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葬送のフリーレンがぶっ刺さった

※この記事は「葬送のフリーレン」のネタバレを多少含みます。ご了承の上お読みください。 

新環境も少しずつ落ち着いてきて時間が取れるようになり、前から気になっていたアニメ版の『葬送のフリーレン』を見始めました。これが本当に面白く、何より私にぶっささり、一気に最新話まで見てしまいました。

 主人公で魔法使いのフリーレンは超長命種であるエルフなので若々しい姿を保っている一方、人間の勇者や僧侶は老いて寿命で亡くなっていきます。その最期を見送ったフリーレンは旅を続けながら、旅の足跡をなぞることで彼らのことを知ろうとします。ファンタジー作品やTRPGで種族を超えたパーティーを組む際にふと考える「寿命の差による離別、時間感覚の違い」を物語の主題に置いているのがとても興味深いですし、とても「エモい」です。正直ほぼ毎話目が潤みます。
 そもそも「魔王を倒したパーティーのその後の物語」という設定がまず非常に好きです。「過ぎた時を振り返る」描写が最近どんどん刺さるようになっています。まあ、年をとりましたね。
 特に過去の回想で描かれる勇者パーティーの姿が、青春というか「人生でもっとも輝かしい時」を見事に描いているようなよさに溢れていてグッときます。

 物語は非常に静かに進みます。魔王を倒すという大義はすでに達成されていることと、フリーレンがとにかく強く、また飄々としたキャラクターなのもあり、戦闘や謎解きもそこまでピンチや激しい展開になるということはありません。強敵が現れても多少の駆け引きだったり場合によっては後出しで最終的にはすっと解決します。今作、後出しやご都合展開もあるのですが、それをよしとさせる力があります。
 その静けさの中で、フリーレンはかつての自らの仲間たちと、その冒険の足跡を追っていくのです。その姿を見ていると、「生と死からは逃げられない」という、私たちが根本的にもつ人生の悲哀を感じます。それを、人間と比べるとその死から遥かに遠い存在として、おそらくはこれまでも・これからもそうしていくように飄々と見守るよう立っているフリーレンが今の私にぶっ刺さるのです。私自身が年を重ねそういうことを考えること、あるいは実際に人の死について向き合うことが増えてきたのもあるでしょう。また、そんなフリーレンが勇者一行の仲間、特に勇者に対しては違った感情を抱いているのが少しずつ見えてくるのも非常にグッときます。本当に、あの時期の特別さというのが際立つのです。そしてその感情を表情、仕草、BGM、SE、色彩などで本当に細やかに描いている作品だと感じます。
 また、時間経過の描き方も本当に好きで、エルフであるフリーレンは明らかに時間感覚が違うことが何度も繰り返し描かれます。勇者一行の像が80年後に汚れていたり、強すぎて封印された魔物が、現代に封印を解いたら相対的にどうしようもなく弱くなっている描写がとても印象的でした。フリーレンは旅の目的として「民間で伝わる魔法を蒐集する」というものもあるのですが、その魔法のたわいもなさ、素朴さもファンタジー世界の、決して英雄ではない人達の日常感を演出していて好きです。
 一方、現代でフリーレンとパーティーを組む仲間たちは生命感と未来が漂っていて、それにより静かな中にも熱さや希望、そして「継承」という言葉が浮かんできます過去の勇者一行と現在のフリーレンのパーティーが対比・呼応するところで強く感情を揺さぶられます。最新話でのアクセサリーをめぐる対比は思わず声が出ました。対比を引き立てるセリフのうまさも本当によくて、ネタバレはしないため具体的な例は出しませんが、ぜひ皆さんも見て欲しいなと思います。

次回も楽しみだなぁ…。


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