身体の大きな外国人の方がNikon D5を首から提げていてD40とかそのへんのカメラに見えた事がありますが、そんな人でもない限り無理。Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMはギリですが、出来れば嫌ですね。

Planar T* FE 50mm F1.4 ZAは明確な目的を持って撮影する用途向きで、目的も無くブラブラと徘徊する際にはデカくて重くて邪魔くさい。
重さは我慢できますが、大きさ(長さ)はカメラを肩から提げる際にも鞄への出し入れでも邪魔になり億劫です。 実際、今回の比較でPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAは出し入れに手間が掛かって面倒臭かったです。
ただし、撮影時に重さや大きさは気になりません。

ちなみに、Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMはFEマウントでの使用を前提に書いていますが、ネイティブ環境のAマウントボディだと最高にしっくりくる。
決して軽くないけど、手に馴染むというか、重いとかデカイとかの不快感がなく自然に収まる。 手の大きさとかそれぞれの感覚の話ですけど、個人的には最高に良い。

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フードは双方兼用出来ます。
FEは花形、Aは筒型で、Aの方は短い単なる筒なので効果は高そうじゃない上に、レンズ本体価格の割には安っぽく残念感が漂います。 花形は嵩張ると言えば嵩張りますが効果は高いと思う。
Planar T* 85mm F1.4 ZA用の金属製先端ゴム巻き内部植毛超高額フード(定価8K)が装着可能で、これは花形の最浅部より深いので、そうすると遮光性は同じ位でしょうか。
ミラーレスの場合ボディが軽いので、こういった大きく重いレンズはカメラ側を上に立てて置いても安定しているので安心ですね。 特にゴム巻きだと安心感がある。

尚、時期によって違うかも知れませんが、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAはおそらく海外製(製造国の記述無)、Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMは日本製。
今時気にする人は多くないと思いますが、工作精度が基準値であれば何処で作っていても変わらないと思いますよ…
Carl ZeissはGERMANYじゃないとダメ!な人も昔は居たみたいですけど、そもそもかなり前から軍事や医療がメインで利益率の低い写真レンズの自社設計製造はしてないんじゃないですかね? 知らんけど。
そういうのに拘る人は、今度は「中国やタイランド製より日本製が良い」とか言い出すクチだと思うんですよねぇ…
産業や雇用を守る、と言う点では日本製が良いに同意しますが。

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model : 佐藤絵里香

双方、小型とも普通とも思えない図体ですが、肝心の描写は開放絞りでPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が当然のようにクッキリ・ハッキリ・シャッキリ。 もわっとした感じは一切無くPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMとは1段以上の違いを感じさせます。
それぞれ二枚目は中央の等倍。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM

手持ちなので色々違うのはご容赦頂くとして、周辺減光はFEの方が多めに感じますが、無慈悲とも思えるシャープな描写は3年の時間経過による技術の進歩とデカくて重い事には意味があると感じさせます。
それに対しAの方は旧い古典的な50mmに較べ新しい設計である事を感じさせる好描写であるものの、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAと較べてしまうと隔世の感が…

全体的にコントラストが高くなる明るい状況ではどうか、更に状況を変えて見ます。 絞りは同じく開放。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM

状況を変えたら更に差が出た感がwww
1段どころか2段は確実に差があります。 較べるべきではないような、そんな差です。
FEは、やはり周辺減光こそ多めですが、パープルフリンジだが何かもあまり目立たないので余計な描写がなく先鋭感を引き出しています。 縮小でもその違いが、等倍だと明らかな違いが、有り過ぎる程の違いが感じられます。
3年…たった3年でこれか…10年以上違うんじゃないの?って感じ。
完全に個人的要求性能以上の開放描写性能なので持て余すくらいですが、まだまだ足りないという人もいるでしょう。
この年代のレンズでこれなので、これより新しい世代のレンズは個人的な要求性能を遙かに超えてしまっているでしょうね…
開放で撮る事も、開放で遠景を撮るなんて事も絶対しないから今まで知らなかったよw

どちらも周辺画質はマトモで開放から中央に較べ極端に酷いと言う事は無く、真ん中番長ではないので、絞ってゆけば周辺は中心に追いついてゆき、安定して使えます。
FEの全領域性能MAXはF4くらい、AはF5.6くらいです。

