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SONY FE 35mm F1.4 GM (SEL35F14GM)

35mmと言う焦点距離は汎用性が高く、目的を決めないスナップ用途の場合は50mmより広く写るので使い易く、大概50mmより被写体に近づけるので接写も出来る。 テーブルフォトなんかも50mmでは収めるのが大変なんですが35mmなら余裕と、常に持ち歩く常用に適していると感じています。
どうしても50mmの画角が必要な場合はAPS-Cモードでクロップすれば問題ないし。

おねーちゃんを撮ると言う用途に限っては、35mmは50mmより遠近感が出るので痩せたように、或いは強調して撮る事が容易で、比較的近い距離感を演出出来るので余所余所しさがない絵作りがし易く(その逆も)、個人的には状況によってポートレートレンズとか言われる85mmより使用頻度が高く、街中や水着系のカットでは殆どメインの焦点距離と言えるかも知れません。
距離的に接近するので、よく知らないor不慣れなモデルさんに対しては使いづらいかも知れないけど。

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model : 柳川みあ

FEマウントの35mmは種類豊富ですが、青いバッジの二本はAマウントに於ける青いバッジとFEマウントに於ける青いバッジの違いを明確にしたと思っています。

自分の場合、〝先鋭感は地底レベルだがボケ質だけは凄い〟Aマウント35mm F1.4 G (SAL35F14G)の信者なので、それとは真逆とも言える描写傾向を持つレンズを使うのはキツイ。

元々あの青いバッジの光学メーカーはボケ質なんて興味は無くて、MTF至上主義。
過去、そのMTFの出涸らしとして〝偶々〟ボケ質の良いレンズが登場したに過ぎず、欧米は元々ボケ質文化がなくやむを得ない事ではありますが、現在も配慮はするとしても極上のボケ(官能性能)を求めて、なんて設計思想は無いと思います。

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カメラ業界でブランド力に劣るSONYが2006年にKONICA MINOLTAから事業譲渡を受けた際、青いバッジのご威光を借りたのは判る話で、別製品では既に借りていた事も踏まえて不思議な事ではないのですが、Aマウント時代の青いバッジはMINOLTAの思想を強く残していて、ピント面のシャープさとボケ質の良さの両立を目指していたと感じています。

85mmだとMINOLTAのAF 85mm F1.4 GからSONYのPlanar T* 85mm F1.4 ZAに乗り換えるのは描写傾向が同じだったので容易く(単に高性能化しただけ)、Aマウントでは135mmや24mm、50mmも焦点距離的なキャラ付けから傾向の違いはあっても、目指す方向は同じで安心感がありましたが、FE ZAでは明確に変更されました。

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model : 川原みなみ 

Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA (SEL35F14Z)を購入する際、ヨドバシの派遣販売員さんに「35mm F1.4 Gと違う?」と訊いたら「ぜ~んぜん違いますぅ~」とアドバイスされ「F2.8の方はどうです?」と訊くと「いやぁ~~~こっちも違いますぅ~」とのお答え。
比較対象が悪すぎた気もしますが、う~ん、確かに。
結局、Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAは1週間程で中野にて現金化されSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAに成りました。
もうこうなったら小さくて軽い方がいい。

EマウントになってSONYからの青いバッジは、元々青いバッジが目指していた描写傾向に戻ったと言えなくもなく、戦略としてAマウント時代と同等にご威光で一般的な関心を呼び込み、後に追加される自社ブランドG Master系との差別化(と言うか、もにょもにょ)も当初から念頭に有ったのでは無いか、と思えます。

SONYのG Masterクラスの基本的な考え方はMINOLTAの方向性と同一なので、さすがに20~30年前のレンズと同じとは言えないとしても期待感がありますね。

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MTF曲線はかなり直線に近い印象で135mm GMの神がかり的な凄さは有りませんが、放射線状/同心円状共に高い数値で揃い、周辺の落ち込みも少なく危険な(高性能過ぎる)感じがします。
中望遠以上なら珍しくないのですが、広角系で周辺が大きく落ち込んでいないのは、かなり凄いような気がする。

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我が家にやって来たFE 35mm F1.4 GM、大きさとしては35mm F1.4 Gより明らかに大型化しましたが、他社同スペックと較べて小型と言え、重さは35mm F1.4 Gと同程度(524g)に抑えられています。
昨今の高性能レンズは過剰に大型化する傾向があって、小型化するカメラとは逆の変化を遂げている状況を考えるとたいへん喜ばしいのですけど、高性能なレンズって以前より長くなってません? あと1~2cm短いともっと嬉しい。
絞りリングは少々固めで不用意に動く事が無く良い感じです。

絞り開放での解像力やコントラストと言った描写力は当然のように良好で、個人的にはDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAでも性能が良すぎるくらいなのですが、中心部分だけでなく周辺まで軽く上回っているような気がします。

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状況を変えても印象は変わりません。
絞り開放でも周辺域までスッキリ。

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全領域性能MAXはF4~くらいだと思います。
レンズによっては画面中央の解像力は凄いけど、周辺の解像力が中央に及ばず絞っても周辺が追いつかない(見劣りする)レンズがあるのですが、中央部は解放から絞り込んでも(印象的に)あまり変わらず、周辺が上がってゆくイメージ。

開放遠景性能が良い方が高性能だという説得力がありますが、個人的に開放で遠景を撮る、なんてことは通常は行わないので、開放からシャープだのなんだのは興味はあっても実使用レベルでは使用状況が限られるのでさほど重要視していません。

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model : 楠原安里梨

とは言え、暗い場所でも力押しで撮れてしまう。
上のカットはF2.5ですが、性能の低い35mm F1.4 Gでは撮影は無理だと諦め、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAだと撮影は出来てもボケ質を諦めるような状況。
そんな悪条件でも不満無く撮れるのはありがたい。


