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38日目 文具屋から始めよう

「ええのつくってやー」と、富士文具店のおばちゃんに送り出されてJRの西明石行きに乗った。フリーペーパー専門店の整理に使うため、仕切り板になる紙がないかと相談したら「これがええで」とカウンターの奥にあったA2サイズの厚紙を2枚出してくれた。商品の梱包に挟まっていた紙らしく「あげるわ、丁度えんちゃうかな?」とのことだった。持って帰っていいらしい。

ただ、仕切り板は50枚くらい必要でこれでは5枚しかつくれない。おばちゃんは、次に厚手の白表紙を奨めてくれた。今度は商品である。これはいい。お会計を済ませて電車で帰るから紙袋が欲しいと伝えると、大声で「え!にいちゃん電車できたんか!!??」と。ここは三宮のど真ん中である。最寄り駅まで1時間の里山ではない。どうみてもリアクションが間違っているのだが、気持ちのいい買い物とはこういうものだったと思い出すことができた。

塩屋駅前の「しろちゃん」で昼定食を食べる。奥の席ではご年配のマダム4人組が関東煮をあてに一杯やっている。「これええやんか、あたりやわ。関東煮もう一皿ちょうだい!」と、ずいぶん威勢が良い。「新世界に決まったん?新世界?」という言葉がもれてきたが、一体何が「新世界に決まった」のかは最後までわからなかった。決まってよかったんだろうか心配である。

今日の大仕事は、11月4日のオープンに向けて只本屋島根浜田店塩屋出張所の整理をすることだ。以前に私の家から車で運んでおいたダンボール箱10箱以上のフリーペーパーのストックを都道府県別に別けてBOXに入れ、レコード屋のように並べる作業だ。

事務所に着くと山森さんが首を寝違えたのか右の首筋にしっぷを貼って待っていて驚いた。何を隠そう私も今朝から首を寝違えていたのだ。朝起きたら左の首筋から肩あたりが痛くて腕が上がらない。富士文具のおばちゃんとやりとりしている最中も少し体が傾いていたに違いない。なので、ここまでの全ての描写に「寝違えて傾いている」を加味して読み直してほしい。

「寝違えて傾いている」ままで山森さんと中途半端な会釈を交わした。急遽ワンオペ子守りになったため山森さんは「寝違えて傾いている」まま退室。幸いにも「寝違えて傾いていない」学生さんが手伝いに来てくれたのでとても助かった。なにせ「寝違えて傾いている」私は、腕が上がらない。駅まで「寝違えて傾いていない」学生さんを迎えに行き、寄り道してこれまた「寝違えて傾いていない」店主のまりさんを紹介してから「寝違えて傾いている」のをこらえて、最初のダンボール箱を開けた。

20231013

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