なぜ完全体以上の力を発揮するデジメンタルは短時間というリスクを持っているのか?紋章との関係性も考察
今回は『デジモンアドベンチャー02』のアーマー進化に関する考察ですが、「Vテイマー」で客演した時を除いてマグナモンへのアーマー進化は「時間が短い」というリスクがありました。
実際テレビ版のキメラモン戦、そして劇場版のケルビモン戦と割と苦戦する描写が目立ち、またクロスウォーズで客演した時も大輔の口から「マグナモンは時間短いのが難点だよなあ」と言っています。
大輔が「難点」という割と難しめの語彙を使っていたところから見ると、史実の大輔は原作の5割増しで賢いことが伺えますが、今回はこの辺りに関してある程度の回答を出してみましょう。
おそらく「マグナモンは時間が短いのが難点」というのはアニメオリジナルの設定であり、少なくともデジモンウェブ公式のマグナモンの解説にそのような設定はありません。
公式設定には「“奇跡のデジメンタル”のパワーを得たものは、どんな窮地に陥っていても、その奇跡の力によって切りぬけることができるところから、まさにミラクルアイテムと呼ぶに相応しい」としか書かれていません。
実際に漫画「Vテイマー」で登場した時にはそんな「時間が短い」という設定はありませんでしたしアニメでの苦戦が嘘のように究極体のパラレルモンをエクストリームジハードで瞬殺していました。
また、「フロンティア」「セイバーズ」「ゼヴォリューション」などの純粋な「ロイヤルナイツ」として出てくるマグナモンは時間が短いというような設定はなく、ずっと奇跡の力を維持して戦っています。
一方でデジモン公式ウェブの解説で「時間が短いのが難点」というのに相当する設定があるのがブイモンが希望のデジメンタルでアーマー進化したサジタリモンです。
「この形態でいるにはエネルギーを大量に消費してしまうため、短時間で戻ってしまう」とあり、おそらくクロスウォーズのアニメスタッフがここら辺の設定を混同してしまったのでしょう。
原作「02」の苦戦の描写と決戦用兵器であるというイメージから「短時間で大量にエネルギーを消費してしまう」というサジタリモンにしかないはずの設定をマグナモンに適用してしまったのです。
まあアニメはそもそも昨日の記事で述べたように、ゲームにはない「正しい進化と間違った進化」みたいな設定弄り・遊びが酷すぎて原作ゲームの良さが掻き消えているし、パワーバランスが演出であっさり変化するので信用はしていませんが。
特に関弘美が関わっているシリーズは人間ドラマのリアリティばかりを重視して肝心のバトルのパワーバランスやSF方面の設定がおざなりなものばかりなので、どこまでが本当でどこからが嘘なのかが区別しにくいです。
ですので「マグナモンは時間が短いのが難点」に関しては大輔にインペリアルドラモンで活躍させるためのブラフであり、取ってつけたように言わせた嘘だと思うことにしましょう。
ただ、確かにサジタリモンやマグナモンなど完全体以上の力を発揮するデジメンタルは短期決戦用というイメージが強いのですが、今回はなぜそのリスクがあるのかに関して考察してみます。
まず「Vテイマー01」のオリジナル設定である「アルフォース」と「オーバーライト」の関係性については以前に考察しましたが、古代種は力とエネルギーの前借りを行う度にデータの劣化が早まるので進化そのものが厳しいというリスクがあります。
それを解消するための方法がいくつかあって、最良かつチートな解決策がタイチとゼロマルが到達した聖なるオーバーライト「アルフォース」であり、永久にオーバライトを切らさず寿命を削らずに戦えるという設定です。
そして2つめにあるのが、そのオーバーライトや進化のエネルギーをデジメンタル肩代わりしてくれる「02」のアーマー進化ですが、その中でも完全体・究極体クラスへのアーマー進化はオーバーライトの消費速度と消費量が桁違いなのでしょう。
特にマグナモンはアーマー体ながら究極体相当なので、聖なるオーバーライト「アルフォース」に匹敵するレベルの力とエネルギーを奇跡のデジメンタルが前借りという形で引き出しているので、それに器の大輔とブイモンがついて行きづらいのかもしれません。
なにせタイチとゼロマルでさえコントロールするのに苦労し、また「デコード」の四ノ宮リナとブイブイですらもぶっ倒れるほどの膨大な力を宿しているのが古代種デジモンとそのテイマーですから、逆に大輔とブイモンは倒れないのが不思議なくらいです。
