P.V.L.日記 父子入院20〜21日目 審査
5月21日(土)
再びリハビリ入院である。11時過ぎに妻子は自宅を出て午後には無事再入院。さっそく2回のPTをこなしていたようだ。朝5時に起きてきた息子とホットケーキミックスを焼いて朝ご飯をつくる。昨日の夕方に作るはずが息子が早くに就寝してしまったので保留にしていたのを覚えていたようで、起きてくるなり第一声が「レッツクッキングや」とやる気であった。離れがたいようで自宅を出るのをぐずっていたが、もしやと思い私がいないとタブレットがないから寂しいのかと尋ねてみた。案の定のYES回答。きくんじゃなかったよ、全く。
自宅待機期間のために参加できなかったが、21日は梅田周辺で「産科医療補償制度を考える親の会」の街頭署名活動があった。
産科医療補償制度とは、2009年より創設され、出産のトラブルで「脳性麻痺」という障害が残ってしまった子どもたちを支援する保険のような仕組みである。2009年以降に出産された妊婦さんはほぼ全員が妊婦検診の手続き内で加入されている。しかし、この補償の対象外になっている家族がいる。
2015年1月1日から2021年12月31日までに生まれた場合は、「在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと」が条件のひとつで、一部、出生週数によって「個別審査」となり対象外になるケースがあった。2022年1日1日からは医学的根拠がないとして基準が変更され「在胎週数28週以上であること」に改められ「個別審査」も撤廃された。しかし、以前の基準で個別審査の対象外となった家族にはさかのぼっての補償はない。
脳性麻痺の子どもの育児には多額の費用がかかる。治療やリハビリ、家のバリアフリー化や安全な家への引越し、福祉車両の購入、医療的ケアが必要な場合は介助が必要でどちらかの親が働くことができない場合もある。補償額は3000万円で一次金600万円と残り2400万円が子どもの成人まで分割して支払われるが、約20年間もどちらかの親が収入を得ることができず、先述した費用等を負担すると考えれば多い額ではない。財源も税金ではなく余剰金が635億。それに対して個別審査で対象外になったのは484人(2021年6月4日現在)にも関わらず救済措置が取られていないのが現状だ。
息子は2018年に生まれた。諸条件から個別審査の対象ではないようである。(今後満5歳の申請期限までに申請予定)しかし、全く他人事ではない。私も妻も働く時間は制約があるし、今後の通学やリハビリを考えればいろいろと難しいと悩むことも出てきている。実際に昨年、段差が少なく座位保持椅子等の大きな福祉器具を複数台置ける広さの家に引越しをしたばかり。家賃は上がった。市の特別児童扶養手当があったおかげで上積み額は抑えることができたが、3年後に小学生になり独歩通学ができない(もしくはクラッチや車椅子で通学)となった場合は、付き添い登下校や車椅子対応の車への買い換え、あるいは学校と近距離の家にさらに引越しを迫られるかもしれない。リハビリ中には、OTの先生とそうした話題もあった。
お金の問題ばかりではない。申請が通れば再発防止のために原因分析が実施される。個別審査で対象外になってしまうと自分の子どもがなぜ脳性麻痺になったのかということを知り得る機会も与えられない。対象外になった方にきくと、このことが一番悔しいと言われていた。先日の姫路での街頭署名に参加でき、奮闘する皆さんの姿を目の当たりにした、本当は署名活動に時間を費やし奮闘するのではなく、子どもや自分のことに時間を使いたいという願いがある。私たち親子の申請もどうなるか見当がつかないが、引き続き出来ることで支援していきたい。
5月22日(日)
明日から私と妻が再交代する。準備を整える。非通知着信があったので恐る恐る出てみると妻だった。息子がスマホの暗証番号を間違えすぎてロック状態になったようだ。息子は私のスマホの暗証番号は記憶しているので、どうやらそれを妻のスマホに打ち込み続けたようだ。YouTubeへの飽くなき執着心。非常事態である。(続く)
「産科医療補償制度を考える親の会」では、オンラインでの署名活動も行っております。ご賛同頂けましたらぜひよろしくお願いします。
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