現実問題、遠景を開放で撮ると言う事は通常行わないので特殊事例とは言え、FEの方がより浅い絞りでシャープに描写するので実用的な常用範囲の広い絞りを実現していると言えるでしょう。
AはF2.8くらいになるとFEと先鋭感はあんまり変わらない感じになるので、FEは2段分稼いでいると言えるかも知れません。 勿論、絞った方が軸上色収差だとか周辺画質、周辺減光と言った要素で有利になるので〝絞りの自由度が増す〟以外のメリットは昨今、特にないと思いますが、それが重要な局面もあるかと。
以下はPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM のF2.8トリミングですが、絞った分、余計な色づきが目立たなくなり、全体的には良い勝負です。

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遠景、ある程度の距離ではF2.8~で双方の描写は遜色がなくなる(拮抗する)と考えられるので、FEは特性を生かす場合、それ以下の絞りで撮影する必要があるかも知れません。
そういう傾向は旧来の50mm F1.4とF2、F2.8の関係性と同じですね。

同じメーカーのF値違いを較べる、或いは各メーカーの同じクラスを較べる、更には同じF値で単焦点とズームを較べる、と言う事は過去多くの人々によって数え切れない程試行されていますが、「ホリゾントでF5.6~F8迄絞って撮ったら判別が難しい」と結論して良いと思います。
F1.4とF1.8では価格の安い(暗い)方がコストパフォーマンスが良く感じられるのは、絞り込むと同一、或いは遜色なくなるからで、余程設計年数に差があったり、浅い絞りで周辺画質限定で評価しない限りは変わりは無いと言っても良いです。

高額なクラスとも成ればその違いを見分けるには相当困難であり、更に縮小してしまうと〝同一〟と言っても差し支えなくなってしまいます。

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model : 柳川みあ

では何処が違うのかと言えば、やはりボケです。
ボケ質こそが違い
そして、そこが個性です。
絞り込むと、或いは、先に示したように縮小すると先鋭感の違いは皆無と成り得ますが、ボケ質は違います。
更に言えば、シャープだなんだという価値基準は新しいレンズに簡単に抜かれ旧いレンズの価値(性能)は薄れますがボケ質は別で、官能的なボケ質は時が経ってもそのままの価値があります。

ボケ描写の中でも判りやすい点光源描写に関して最近の高性能レンズは似通ってきていて、違い=個性、ではなくなって来ている感じもします。
優劣という観点では羽形状の絞り耐性くらいかも。
ですが、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAとPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMは新世代設計と旧世代設計の差があるので、点光源はだいぶ違います。
判りやすいイルミネーションを後ろボケで開放とF2とF4で撮影しました。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZAは適度な縁取りがある最近の高性能レンズっぽい今風の描写ですが、縁取りは大人しめでクッキリ型。 APOレンズとかEDレンズとかUDレンズと言われてるようなものを使ってると、皆こんな感じな印象があります。
渦巻きっぽい描写や縁の変色もなくはないですが、無視出来るレベル。

Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方はどうでしょうか。 絞りは同じく開放とF2とF2.8です。

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明らかにAの方が写る範囲が広いですが、使用時にそれを実感する事はないので、あまり気にする必要はないとして、、、
Aの方が縁取りが殆どなく周囲に溶ける綺麗な描写ではありますが、青くて輝度の高いor明るめにイルミを撮影すると目立ち易い渦巻きが見えます。 この程度であれば殆ど気にする必要はありませんが、〝青いイルミだと目立つ〟事は留意しておくべきかと。
状況によっては所々縁が過剰に目立ち煩く感じる時があり、F2~辺りで目立たなくなりますが開放を常用する場合は油断出来ません。
同様の症状はFEにも発生していますが気になる程では無いです。

口径食はF3.2で完全に解消すると思えるFEに対してAはF3.5までは気になるのですが、Aの問題は口径食より羽形状で、口径食が解消されるF3.5ではカクカクです。
FEはF3.2でまだ円形、F3.5で無理矢理円形と言える状態を保っているので高い絞り耐性が有ると判断出来ますが、Aの方はF2.8程度が円形と呼べる限度でしょう。
11枚羽絞りの効果が発揮された形です。

が、FEの方には異様な違和感を感じます。
〝開放にも関わらず真円じゃない〟と言う恐ろしい症状ですw
比較すると、AのF2やF2.2程度とFEの開放は同じ位の羽形状で、目視でも解放時に絞り羽根がはみ出て見えています。
下はPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの開放ですが、ボケ量が大きい程カクカクが目立つ。

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これは気になるか、気にならないかの感覚的な問題ではなく、そもそも円形ではないので〝円形を保つ〟以前の基本的な構造上の問題です。 欠陥と言っても良い。
WEB上の作例を見る限り、FEマウントにはこの厄介な症状を持つレンズが多い気がする。
同様の悪癖を持つSonnar T* FE 35mm F2.8 ZA程酷くないですが、ちょっとこれはなぁ…

