マーケティングについて学ぶ⑧
●価格設定(プライシング)
製品の価格を決定する際、目安として製造コストとカスタマー・バリューがあります。製造コストは、固定費や変動費などの合計で、製品価格の下限となります。一方カスタマー・バリューは顧客がその商品に対して適正だと認める価値のことで、カスタマー・バリューが製品価格の上限となります。プライシングの基準として、まずはこの2点を考慮します。
プライシングに影響を与える要因としては、競争環境、需要関係、売り手と買い手の交渉力があります。競争環境は、他社がどのようなプライシングをしているのかによって自社の製品の価格を変化させるものです。需要関係は、需要と供給の関係性から高い需要が見込め、利益が最大化されるポイントを割り出すことが重要です。売り手と買い手の交渉力とは、売り手側が他社にはない唯一無二の製品を持っている場合、パワーバランスは売り手側になり、売り手側が価格を支配しやすくなります。一方で、日用品等類似製品を販売している場合、買い手側が価格を支配しやすくなります。競争環境と需要関係から、売り手と買い手のどちらが有利なのか理解することが重要となります。
プライシングの際は、確保したい利益がいくらなのかという観点である売りたい価格、顧客が買ってもよいと思う観点である、売れる価格、戦略上採用すべき価格である売るべき価格という3つの観点を理解しておくことが重要です。
コストに着目する原価志向の価格設定法として、コストプラス法、マークアップ法、ターゲットリターン法があります。コストプラス法は、製品の価格をコストに一定の利益を上乗せして設定する従来から用いられている方法ですがコストダウンの意識が乏しくなり、戦略性が欠如していることが課題です。マークアップ法は、仕入れ原価に対して一定の率で利益を上乗せする方法です。ターゲットリターン法は、得たい投資収益率(リターン)から逆算して価格を設定します。
消費者が知覚する価値に基準を置いて設定する需要志向の価格設定法として、知覚価値法と差別価格法があります。知覚価値法では、消費者が製品にどれだけの価値を知覚しているかに基づいて価格を設定します。価格弾力性を考慮しています。差別価格法では、同じ製品をセグメント毎に価格を設定します。
競争志向の価格設定法として、入札価格設定法と実勢価格設定法があります。入札価格設定法は、企業に価格を提示させ、最も安い価格を提示した企業と契約を結びます。実勢価格設定法は、プライスリーダーの動向によって価格を設定する方法です。
・新製品の価格設定
これまでの市場にはない全く新しい製品は、ものさしとなる値がなく、価格を判断することができません。そのため、開発コストをいち早く回収するのか、市場シェアをいち早く獲得するのかなどの目的に応じたマーケティングによる戦略的な価格設定が必要となります。
①スキミング・プライス戦略(上澄吸収価格戦略)
新製品の導入時に高い価格を設定して、時間経過とともに価格を徐々に低
下させていく戦略です。人間は保守的な思考を持つため、多くの人は新製
品に対して抵抗を示します。しかし、革新者と呼ばれるイノベーターも少
数存在し、新製品を積極的に採用します。このような層をターゲットとし
て、初期に高価格に設定しておき、早期にコスト回収することを目的とし
た戦略です。
②ペネトレーション・プライス戦略(市場浸透価格戦略)
低価格で市場を早い段階で獲得することを狙う戦略です。価格が低くなる
と需要が上がる価格弾力性を考慮しています。市場へ普及したのちは、
徐々に価格を上げて高利益を獲得するのか、引き続き低価格で販売するの
か企業のマーケティング目標と照らし合わせながら一貫した戦略を立てる
ことが重要です。
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