マーケティングについて学ぶ⑩

●コミュニケーション(プロモーション戦略)

いかに優れた製品を生産していたとしても、顧客がその製品について適切な情報を持っていなければ購入されません。競合他社の中から選ばれることも少なくなります。そのため、顧客とコミュニケーションをとることによって製品の情報が理解され、競合他社より優位なポジションを築くことができます。

しかしながら、とにかく周知させればよいというわけではありません。製品の必要性を感じていることと、購入の意思決定に至る準備ができていない相手に伝えても意味はありません。

〇コミュニケーション戦略の要諦
 ・誰が
 ・いつ
 ・どのように
コミュニケーションを行うのかをしっかりと戦略を立てて実行しなければなりません。

<購入意思決定プロセス>
 顧客がどのような過程を経て購買に至るのか理解するための理論です。

注目(Attention)→ 興味(Interest)→ 欲求(Desire)→ 行動(Action)

それぞれのプロセスにおいて行うべき施策は、認知度向上、評価育成、ニーズ喚起、購買意欲喚起です。各プロセスに有効な施策を行っていくことが重要となります。

<態度変容モデル>
 購買意思決定プロセスを実際に活用するために、消費者が今どの心理ステップにいるのかを測定する手法です。

認知(Awareness)、記憶(Memory)試用(Trial)、本格的試用(Usage)、ブランド固定(Loyalty)からなり、AMTULモデルと呼ばれます。再認知率、再生知名率、使用経験率、主使用率、今後の購買意向率などを測定して調査します。顧客がどのステップにいるのかを正しく把握し、適切なコミュニケーションを行うことを目的としています。

<AIDAとAIDMA>
 セールスにおける消費者心理の段階のことで、上記のAIDAにMemoryを加えたものがAIDMAです。

Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Attention(行動)

コミュニケーション手法が5つのステップの中で、消費者のどういった心理に影響を与えているのかイメージすることが大事です。

自社の製品が顧客にどのように受け入れられているのか把握するだけでは、コミュニケーション戦略を実行に移すことはできません。具体的にどのような手法で伝達していくのかを決めなければ、いつまでたっても認知度は高まらず、積極的にアプローチすることはできません。

<企業が顧客とのコミュニケーションを行う際に活用できる情報伝達法>
 情報伝達法には、人的販売、販売促進、広告、広報、口コミなどがあります。

・広告:消費者に対して直接的に製品やサービスの宣伝をすることによって、購買意欲を喚起し、指名買いしてもらうための手法です。Attentionに影響を与えます。CM、新聞、雑誌、広告、インターネット広告、電車の中吊り広告、看板等が挙げられます。

・販売促進(セールス・プロモーション):広告によって高まった消費者意欲や関心を、確実に購買へと導くための手法です。消費者と流通業者の双方に対して行います。流通業者向けでは、報奨金、リベート、小売店舗への販売協力等があります。消費者向けには、サンプルの提供、クーポン券の配布、講演、スポーツイベントへのスポンサー活動等があります。AttentionからActionまで幅広く影響を与えます。

・人的販売(セールス・フォース):販売員や営業パーソンが直接的に行う営業活動のことで、消費者と直接的にコミュニケーションを行うことで、不満や不安を解消し、購買へと導くことができる一方、嫌がられることもあるため、製品やサービスによっては選択しないほうが良い場合もあります。Actionに直結します。

・広報(パブリシティ):企業や製品についての情報をテレビや新聞、雑誌などのメディアが自主的にニュースとして報じる手法です。メーカー企業自らが行う手法ではないという点が広告と異なります。

・口コミ:消費者自らが積極的に行うプロモーション活動です。Actionへの影響力があります。

顧客の状況を把握し、それに合わせて最適な情報伝達手法を選択することが重要です。AIDMA理論と照らし合わせて考えていくことを意識することで、より最適なコミュニケーション戦略をとることができます。

<プッシュ戦略とプル戦略>
 流通チャネル全体を俯瞰したときに、どのチャネルに対してアプローチするのかという視点で分類したものです。コミュニケーション戦略の中で、その手法がどのチャネルにどのような影響を与え、どういった効果が生まれるのかということを具体的にイメージするために考慮すべき戦略です。

