静かな部屋


足の上でまったりと

 君を初めてみたのはホームセンターのペットコーナーでした。 
 ミルクを亡くして、悲しくて毎日ペットコーナーに行っていた僕は、君を良く見ていましたね。 
 ダウンを着てたのでまだ寒く、3月頃だったと思います。 
 最初は飼うつもりなんかなくて、小さい子がいるなと思っただけでした。 
 君は変わっていて、水を飲むのがとても下手で前歯を叩き付けるようにしていたのを憶えています。

 毎日見に来ていた僕を見つけて、君はゲージのすぐ側まで来ていましたね。
 普通の子は奥に隠れてしまうのに。

 それはまるで私を連れて行ってと、言っているような気がしたものです。

 そして。僕は決心して、君を連れて帰りました、ても最初は後悔したものです。

 君がこんなに鳴くとは思わなかったからです。
 来てからすぐにずっと大声で鳴いてましたね。
 だから、真夜中に起きて君の背中を擦ってましたね。
 君が落ちついて、眠れるまで。

 あれから、君との生活が始まり、君は

 僕が帰ると鳴き
 朝が来ると鳴き
 袋を開けると鳴き
 バナナの匂いで鳴き

 ずっと自己主張をしてくれて、賑やかで、たまには閉口したものです。

 君に「僕が飼っているのはオウムさんかしら」なんて言ったのを憶えています。

 僕は君のために早く帰り、
 君のために、色んなお野菜を買い
 夏なのにコタツをだし、
 君のためにやってきた全てが、

 何よりも何よりも僕にとって必要なことで、幸せな事だと知りました。

 そんな状態がずっとずっと続いて、このまま、何年も続いてくれると良いな、なんて考えていたある日。急に君が居なくなってしまいました。

 本当に急で、あまりに急で、今もまだ心の整理がつきません。

 君はその大きな声で生命の賑やかさを、僕に教えてくれたと知りました。

 ずっと、ずっと、賑やかで、君のおかげで淋しくなかったです。

 いまとても、部屋は静かです、何も聞こえません。
 そしてそれが、僕は怖くてたまりません。
 淋しくてたまりません。

 きっとそのうち、静けさにも慣れるのかな?
 それに、慣れてしまうのも怖いのです。
 君を忘れてしまうみたいで。

 君は僕のためにやってきた天使みたいな子でした。

  数日の間に、ペットロスについて色々な記事を読みました。
 虹の橋の詩も悪くないけど、やっぱり僕は僕の考え方で、君が居なくなった心の穴を埋めたいと思います。
 
 僕の考えでは、生命は形は変わるけど、ずっとそこにあるというものです。
 肉体はいつしか散り散りになり、目に見えなくなっても、消えるわけじゃありません。
 地球になってそこに居るのです。

 それが魂と呼ばれるエネルギーでも同じです。
 だから、君はまだ居ます。ここに居て感じます、君は世界を舞っています。
 だから僕は、
 大空の中に、草原の中に、山の中に、
 海に、泳ぐお魚に、歌う小鳥たちに、

 全てで君を探し感じます。

 それでもまだ、たまに涙がでます。
 いつまても泣いてても強かった君に、嫌われちゃいますね。

 どうか、君を失った悲しみを
 君と出逢えた幸運が
 君と過ごした日々が、凌駕いたしますように。  


 悩んだけれど、君を家のそばの大きな木の下に埋めました。 
 僕は帰って来るたびに、これまでみたいに君に挨拶をします。 
 僕を空の上から見守っててください。 

 僕をお父さんにしてくれた、大切な君へ。

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