とは言え、イルミネーションのような強い点光源でない限り露呈する事は多くないと思うので通常は問題にならないのと、面白い事に絞ると丸くなるのでF2程度に絞れば問題は無く、前ボケだと以下のように目立たない(判らない)のですが、「開放だから丸い」と考えているとぶっ倒れるので留意しておく必要はあると思います。
しかし、絞ると丸くなると言う事は円形絞りとしての精度は出ている訳で、まったく勿体ないとしか…

ZA印は検品者のサインが入っていて、何故か判らないけど謎にウレシイと言う効果があるのですが(ワタシだけ?)、検品者でてこーい!とか言いたくなる。
でも仕様ですよねぇ、これ。

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Aは開放近辺での縁の変色、FEはその解像力を生かそうと開放にすると状況によっては点光源描写が邪魔をし、だけど円形っぽい状態は長く保つ、と言う…
結局、どちらも問題がある点光源描写と言えますが、双方適度に絞れば問題なく、イルミネーションのような状況でない限り羽形状が露呈する事は多くないので問題にはなりにくいと考えますが、白黒付けたかった身としてはいまいちスッキリしない感じです。

では、それ以外のボケ描写はどうでしょうか。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM

難しい状態を選んでいるので仕方が無いのですが、なんだかこういうのが多くてどうしようかと…これでも判りやすい方なので。。。
どっちでも良いからどっちか好きな方を使え!とか投げ出したくなる気分ですけれども、状況どころかちょっと角度を変えると変わるのでこの事例だけで決められませんが、強いていえばPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が二線ボケが多い(出やすい)ような気がします。
勿論、気にならなければ問題はありませんが。

面白いと言うか面倒なのが下記の状況。
絞りは双方F2です。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM

どちらも良好なのですが、Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が柔らかくより良い感じに見えるのですが、怪しげな箇所を拡大するとFEにはない大きな二線ボケが発生しています。

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Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM

描写としてはPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が正しいのですが、全体として観た時、その部分的な描写は全体の印象と一致しない時もある、と言う…
善し悪しは感覚の問題なのですが、本当にめんどうくさい。

ちょっと違和感を感じたのがPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの下のカット。 絞りはF2.8です。

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なんというか、マクロレンズ的というか芯の残ったように感じるボケ描写でちょっといただけない感じがするのです。
が、それを踏まえて下のカット。 絞りは同じF2.8です。

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こちらはかなり良い感じです。
どうやらこの例だと全体的に明るいと描写がイマイチになるっぽく、逆に暗めだと良い感じになる気がしますが、この辺は感覚の問題なので…

明確な違いが見えるのは下記のカットだと思います。
この違いはこの二つのレンズに限らず発生する、新世代レンズと旧世代レンズの大きな違いです。
双方絞りはF2.8で、まずはPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA、次にPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM

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左上の処理は双方同じ位ぐちゃぐちゃですが、これは通常の振る舞いなので気にしないとして、点光源描写は周囲に馴染むPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMと、浮いているとまでは言いませんが、クリアで綺麗な点光源描写過ぎて自己主張が強いPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAで大きく違います。
溶け方に大きな違いは見いだせませんが、点光源描写はPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が柔らかい描写です。

この二つのレンズに限らず、新世代設計と旧世代設計では緑があるような自然な場所での点光源の馴染みは描写が全く違う事が多いです。
人工的な発光物体やら金属等の反射に関しては新世代の方が印象の良い描写なのですが、葉っぱの反射や木漏れ日といった自然物から発生する点光源は概ね旧世代の方が周囲に馴染み違和感がありません。
余計なものがある程度あった方が自然、という事かも知れません。

そういった理由でPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAのような新しい世代の点光源描写を見て「ボケ(点光源)描写が柔らかい」とすると個人的には「?」です。
レンズによっては過剰に変色した色が纏わり付くタイプもあり、それはそれで煩く好ましくないですが、周辺に溶け込んでゆく柔らかい描写とは言いかねるかと。
〝正確な描写〟という点では新しい世代かも知れませんが、そもそもボケは肉眼では見えない特殊効果みたいなもので正確性などはなく、だからこそ主観的判断になり万人を納得させるのは困難なのですが、主観的であるが故に〝揺らぎ〟が多くなるのは問題です。