・プッシュ戦略:メーカーから流通業者を経て、消費者に製品が流通する過程において、メーカーから卸売業者へ、卸売業者から小売業者へと、上から下へ働きかける戦略です。メーカーは卸売業者に製品の説明、販売方法の指導、リベートの設定、販売マージンを高めに設定するなどして自社製品を積極的に販売してくれるよう働きかけます。メーカーから支援を受けた卸売業者は、その支援と同等の支援を小売業者に行い、支援を受けた小売業者は、メーカーの製品を消費者に対して積極的に販売し、プッシュします。流通戦略の構築とコミュニケーション戦略を掛け合わせたものがプッシュ戦略となります。

・プル戦略:メーカーが広告や販売促進などを活用し、メーカーから直接消費者にプロモーション活動を行う戦略です。消費者へ直接指名買いをしてもらう戦略のため、消費者から小売業者へ、小売業者から卸売業者へ、卸売業者からメーカーへと需要が向きます。このように需要を引き寄せる戦略のためプル戦略と呼びます。

<プッシュ戦略とプル戦略の使い分け>
 プッシュ戦略とプル戦略は双方がトレードオフの関係にあるのではなく、バランスよくミックスさせて最適化を目指すことが重要です。製品の特性、市場の浸透度、市場の成熟度、競合の状況、自社の状況、チャネル事情などの要素を検討して、プッシュ戦略とプル戦略の使い分けを配分します。

<メディアの種類>
 製造メーカーや卸売業者、あるいは小売店が発信するさまざまな情報は、メディアを通じて顧客へと伝達します。とくに近年では、インターネットの普及によって情報の全体量が増大し、また商品やサービスの提供側だけでなく消費者側からの情報配信も増えました。今では個人単位でも大きな影響力をもった人がたくさんいます。そうした現状を踏まえて、それぞれのメディアの特性を把握しつつ利用していくことは企業活動を軌道に乗せるためにも不可欠です。業種や職種だけでなく、商品やサービスの性質、あるいは時期や季節なども加味しながら最適なメディアを選択して情報配信を行わなければ、顧客に対して効果的にアプローチすることはできません。企業のコミュニケーション戦略とメディアは切っても切れない関係と言えます。

・マスメディア:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで、高い認知度を得られる反面、費用が高額となります。

・屋外メディア:立て看板、電光掲示板、ポスター、つり革広告などで、待ち時間や地域の特性を生かすことができる反面、宣伝効果が計測しにくいという課題もあります。

・流通チャネル:実際に購入する際の仲立ちとなるため、メディアとしての存在意義は大きいものです。接客、店内POP、陳列状況などにより購買促進などで、購買の意思がある人に対しては効果がある反面、供給側から消費者に広くアピールできないという課題もあります。

・ダイレクトメディア:ダイレクトメール、電話などで、特定のターゲットに訴求することができます。

・デジタルメディア:WEB広告で、一方的に配信しても見られることはほとんどないため、顧客同士のコミュニティを形成するなどの工夫が必要です。

<コミュニケーション戦略の立案プロセス>

①コミュニケーション・ポリシーと目標、予算の設定

②コミュニケーション・ミックスとメディア・ミックスの決定

③具体的なコミュニケーション内容の決定

④コミュニケーションの実施と効果のモニタリング

①コミュニケーション・ポリシーと目標、予算の設定
 コミュニケーションポリシーとは、コミュニケーション戦略を構築するうえで、基本となる指針のことで、例えば、「ターゲット顧客が普段の生活において体験するあらゆるシーンで活用できるイメージを醸成し、安心と信頼感を与える。コミュニケーションの初期段階ではインパクトを与えるが、チープな印象を持たれないよう留意する。」などです。目標では、そのコミュニケーションによって顧客にどうしてもらいたいのか、どういう印象を持たれたいのかなどの目標を具体的に定めます。予算は、費用対効果によって予算額を算出しますが、中長期的な視点で決めます。

②コミュニケーション・ミックスとメディア・ミックスの決定
 消費者の状態、製品に対する消費者の認知度やイメージ、あるいはセグメントごとの特徴、製品の特性、製品ライフサイクル、製品が現在どのような状態なのか模索すること、競合他社の戦略、各メディアの性質、コミュニケーション戦略は相対的なものであるため、テストと改変を繰り返す必要があります。このような要素を検討し、決定します。

③具体的なコミュニケーション内容の決定
 例えば、広告を活用する場合は、コピー、デザイン、頻度などをじっくりと精査する必要があります。コミュニケーション戦略全体の目標を達成する内容が必要です。

④コミュニケーションの実施と効果のモニタリング
 当初から望ましい効果が得られることはあまりないため、予め改変することを見越して戦略を立案することが重要です。


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