それはそう、タイチとゼロマルの場合はパートナーデジモン側が、そしてリナとブイブイの場合はテイマー側が負担している「オーバーライト」を大輔とブイモンの場合はデジメンタルというチートコード同然のアイテムに肩代わりしてもらっています。
そんなチートアイテムを大輔とブイモンが恒常的に引き出すことができて何のリスクもなくいつでも使い放題だったらどうなるか?物語が成立せず「02」が下手すれば1クールで終わってしまいかねないのです。
ただでさえ「02」は「強くてニューゲーム」状態でスタートしていますから、せめてもの配慮として「完全体・究極体へのアーマー進化はオーバーライトを短時間で大量消費する」というリスクを設けないとドラマが成立しないということでしょう。
アルフォースブイドラモンが持ちうる七大魔王やアルカディモンに余裕でタイマン張れる力に匹敵するものを大輔とブイモンが奇跡のデジメンタルという形で持っているのですから、そんなのデーモンが付け狙わないわけがありません。
デーモンの狙いについては別途考察するのでここでは省略しますが、まず1つ目は年間のドラマを成立させるための言い訳として「アルフォースに匹敵するオーバーライトを常時大輔たちが持っていたら物語がすぐに終わってしまう」からです。
次に考えられる理由としては大輔が使っていた「奇跡のデジメンタル」が「優しさの紋章」から変化したものであり、オリジナルの奇跡のデジメンタルではないからではないかというのが挙げられます。
クロスウォーズで使われているのも恐らくはオリジンではなく大輔自身の特異体質によって一時的に他の物質を変化させたもので疑似的に再現しているだけのレプリカだから力の強大さにアーマー自身が耐えられないのでしょう。
上にも書いたようにマグナモンの力はアルフォースに匹敵するレベルだと思われますから(じゃなければアーマー進化で唯一のロイヤルナイツ入りは不可能)、オリジンでなければ恒常的な継戦能力はないのだと思われます。
そして3つ目に考えられる原因として、テレビアニメ版及び劇場版のマグナモンは既に大輔のブイモン自体が連戦による疲労の蓄積でフルパワーを発揮できず決着がつかなかったからではないでしょうか。
言うなれば「ドラゴンボール」のナメック星編での超サイヤ人孫悟空VSフリーザ最終形態に近い泥仕合であり、あれも悟空とフリーザがそこまでにお互いの体力を消耗し切っていたためになかなか決着がつかなかったのです。
クロスウォーズの客演回でもおそらく太一たちと合流する前に戦っていてブイモン自身が体力を消耗していたためにフルパワーでの継戦能力がなく、ジョグレス進化のエネルギーしか残ってなかったのでしょう。
「Vテイマー」で描かれていますがジョグレスは単体で傷ついていても融合することで満タンに回復可能ですから、インペリアルドラモンにジョグレス進化することで体力を満タンに回復して戦うことを大輔は選びました。
だからもし大輔とブイモンが「Vテイマー」の客演回がそうであるように最初から体力満タンで黄金のデジメンタルが最初から切り札として使える状態だったら、キメラモンやケルビモンも余裕で瞬殺できたかもしれません。
「02」はキメラモン戦といいブラックウォーグレイモン戦といいデーモン戦といい、割と大輔たちにとって条件の厳しい戦いが多かったので、高石タケル史観論というメタを除いても不利な条件の中での戦いが多いのです。
それを考えるとむしろデーモンを暗黒の海に追い払うことができただけでも御の字というもので、一番大事な大輔とブイモンの切り札である「奇跡の紋章」と八神タイチとゼロマル担当がいない、つまり勝利の鍵が不足している中であれだけ戦えたのが奇跡でしょう。
逆に言えば、その勝利の鍵が全て揃った状態であれば「02」の難易度は格段に下がるわけであり、12人もいながら肝心要のアルフォースブイドラモンとそのテイマーがいないためにVテイマーの神話を再現できなかったのです。
さて、ここからは更にもう1つ突っ込んでアーマー進化と紋章の関係性について考察して行きますが、「Vテイマー」で出てきた彩羽レイが持つデジメンタルにはアニメと違って紋章はありませんでした。
しかしそれでも「想いを進化の力に変えて更に上の段階へ進化する」ことと「勝率0%の絶望的な戦いを勝率100%に塗り替える」ことがVテイマー終盤の戦いで示された本質です。
漫画とアニメのデジメンタルに関連性があるとするならば、おそらく彩羽レイの伝説のアイテム「デジメンタル」を基に紋章やアーマー進化としてのデジメンタルが生み出されたのではないでしょうか。