解像力とボケの柔らかさは相反する、と言う事を実感させられますが、その辺りの案配をどう上手く仕込むかが善し悪しのカギでしょう。

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おねーちゃんの画像に辿り着く前にいい加減疲れてきましたが、ようやく現実的な比較を。

先にPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAを、次にPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMです。
若干撮影距離が違うのはご容赦頂きたく。

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model : 廣川かのん

絞り開放ですが、等倍での解像力では当然FEの方が良いものの、どちらも実用的な解像力があり遠景で感じた程の優劣は感じません。 感覚的な話ですが遠景が100対30~40位だとしたら、100対70~75位に差が縮まっています。
実際のところ、AはFEに較べ軸上色収差が左右の顎に出てしまっていて、等倍ではあんまり好ましい感じではないのですが、縮小すると判らない程度。
FEはAに合わせて増感したも関わらず、周辺はまだまだ暗く周辺減光補正は必須と言えるでしょう。
開放描写で個人的に〝ボケが暴れる〟と称している落ち着きのないボケの振る舞いはどちらも同じですが、FEの方は距離が近くボケ量が少々多くなっている事と周辺減光が大きい為により目立つ格好じゃないかと。
いやしかし、普段は絞って撮るので、こんなに周辺減光が凄いとは思わなかったw

ここは別途精査する必要はあるのですが、FEの口径食の方がAより大きく中央に影響を及ぼしている、そんな気がするのですが、口径食はカメラ内で、或いは後処理で補正可能なので大きなデメリットにはならないと考えます。 但し、理屈上周辺のノイズは増える訳ですから留意は必要です。

ボケの暴れを解決するには接近して大きくぼかす&画面の端に追いやる以外に方法は無いと思いますが、通常1~2段絞れば解決するので個人的には全く気にしません。 F値でボケ量を稼ごうなどと考えなければ良いだけの話なので。
下はPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの二段絞りF2.8ですが、問題ない描写となります。
やっぱ、絞って撮るのが正解www

このレンズに限らず、開放性能が良いとメーカーさんは「開放で撮って」とか言うんですけど、二段絞った状態が開放だったら開放で撮りますよ。
重要なのはボケ量ではなくボケ質です。

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遠景では圧倒的な優位性を見せたPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAですが、人物描写の距離では双方ボケ質を考えて絞る必要がある上にPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMが接近によって解像力を補うので同等くらいな感じに思えてきましたが、近接ではどうなるでしょう。
撮影状況としては下記のような感じです。

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背後の濃い色の方は自らは発光していない木漏れ日系、黄緑色の方はお日様の光反射系の点光源で公園などではあるあるな状況ですが、上記の状態から接近して絞り開放で撮ってゆきます。
まずはPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA

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口径食の影響で点光源が潰れて見苦しいですが、背景状況は溶けて判別不明、半身より周辺減光が目立たずマトモな描写となっています。
左目の隣の点光源に主張が感じられますが総じて大きな問題は感じず、概ね優しく好ましい描写だと思います。 

次にPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMを見てみます。

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同様に口径食の影響が見られますが、やはり溶けてしまって状況判別は困難、半身よりマトモな描写で、解像力が劣っている感はなく、ますます使える開放画質となり解像性能では殆ど遜色は見られません。
左目の隣の点光源描写もこちらの方が柔らかいです。
縮小すると判らないものの、ボケ周囲に出る色づきが頬にも多少出てしまっている事が気になると言えば気になるかも知れませんね。

但し、こちらは重大な問題ですが、右上の方にイルミネーション描写の比較で問題視した〝縁が過剰に目立ち煩く感じる〟症状が明確に出てしまっていて、騒がしく、柔らかい描写とは言えないものになっています。
1段絞れば目立たないのでありますが、木漏れ日系の、点光源の中では最も弱い方に属する状況なのにも関わらずここまで目立つとは…
このレンズに限らず同様の症状を持つレンズは多数有り、絞ると解消する場合があるので、やはり開放描写は避けた方が無難です。

念の為に書いておくと、点光源描写が苦手だからといってボケ質が芳しくないと言う訳ではないです。
点光源描写が苦手、或いは好みではなくてもボケが綺麗なレンズは多々存在しており、点光源描写〝も〟納得できるレンズを要求していると言う事です。

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結局、近接開放だと点光源はPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が良い感じだと判断出来ますが、実際に使用する際には強い点光源が背後にあると印象が変わる事が想定されるので、同じ絞って使うならPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMを1~2段絞って使う方が状況を問わず安心かな、と結論できますけれども、なんだか釈然としない面もありますね。
遠景くらいにハッキリしてると良いんですけど、どちらも〝絞ったら解決します〟で殆ど全て丸く収まるような。 たぶん、大概そうなんだろうなぁ…