解像力やコントラストは素晴らしいFE 35mm F1.4 GMですが、ボケ質で35mm F1.4 Gを超える事が出来るかが個人的な関心事であり、あのボケ質を備えつつ現代的な描写となれば嬉しい。

下は開放ですが、口径食の影響があるものの安定した描写で大きな問題を感じません。

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model : 廣川かのん

焦点距離が長くなるとピント面がそこそこシャープであればボケ量でボケ質を誤魔化す事も、相対的にピント面をシャープに見せる事も可能になるのですが、絶対的ボケ量で劣る35mmではその手段は難しいのでボケ質が本当に良くないと見栄えがしません。
その点、FE 35mm F1.4 GMは問題ないようです。

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二線ボケのような煩いボケも発生しますが、そもそも発生しないレンズはなく〝出るだろうと思われるところで出る〟ので振る舞いが把握しやすい。
下のカットはF2.5で「ここで二線ボケをバッチリ出してやるぜ」と考えて撮影し想定通りバッチリで最高にぐちゃぐちゃです。
逆に言えば出そうにない場所では出ない傾向で、とても扱いやすいと言えます。

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全体的なボケ質に大きな不満がないFE 35mm F1.4 GMの特に感心するのが口径食の少なさと絞り羽根の精度。
以下は開放とF2、F2.8ですが、口径食は絞り開放の時点でかなり大人しく目障りではありません。
前ボケなら歪みが大きくなるかも?

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口径食はF2辺りで目立たなくなりF2.5で有れば状況(ボケ量)を問わず安心して使用可能です。 実写レベルだとF2程度では状況によってボケの暴れが気になる場合もあり、F2.8に接近させて撮るのが安心ではありますが。

絞り羽根形状はボケ量に左右されるとは言えF4までは〝ほぼ〟円形と言って良い形状を保ちます。 同じ11枚羽根でもGMクラス初代の85mm GMより明らかに精度が高くなっていますね。
羽形状がバレやすいイルミネーションでF4なので、通常使用する限り絞り羽根に起因する描写の破綻は殆ど無いでしょう。

ボケ量が大きくなると口径食は更に目立たなくなるので、解放近辺での近接撮影は実用的なレベルに達しているように感じます。
が、たぶん、ちょっと絞った方がやはり確実でしょうね。

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渦巻きは見えますが通常は気にする程ではなく、縁取りはそこそこ存在し、周囲に溶け込むような振る舞いはしない、と言うのは最近のレンズでは主流の描写。
ここに関しては最近の高性能なレンズは皆同じ感じで優劣は無く、無個性とも言えます。

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こういった縁がある点光源ボケをするレンズは〝ここにイルミがあります〟という主張が強く感じられ柔らかい描写となりませんが、ボケ量を増やせば多少改善するでしょう。
実写だと適当に溶け込むような振る舞いもあるので、縁がもうちょっと大人しかったら文句なし無しなんですけど。

35mm F1.4 G等の旧いレンズと比較し、点光源の縁は強めである事に変わりは無いので、以下はF4ですが場合によっては過剰に主張して悪目立ちする可能性もあります。

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この辺りの違いは単体より比較の方が判りやすく、別のエントリー「Planar T* FE 50mm F1.4 ZAとPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM」をご覧頂ければ。

最近のレンズは最小絞りがF16と昔に較べて1段落ちているので少々困る時があります。
この距離だと回折現象で描写が極端に甘くなる事は無いので実用範囲ですが、距離が離れると話は変わってくると思います。

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AF速度は普通なのか速いのか判りませんが、遅くはないです。
歩きながら撮った下のカットのように顔面を狙う感じなら外しづらく安定してましたが、この辺りはカメラによっても違うかも知れません。

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AFの精度は、、、ボディにも依ると思いますが、レフ機より落ちますね。
スナップ的な用途の場合は殆ど外す事はなく問題ないのですが、短い時間でワンショット連射し大量に撮るようなグラビア用途だと結構な数を外す。 これに関してAFモードは無関係でAF-SでもAF-Cでも同じ。
実際のところ、ミラーレスはその用法に関して満足な結果を得られた事はないのですけど。

最近のレンズらしく軸上色収差(ピント面の前後に現れる色つき)は抑えられていて、出るには出るけど絞って使えば通常問題ないので、開放での使用頻度が低い場合は気にする必要はないと思います。

フレアやゴーストは、装着した保護フィルターの可能性がありますね。

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model : 佐藤絵里香

欠点を挙げるならば、MINOLTA時代から採用されている伝統のフォーカスホールドボタン、これが左側に一つしかありません。
Gクラスや無印なら理解するとしても、GMクラスで有れば使用状況を限定しない配慮が欲しいところですが、残念ながら135mm GMや超望遠、最近追加された50mm GMを除き配慮がなされておらず、結果伝統的お飾りになっておりますw

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撮影ジャンルが変われば別の面が見えてくると思われますが、ポートレートやらグラビアやらと言う用途に限れば描写の欠点を探すのは難しい。
写り過ぎるのは贅沢な悩みだし、点光源の縁くらいかなぁ。

35mmクラスでFE 35mm F1.4 GM (SEL35F14GM)より色々な部分で優れたレンズは沢山有ると思いますが、スペックの割に適当に小型でそこそこの重量、開放から使い易い全域に渡る先鋭感と破綻しないボケ質に極めて少ない口径食、これらを高い次元で纏め、(安くはないが)頑張れば買える程度の価格に収めた点で、このレンズは賞賛に値すると考えます。

ケチつける部分が少ないと文字数も少ない。

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