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P.V.L日記 父子入院6日目 仕事

PVL(脳室周囲白質軟化症)から独歩をめざしリハビリ入院、
3歳児と父親が入院という名の合宿生活。
OTが9時から。PTが15時5分から。OTが16時20分から。
三食介助、洗濯、入浴、同室のお友達とプラレール遊び、買い物

5月7日
入院生活のクオリティ・オブ・ライフを左右するのは、食事内容や空調よりもwi-fiである。すこぶる良い。息子が就寝した後、夜中にこっそりイヤホン視聴でヨーロッパリーグ、プレミアリーグを見届けた。後世に語り継がれるであろうチャンピオンズリーグの準決勝で起きた「レアル・マドリーの魔法」の瞬間も病室から目撃者となることができた。いやまあ、サッカー好き以外には何ら問題のない話ではあるのだが、フットボールフリークにとっては5月の欧州リーグが終盤にさしかかる時期の入院生活に与えるwi-fiの恩恵は計り知れない。

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また、私の影響下にある3歳児も入浴後のDAZN観戦に参戦。両手を頭の上に挙げて手拍子をしながらセレッソ大阪のアンセムを歌うという、サポーターとして習得すべき基本姿勢をとることができた。これも日々のストレッチとリハビリの成果といえるだろう。午前中のOTでもその成果が発揮された。お着替えで両手を挙げる動作にまごついていたが、私がセレッソの応援と一緒の動作だと示唆すると瞬時に両手を挙げた。これはやはり、また親子でスタジアムに行かねばならない。

wi-fiの恩恵は、仕事においても大きい。今回の父子入院に関しては各方面の皆様の協力によって実現できたが、大前提として快適なwi-fiがなければオンライン対応すらできない。昨年の入院後の診察時には、次回は父子入院を希望していることを伝え、可能であれば4週間全てを父子で。難しければ途中で妻との交代も含めて4週間を希望した。同時に仕事の各方面にも父子で1ヶ月の入院リハビリをする可能性があることを伝え、仕事量の調整や納品時期の逆算。代役の依頼などを検討し始めた。私は幸い自営業かつ5年以上前からオンラインでのミーティングを軸にした仕事の仕方に慣れており、編集や起業支援等のディレクション業を主としていたため、必ずしも現場対応する必要がなかった。

しかし、快適なwi-fi環境がなければこれらの遠隔対応もままならない。病室の窓際でなければ電波が上手く入らないとか、リハ室は全くの圏外であるといった状況であれば何も出来ないだろう。その点、この病院はどこにいてもほぼ快適な速度でつながる。リハビリの付き添い中のちょっとした間でもスマホのメッセンジャーに来ている相談に一旦返事を返すことができる。いや、「その時くらいはリハビリに集中しなさい」という意見もあるだろう。ただ、リハビリの後には洗濯や食事、遊び相手、買い物といった生活雑務
が渋滞しているのが常。かえってセラピストの手が息子に触れている最中こそ、私の手にはちょとした自由時間がある。

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父子入院は都合をつけるのがなんとも難しい。それは仕事の都合ではなくて、まず相部屋の都合である。一部屋4組だが、さすがに父子、母子混合で男女部屋にするわけにはいかない。父子は父子組だけの部屋をつくる必要がある。ところが、私と息子が入院した初日に病室に入ると、同じ部屋だという女性から挨拶があり、男女相部屋なのか?と耳を疑った。病院の手違いから、奇妙な「疑似家族的生活」が始まり、退院時には、いったい「家族」とは何なのだろうか?と哲学的な問いを立てねばならないのかと想像したが、何のことはない、どうやらその時間が父母の交代日だったらしい。思わず「もしかしてしばらく相部屋ですかね・・・」とつぶやいた私が恥ずかしい。

父子入院は病院にとってもかなり難易度のあがる調整で、なかなかそう上手くタイミングが合わないし連休のような時期は皆がそこを希望する場合もあるので、具体的な日程が決定したのは入院の1ヶ月近く前。こればかりは仕方ない。日本の労働環境や社会構造の問題も大きいだろう。

入院中は、息子が起こす生まれて初めての動作を目にすることがあるが、父子入院できる環境が増えればそうした体験をする父親も増えるだろう。息子は今日、初めて「ボタンを留める」という動作をやってのけた。(続く)


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