実は、状況説明で使ったカットは双方のレンズで抑えているのですが、F2.8で撮ったので描写的にそんなに大きな違いがなく、比較では使えなかったのでPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAにしてます。
そっちの方がカワイク写ってた。

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model : 舞花

ボケ描写では違いが見られる二つのレンズですが、先に書いたようにボケ描写が無関係な状況では違いは殆ど判りません。 この二つのレンズに限らず殆どのレンズは同じようなものです。
比較画像以外で唐突に現れる画像に対して「これは○○が○○だから○○だ」と言い当てられたら千里眼的な目を持っているかも知れません。
撮った人にもわかんねぇわwww

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背景が整理された状況だけでなく、実際のところ通常使用していても違いは判りません。 これだけ比較したのに撮った本人にも判らないとは悲しい話ですが、本当に判らない。
50mmを用いて屋外で全身を撮るような事はしないので先鋭感の違いは殆ど無いし、通常1.5段~2段以上絞るし、イルミネーションとか、その差が判りやすく出るような状況でない限り、同じように使えて同じように見えます。

以下は絞りF2.8でそれぞれ撮影しましたが、どちらか判りませんもの。

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「このレンズはスゴいんだぜ!」と他人を納得させるような撮影はかなり難しく、そして大概、その撮影は他のレンズでも可能だったりしますw
まさに自己満足の世界。

歪曲はPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が大きくそれなりに目立ちますが、補正は容易なので気にする程の問題ではないですね。
補正すると結果として画角は狭くなるのですが、元々Planar T* FE 50mm F1.4 ZAより広く写るので〝補正して同じ位〟かも知れません。
何れにしても、カメラ内で、或いはPC処理で問題の解決が図れる要素なので問題視する程ではありません。

AFの合焦速度は、、、わかんないや。
どちらも「遅い」とは感じませんねぇ。
人物撮影では通常、超迅速なAFが必須という訳ではないので、個人的な使用方法では特に違いを感じる事は出来ません。
スナップみたいな咄嗟の状況では迅速なAFは必要かも知れませんが。

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model : 川原みなみ

以上、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAとPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMを見てきましたが、同じ条件で撮り較べると今まで感覚的だった違いが明確になって判りやすいですねぇ。
単独だと明確な根拠無く「○○だろう」「○○だと思う」で済ませる事が出来ますが、比較だと明白に判るし、新たな発見もあるので比較の方が良いとは思いますけれども、F1.4クラスを〝開放で撮る〟なんて普段しないので新鮮ではありますが、大変なのでちょっとこりごりな感じが。
ただ、今まで気づかなかった部分が見えてきて勉強になりました。

同じフィルター径(有効径は判らないので目安)で周辺減光はPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が半段程暗いにも関わらず、口径食は1/3~1/2穏やか、と言うのは発見でした。
てっきり両者には相関関係があって、周辺減光が多い=口径食も多い、だと思っていたのですが、必ずしもそうではないみたいで…
一説には後ろ玉がデカいと口径食が少ない説があるんですが、どうなんですかね。

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価格はPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM (SAL50F14Z)は3万円程安価。
マウントアダプターを含めてもまだ安価と言え、中古品を候補に加えると通常AマウントはFEマウントより安価となるので価格差は更に開くと予想されるのでC/Pで考えるとPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が良いですね。
ただ、余計な部品を使う事になるので信頼性という点ではPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が良いです。
双方安価とは言いかねるお値段ですが、FE 50mm F1.2 GMのお値段を考えると、性能の差を考えても双方お得感が感じられなくもなく…ああ、こわい。

正直なところ、較べてみたら思ってたよりどっちもあんまり感心しないなぁ…と言うのが率直な感想です。
双方価格なりに大変優れている「とても良いレンズ」と思えるし、開放描写に関してPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAは「凄いレンズ」だと思いますが、完全に個人的要求性能を超えているので、その余力をボケ質に…と思ってしまいます。
解像力に重きを置くPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAと、解像力とボケどっちつかずに思えるPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM、という感覚で個人的な要求にはちょっと足りない感じです。
暗所がメインとなるならFEの方が良いでしょうし、明るい状況ならAの方が良いと思われますが、、、
とは言え、何れも一定の基準を超えていて得手不得手があると言う事でそれぞれに適した状況で使ってゆけば良いので、そこは前向きに考えたいところ。

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