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99日目 最終回 はっぴいえんどから始めよう

天狗プレイ場の奥の扉を開け、尾道レコードで岡林信康のライブ盤レコードを買った。900円。バックバンドは「はっぴいえんど」である。三軒家アパートメントに店を構えるレコード店の店主いわく「シティポップ好きには全く売れないんよなあ」そりゃそうだ。泥臭い岡林だもの。70年代だもの。三軒家アパートメントは尾道空き家再生プロジェクトがリノベしてサブリースする賃貸で、昨日の深夜に訪ねた古本屋弐拾dbの分室「ミリバール」も入居している。覗くと夜中3時まで営業していたはずの店主がもう座っていて「きのうはどうも」と会釈してくれた。一体いつ寝てるんだろうか?

塩屋で進めている空き家対策事業の視察で、朝到着したなおきくんと合流し、尾道空き家再生プロジェクトが主催する説明会に1日密着して勉強させてもらった。家を譲りたい方、空き家を借りたい方、将来の移住に備えて話をききたい方などがやってきては切実な相談をされていた。邪魔にならないように座りながら、合間で運営の仕方などを教えていただけ、なるほどと思うことばかり。そして、空き家対策は、まだまだやってみないとわからないことばかり。岡林のアルバムのタイトルではないが、「見るまえに跳べ」である。

お昼間になおきくんと2人、まちあるき、というか、斜面ずたい。傾斜のきつい土地に地層のように重なって並ぶ民家の間を登ったり下ったりしながら歩きまわった。一体どうやったらこの建て付けになるんだ?という佇まいだが、その複雑さに圧倒的な生命力を感じた。地権者が遠方に住んでいて廃屋化も進んでいるというが、すっきりした新建材の街には感じられない息吹がある。高齢になれば確かに暮らすのは大変だ。だからこそ、若い人と入れ替えて呼吸を途切れないようにしないといけない。空き家対策は、人の循環の問題ともいえる。

尾道から在来線で福山へ。福山から新幹線に乗り継ぎ、3日ぶりに神戸の自宅に戻った。衣笠さんに撮ってもらった七五三の写真があがってきていた。どの写真もいい。とりわけ、祖父母も合わせて全員で親指と人差し指だけ立ててアゴにあてているポーズの写真が最高だ。その仕草は、ミュージシャンのテイ・トウワのレコードジャケットのアイコン。「とうわ」という名前が同じなので、息子が自然と真似するようになった。その日も「やって」と言ったわけではないのにポーズしていた。シャキーン!両家の祖父母たちのやらされ感がなんともいい味をだしている。明日はレコードを聴こう。

20231212

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