マーケティングについて学ぶ⑪

顧客の心理変化

コミュニケーション戦略を実行する際には、その手法やりようするメディアだけでなく、ターゲット顧客の心理を理解する必要があります。顧客の心理がどのように変化するのか、ターゲット顧客の多くがどういった心理フェーズにいるのかを把握することによって、より最適なコミュニケーション手法を選択できるようになるためです。

・消費者行動モデル
 消費者行動モデルとは、購買行動に関する消費者の心理変化を一般化したもので、AIDMA、AISAS、AISCEASがあります。

・AIDMA・・・一般的な消費行動

・Attention(認知)

・Interest(関心)

・Desire(欲求)

Memory(記憶)

Action(行動)

・AISAS・・・インターネットでの消費行動

・Attention(認知)

・Interest(関心)

・Search(検索)

・Action(行動)

・Share(共有)

・AISCEAS・・・AISASにComparisonとExaminationを加えたモデル

・Attention(認知)

・Interest(関心)

・Search(検索)

・Comparison(比較)

Examination(検討)

・Action(行動)

・Share(共有)

これらのフレームワークを活用することで、消費者がどのような状況に位置しているのかを把握、分析し、状況に合わせて適切な方法を検討することが容易になります。

認知段階、感情段階、行動段階のそれぞれでコミュニケーション手段を検討します。AIDMAを意識しながら、影響を与えるのがどの段階なのか、果たすべきマーケティング目標を明確にし、適切な活動手法と媒体を選ぶことが重要です。

レピュテーション・マネジメント

レピュテーションとは、企業の評判や名声を意味するステークホルダーの中に形成される認知のことで、それをマネジメントすることをレピュテーション・マネジメントといいます。端的に、企業そのものの評判・評価を管理することです。効果的なコミュニケーション戦略を構築して、マーケティングミックスとともに最適化しても、企業のレピュテーションが悪い方向に向いてしまえば、企業の成長だけでなく、企業活動を行うことすら難しくなります。

・クライシスコミュニケーション
 1.危機管理マニュアルの整備
 2.緊急時の対応 → 迅速性と社内での連携
 3.全体的な危機管理 → 事件が起きる前に危機管理体制を構築

ブランド戦略

顧客に対する認知の手段には、テレビCM、WEB広告、販促キャンペーンなどがありますが、どれも経費がかかります。企業の根本的な価値はその収益力にあるため、経費の削減は解決すべき課題です。そこで有効な手段が、ブランドを構築することです。企業独自の価値を構築し、差別化されたオリジナルの価値を認知させることが、ブランド戦略となります。ブランドそ想起させるものとして、ブランドネーム、ロゴマーク、キャラクター、スローガン、ジングル、パッケージングなどがあり、少ない経費で認知を広めることができます。

ブランドネームとは、企業名や製品名から独自の価値を連想させるために活用する名前です。プライベートブランドなどがその筆頭で、例えば、イオンであればトップバリュー、セブンアンドアイホールディングスであればセブンプレミアムといった企業名と価値を紐づけるようなブランド名です。スローガン・ジングルは、キャッチコピーや音楽でブランド認知を高める手法で、例えば、ナイキであれば、スローガン「Just do it」、インテルであれば、常に似たような音楽であるなどがあります。パッケージングは、製品の容器や梱包をデザイン・制作する活動で、例えばスタバの容器は、おしゃれさや憧れを連想させ、顧客自らに宣伝効果をもたらしています。

ブランド構築の意義

・ブランドの役割
 ブランドの役割には、企業側と顧客側の2通りがあります。企業側には、競合との差別化、品質の保証、収益の安定、成長の源泉として、選ばれやすいなどの役割がある一方で、顧客側には、ブランドによる安心感、選択の際の判断基準、社会的な信頼、ステータス、満足度の向上などがあります。

・ブランドマネジメント
 顧客、環境、地域、コンプライアンスを含めた社会全体に対してブランドをマネジメントしなければなりません。幅広い分野に対して積極的にコミュニケーションを行っていくことで、ブランドの地位を確固たるものとして維持することができます。