しかもこれ、アズマケイさんも言ってましたけど、奇跡のデジメンタルと運命のデジメンタルは「デジメンタルがあるのに大元の紋章がない」のであり、これっておかしいですよね。
「02」のデジメンタルが太一たちが無印で使っていた紋章から生み出されたものだとするなら、順番としては彩羽レイのデジメンタル→無印の紋章→02デジメンタルという順番で遥か昔に生成されているはずです。
ということは奇跡の紋章と運命の紋章も生成され、それをモデルとして黄金のデジメンタルも生み出されているはずですが、恐らくは暗黒側の陰謀によりオリジナルの奇跡の紋章と運命の紋章は抹消されてしまったのでしょう。
無印の45話でダークマスターズのピエモンがタグとデジタマを持ち去ろうとしていたのをゲンナイが何とかメカノリモンに乗って持ち出していましたから、その前に抹消されていたはずです。
ということは、逆に言えば無印で出た紋章とタグ、そしてそれを基に生み出された02デジメンタルは全て太一たち無印組ではなく大輔たち02組ら古代種デジモンとそのテイマー用のアイテムとして開発されたものであるという見方ができます。
そしてその中でも大輔専用と思われる奇跡の紋章が「想いを進化の力に変え、勝率0%の絶望的な戦いを勝率100%に塗り替える」という彩羽レイのデジメンタルに最も近い本質を持っているのです。
チンロンモンは復活した際に「希望と光の力は他の紋章とは違い特別だ」と言っていましたが、実際のところは奇跡の紋章こそが他の紋章とは違う特別な紋章であったのではないかと私は思います。
だからアズマケイさんが仰るように無印の冒険は本来ならば大輔たち02組がやるはずだった冒険をたまたま光ヶ丘テロ事件に居合わせた太一たちが代行しているに過ぎず、実は太一たちはデジタルワールドに「選ばれていなかった」のではないでしょうか。
そう考えると太一たちのパートナーデジモンが現代種にも関わらず紋章の力で「正しい進化」「間違った進化」を強制されたこともわかります、なぜならば本来その紋章とタグは古代種用に作られたものだからです。
だって現代種デジモンは「Vテイマー」のエイリアス3やレオモンに鍛えられた3体のアグモンがそうであるように、紋章とタグなんかなくても戦闘経験値を積んで育成すれば普通に完全体・究極体まで進化できます。
タイチとゼロマルら古代種デジモンとそのテイマーが進化の壁に苦しんだ経験から、古代種デジモンとそのテイマーがそれより上に進化できるように紋章とデジメンタルが生み出されたとすると全てに納得がいきます。
さき姫さんが言っていた「本来であれば無印の冒険は02組の4人とその兄姉たちと秋山遼・四ノ宮リナではないか」というのがますます真実味を帯びてきて嬉しさとともに怖くもなってきました。
本来なら大輔たち古代種デジモン持ちの人たちじゃなければクリアできない冒険を太一たちが代行してやらされていた、しかも攻略本と案内人抜きで……そりゃあ原作無印と02がバッドエンドになるわけです。
実際、アズマさんの小説では奇跡の紋章は原作の02組がインペリアルドラモンFM+シルフィーモン+シャッコウモンですら全く手が届かなかったデーモン超究極体と「Vテイマー」のアルフォースブイドラモン超究極体の戦力差をそれ1つで埋められると設定されています。
だから大輔がオリジナルの奇跡の紋章とタグを持つことはいつでもサジタリモンやマグナモンを引き出すことができて、尚且つ時間制限もないという常時無敵スターマリオ状態で戦えることを意味するのですね。
その上で「八神タイチとゼロマルを受け継ぐ者」である四ノ宮リナとブイブイが大輔とブイモンに出会ったらどうなるか?その時点で暗黒側の完全敗北+デジタルワールドの永久平和が実現します。
そう考えるとますます原作無印が暗黒側の策略でバッドエンドに向かうゲームを太一たちがやらされていたとしか思えなくなりゾッとします、そりゃあ価値観がゆがんで破壊が生まれるわけですよ。
ましてや「アドコロ」という「本来あるべき正史のデジモンアドベンチャー」が出た今となっては尚更そうだとしか思えなくなってきます。
なんか段々と点と点でバラバラだったものが一本の線で結ばれて話の整合性が段々と取れてきており、私自身も末恐ろしく感じる次第です。
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