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日虎の気まぐれインド哲学第11回 原始仏典の章 ブッダ(釈尊)とその資料

 今回からはインド哲学から生まれた宗派の中では最大規模にして今日に至るまで東洋の国々の倫理観、道徳観に多大な影響を及ぼし続けている仏教についての話を始めたいと思います。そして、今回はその仏教の開祖ブッダの話をします。

⚫︎ブッダ(釈尊)

  仏教とは、仏すなわちブッダ(Buddha)の教えです。漢字で「仏」の字をあてるのはブッダの音写です。日本でこれを「ほとけ」と読むのは、中国での初期の音写ブト(浮図や浮屠の字をあてる)が日本へ入って「ふと」から「ほと」になまり、これに「け」がついたものとされています(諸説あり)。
  ブッダは、わが国では「釈迦」あるいは「釈尊」(しゃくそん)と呼ばれることが多いです。「釈尊」とは「釈迦牟尼世尊(しゃかむにせそん)」の略とされる。ブッダが釈迦族(サーキヤ族、あるいはシャーキヤ族)の出身であることによる尊称です。牟尼とは「聖者」のことで、世尊とは「福徳あるもの」の意味であります。仏典において仏弟子たちは、この「世尊」という尊称をよく用います。

 ブッダの原語 buddhaは、「気づく、理解する、悟る、目覚める」などを意味する動詞 bodhatiの過去分詞で、「悟った、目覚めた」などの意味を持つ。釈尊の当時のインドでは修行を完成し真理を悟った者に対して一般に用いられていた語である。

 釈尊は悟った者としてブッダと呼ばれました。仏教の教理が発展すると、悟りを開いたのは釈尊ひとりではないと考えられ、釈尊以前の諸仏(過去七仏)、さらに大乗仏教では、無量無数の諸仏という観念が生まれました。こうして「ブッダ」という語はもっぱら仏教において用いられるようになり、インドでは仏教徒のことをバウッダ(ブッダにしたがう人々)と言います。
 また、仏教徒は、ブッダの異名の一つ、スガタ(「善く行った者」の意。漢訳では「善逝」ぜんぜい)にもとづいてサウガタ(スガタにしたがう人々)とも呼ばれます。


天上天下唯我独尊


 ブッダの個人名はゴータマ・シッダッタ(ガウタマ・シッダールタ)であったとされます。これによって、ゴータマ・ブッダと呼ばれることが多いです。ブッダは、また如来(修行を完成した人)、阿羅漢(尊敬に値する人)など多くの異名を持ちます。

  伝説によれば、ブッダは現ネパール領南部の出身で、29歳のとき出家、35歳で成道し、45年にわたる布教の後、80歳で入滅したとされています。

 生没年は、アショーカ王の年代との関係によって論じられることが多いです。アショーカ王の年代は、およそ前268年即位、前232年没とほぼ確定されていますが、ブッダとの年代の間隔については、伝承により異説があります。
 南伝説
 パーリ語による資料、スリランカの『島史』と『大史』は、アショーカ王を仏滅後218年とします。(南伝説)。これによればブッダの入滅は前486年頃になると計算されます。

北伝説
 一方、中国に伝わる仏典『十八部論』『部執異論』は、アショーカ王を仏滅後116年としていまふ。(北伝説)。これによればブッダの入滅は前383年頃になります。

 ブッダは、南伝説によれば古代中国春秋時代末期の孔子(前552-477年)と、北伝説よればギリシアのソクラテス(前469?-399年)とほぼ同時代の人であるとされています。
 彼らがばったり出会ったらいったいどんな会話が繰り広げられるのやら・・是非とも東京の立川のアパートで話し合ってもらいたいものです・・(笑)

⚫︎ブッダの思想に関する資料

 現在多く残されている仏典のうち、初期の仏教(原始仏教)の思想をもっともよく伝える文献は、パーリ語で書かれた聖典であります。パーリ聖典は南方上座部が伝えたもので、スリランカ、ミャンマー、タイ、カンボジアなどの諸国に広まっています。
 パーリ聖典のうちで経蔵といわれる部分は、ブッダの教説(アーガマ、阿含、信ずるべき人のことば)として伝承された聖典群で、その中には極めて成立が古いものも含まれていると推定されています。

 パーリ聖典は、最初期の仏教の思想を伝えるとはいえ、後に発展し整備された思想を多く含んでいるので、そこに説かれるものをすべてブッダの教説とみなすことはできません。
経典の編纂は、ブッダの入滅後、その教えを保持するため、弟子たちによってまず詩の形にまとめられたことに始まり、散文の部分は、それからかなり時代を経てから伝承にもとづいて加えられたと考えられています。パーリ聖典が現形のように集成されたのは、マウリヤ王朝時代(317-BC180)よりはるか後になってからのことであるとされます。したがって、ブッダの思想を解明する資料として利用するには、成立年代に関する注意が欠かせないのです。

 次回からは、経典中最古のものとされる『スッタニパータ』第 4, 5章の思想を紹介する。そこにはブッダによって直接説かれたものも含まれていると推定されています。次いで、より遅く成立したと推定される散文の経典にみられる原始仏教の体系化された教理を概説する。岩波文庫で売ってるから是非とも読んでいただきたいです。
 私のインド哲学との邂逅はこの『スッタニパータ』との出会いであったと言っても過言ではありません。

「ブッダのことば-スッタニパータ-」中村元訳 岩波文庫

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