ブランド・エクイティ

ブランド・エクイティとは、ブランドに付随する資産価値のことで、多くの人に認知され高い評価を得ているブランドはそれだけで機能や性能、価格、類似商品との差別点などをくり返し顧客に訴えなくても、自然と商品の購入に至る可能性が高くなります。ブランドエクイティを構成する要素には、ブランド認知、近く品質、ブランド連想、ブランドロイヤルティがあります。ブランド認知とは、そのブランドがどれくらい知られているか、どのように知られているかを示す指標です。ブランド認知には、○○だったらこの商品というブランド再生と、そういえばこの商品は聞いたことがあるというブランド再認知があります。知覚品質とは、代替品と比較した場合に認知できる優位性や品質、差別点です。知覚品質があるからこそ、顧客は最終的な意思決定をすることが容易となります。知覚品質を評価する要素には、性能、安全性、快適さといったパフォーマンス、速乾性、耐水性などの付加機能、故障や欠陥の少なさといった信頼性、強度や丈夫さの耐久性、アフターサービス、保証といった付加サービスなどがあります。ブランド連想とは、そのブランドを連想させるようなすべての要素です。例えば、キャッチコピー、ロゴ、キャラクター、パッケージ、雰囲気や音楽、商品名、形状などがあります。なるべくポジティブに自社ブランドを連想できるように工夫しなければなりません。ブランド・ロイヤルティとは、顧客がそのブランドに対して感じている忠誠心や執着心のことで、真のロイヤルカスタマーと呼ばれる層となると、新製品が発表された段階で行動を開始する場合がほとんどです。そのとき、値段や品質に関しては特段気にすることはありません。実際にそのブランドを所有した経験があるからこそ生じるものですが、その後の継続購入につながる要素なので、ブランドロイヤルティは、ブランド・エクイティを構成する他の3つの要素よりもとくに重要とされています。ブランドを保有する企業にとっては、継続的に高収益を確保するための大きな要因となります。

ブランドの構築

広告宣伝効果だけでなく、企業の信頼、あるいは製品の性能を保証する機能も兼ね備えるブランドは、企業の成長を下支えする大きな役割を担います。では、どのようにしてブランドを構築していけばよいのでしょうか?ブランドの構築は、ブランドの階層によって構築方法が異なります。グループブランド、コーポレートブランド、事業ブランド、ファミリーブランド、プロダクトブランドがあり、グループブランドは、企業グループ全体のブランドです。コーポレートブランドは、企業単体のブランドで、事業ブランドとは、企業内で展開している事業単位でのブランドです。さらに次の階層にいくとファミリーブランドとなり、これは事業ブランドよりもさらに細かく分類され、複数カテゴリーの製品群につけられたブランド名です。プロダクトブランドとは、個々の商品ごとにつけられるブランドです。

ブランドの階層

・グループブランド

・コーポレートブランド

・事業ブランド

ファミリーブランド

プロダクトブランド

自社の特徴はもちろんのこと、展開している事業や製品グループ、あるいは個々の製品ごとにその内容をしっかりと把握し、どのようなブランドを構築するのがもっとも効果的なのかを考えなければなりません。5つの視点からブランドの構築を模索することが大切です。

ブランドの展開

・マスターブランド戦略
 グループブランドやコーポレートブランドの下に様々な事業やカテゴリー、製品を展開することによって大元のブランド力を幅広く活用する手法です。例えば、スポーツブランドを展開してる企業などは、スポーツグッズから付属アイテム、ファッション、時計など、さまざまな製品カテゴリーにおいて社名のブランド力を利用しています。デメリットとして、コーポレートブランドそのものの信頼が失墜してしまうと、すべての製品が打撃を受けます。

・マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)
 一つの企業、企業グループのもとで複数のブランドを展開する手法です。たとえば、ボディケアやヘアケア商品のブランドで有名な企業が、お菓子のブランドや健康食品のブランド、あるいはアイスのブランドなど、さまざまなブランドを展開している事例があります。メリットとして、幅広いシェアが得られる可能性とリスクを分散させることができます。一方で、資源の分散投資となり、非効率なブランド展開となる可能性もあります。

・マスターブランド×マルチブランド戦略
 マスターブランド戦略とマルチブランド戦略を折衷させた戦略です。社名をそのまま用いて新しい商品ブランドを構築するなど、マスター・ブランド戦略とマルチ・ブランド戦略双方の優れた点のみを採用することによって、ブランド展開を加速させています。デメリットとして、コーポレート・ブランドなのかそれとも商品ブランドなのかが不明確なため、育成やトラブル対応への正しい対処ができない場合があります。また、ブランドとしての一貫性を保つのも難しいとされています。

・プライベートブランドの展開
 プライベート・ブランドとは、流通業者が独自にメーカーとタイアップして商品を開発し、その商品群にブランドを冠するというもので、価格を抑えつつ品質の良い商品を提供できるため、広く普及しています。その背景には、大手小売店の交渉力が増大しているという要因があります。また、流通業者が自らブランドを抱えることで、より効率的に商品を販売できる反面、メーカーの間では競争が激化しています。

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