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本当に美味しい話は決して世の表舞台には出回っていない

そういえば昨年の今頃、TKOの木本が知人から紹介された投資で詐欺被害にあったことが問題になったのだが、私はその話を聞いて「馬鹿だなあ」なんて笑ってしまったと同時に『女王の教室』(2005)のこのシーンを思い出した。
今や押しも押されもせぬ大女優として大成した元宝塚の天海祐希の出世作と断言して差し支えない本作だが、当時にしてすでに日本社会に潜む構造上の闇について言及していたのであり、実に先見の明がある。
ヒカルチャンネルに泥水はしご酒という企画で出た時に「月利20%」と言っていたらしいが、投資や資産運用を少しでもかじった人間であればこれが如何にっこれが如何にトチ狂った数字かがわかるだろう。
世の中どんなにいい条件の投資を探しても、精々年利が5〜10%以上のものはまずないし、万が一そういう案件があったとしても内々で話が進むためにそんな条件を突きつけられた時点で木本は断っておくべきだった。

世に出回っている保険や投資信託などはたとえJAなどの国レベルのものでも安易に購入してはならない、その話を引き受けてしまった時点で完全に向こう側の口車に乗せられてしまったも同然である。
何よりこの件に関して私が一番失望したのは芸能人のビジネスセンスと教養の無さであり、お笑い芸人の中で売れているはずのTKOですらもお笑い以外のことになるとこうしてボロが出てしまう。
その詐欺に加担した3人の犯罪者が最終的に逮捕されたので何だかんだ最終的には収まるところに収まったものの、有名芸能人ですらも騙されてしまう程に詐欺の手口が巧妙化しているのだ。
しかもその投資案件がよりにもよってかなり上級のFXトレーダーや不動産投資だというのだから余計に規模が大きくなり全国ニュースになってしまったという次第である。

そもそも仮想通貨だのFXトレーダーだの、今ではアプリゲームで軽めの感覚で誰しもが投資を勉強できるような時代になってしまっていることをもう少し深刻に考えねばなるまい。
投資というと日本人には馴染みの薄いものであるため、名前を聞いた時にほとんどの人が「投資=ギャンブル」と思い込むようだが、競馬や宝くじなどのギャンブルは投資ではなく「投機」である。
まず「投資」と「投機」の違いすらわかってない人が世の中の大半を占めており、仮に勉強していたとしても実際にやって成功している人は指で数えるほどしかいない。
そしてそういう「成功者」と呼ばれる人たちは基本的に表舞台に顔を出すことはない、なぜならばそれが世に知られてしまった瞬間に付け狙われてしまうからである。

詐欺師というのは如何にも悪人の顔をしてやってくるのではなく、その悪人としての顔を巧妙に隠しながら巧みなポーカーフェイスとポジショントークで善人として現れる。
相手をその巧みな話術と笑顔で騙し、骨抜きにして客観的な判断ができない状態にしたところで一気に落としにかかるというのが詐欺師と呼ばれる人の手口だ。
そしてそういう人たちは声の温度感もそうだが、何より顔つきと目つきから全く波動・覇気といったものが感じられず、本当に同じ人間なのかと誰しもが思うことだろう。
無理はない、なぜならば詐欺師と呼ばれる人たちは悪魔に魂を売り渡してしまい自分で思考し自分の足で立って歩くことができない人たちだからである。

子供の頃に「世の中、うまい話には裏がある」とよく大人から言い聞かされていたものだが、これには2つの意味がある。
1つは「世の中に出てくる美味しい話や甘い話は大体罠だから注意しなければならない」という戒めの意味、そしてもう1つが「本当に美味しい話は世の表舞台には出回らず内々で進む」ということだ。
そして後者の意味があることを知っているのが動画で阿久津真矢が指摘する「上位6%の特権階級の人たち」であり、国民が必死に汗水流して働く裏で特権階級の人たちはそれをせせら笑って美味しい思いをする。
『ドラゴンボール』でいうミスター・サタンみたいな奴がいるわけであり、そういう人たちが奥底で何を思っているのかというと「国民にはバカのままいて欲しい」という歪んだ優越感であろう。

それに気づかせないために大量の娯楽を楽しませてメディアに洗脳させ学校教育で画一的な国にとって都合のいい労働マシンを作り上げ、とにかく働くことを礼賛し「働かざる者食うべからず」なんて宣う。
そんな状態にあっては投資や資産運用の話で詐欺被害に遭うのは珍しくもなんともないし、むしろ特権階級の人たちからすれば「また無知な愚民がやらかしている、しかもお笑い芸人が」位にしか思っていないはずだ。
だから騙されたくなかったらとにかく勉強するしかないのである、世の中の仕組み・構造を徹底的に勉強して知恵や知識を身につけてこの難しい激動の時代を乗り越えていく他はない。
世に起きている社会問題のほとんどは「感情」ではなく「構造」で起こるわけであり、問題解決したかったら「そもそも構造的にどこが問題なのか?」を追求することが大事だ。

今回の件なんてまさしくそれであり、TKO木本がきちんとFXトレーダーや不動産投資をはじめとした資産運用に関する基礎知識から構造までわかりきっていれば防げたはずである。
よく分かりもしないのに二つ返事で安請け合いしてしまうからこんなに大きな損失を生んでしまったわけであり、この傾向は昨今益々強まっていくだろう。
それこそダウンタウンの松本人志もまたジャニーズと同じ性加害問題を訴えられて活動休止を余儀なくされているように、もう昭和・平成のカリスマがどんどんかつての力を失っている。
良し悪しを別として、今の時代はもうスターがただスターとして活躍できるような安易な時代ではなくなっており、現実のシビアさをよく見極めた上で高度な立ち回りが求められるだろう。

そこで大事なのは決して目先に囚われず、事実を冷静に俯瞰して「これで本当にいいのか?」と自らに問いかけて備えておくことだ。
誰もが副業で稼げる時代になってきたのは間違いないが、それは同時にこれからお金のことに関する悲喜交々を自分で判断していかなければならないことをも意味する。
他者に頼れず組織に依存することも許されていない昨今、益々この手の詐欺は横行するであろうし、その詐欺をどうすれば回避できるかに関してもう国や警察には頼れない。

月利20%という数字をきちんと正しく見極める国語力と数学に対するリテラシー、そして損失が出ないように立ち回るためのノウハウ。
結局は国数英という抽象度が高い言語・数字の科目を勉強してればわかることであり、そんな足元のことすら今の日本人はできなくなりつつある。
そこに気づいて勉強するか、それとも「自分は大丈夫」と思い込んで勉強しないか、どちらにしても自己研鑽を怠った者に未来はないだろう。


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