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P.V.L日記 父子入院8日目 電車

PVL(脳室周囲白質軟化症)から独歩をめざしリハビリ入院、
3歳児と父親が入院という名の合宿生活。
OTが9時から。PTが16時20分から。合間に立位台で40分×2回。
担当医と産科医療補償制度、歯科検診の相談。
三食介助、入浴、同室のお友達と激しくプラレール遊び。

5月9日

山間の農村で生まれた私は、電車の玩具で遊んだ記憶がない。そもそも電車が走っていない。というか、バスさえも走っていない。近隣のコンビニまで車で15分だ。生活環境は子どもの興味関心を左右する。神戸で生まれた息子にはJR、阪神、阪急に加え、山陽、地下鉄、ポートライナーまであるのだから好きにならずにはいられないのだろう。2歳過ぎまでパトカーを模した手押し車で踏み切りの近くへ散歩し、ひたすら電車を見送った日々も懐かしい。今や、youtubeで電車の破壊動画を楽しんでいる。どうやら、いけないものを観ている感覚はあるらしく、その動画になると側に寄らないで欲しいと警戒を示す。以前仕事で、小児科医の取材を担当したときに「子どもの本分は破壊である」と言われて妙に納得したのを思い出した。

今日は電車動画を見せることと引き換えに、立位台に40分間乗った。それを2回。立位台(プロンボード)は、背筋や股関節を伸ばすためにベルトで固定して矯正する台のことである。はやい話が「縛り付け」である。初めて立位台をみたときは、からくりのお茶運び人形のような姿に絶句したが、乗る回数に応じて背筋が伸びていくのを見ると心を鬼にして乗ってもらうしかない。腰回りの筋力で支えることができないため、くの字型に体型をゆがめてバランスを取ることが多く、放置しておけば背骨が曲がってしまい、重傷の場合は内臓まで痛めることがある。なおさら乗せるしかない。

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OTでは毎日、靴を脱いで、靴下を脱いで、シャツを脱いで、ズボンを脱いで、ズボンを履いて、シャツを着て、靴下を履いて、靴を履く。この動作を繰り返し教わる。仕事や登園で時間に追われているため、家では教えるのが難しく本当に助かる。可動域が狭かったり筋力がなかったり、過剰に足が緊張しているゆえお着替えも独りではなかなか出来ない。ただ、先に述べた手押し車で散歩させるとき、方向転換を右左で覚えさせた甲斐があって右手・左手の区別が付く。その点はセラピストさんもやりやすそうだ。

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さらにPTの部屋に向かう際に、PCW(ポスチャーコントロールウォーカー)という歩行器を使って張り切って歩いていくと、歩行器を持って立ったまま靴や装具のベルトを外し始めた。おそらく膝が以前よりも上がるようになったことと、毎日のお着替え訓練でコツをつかんだのだろう。

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今日最も手を焼いたのは、昨日買ったプラレールの取扱いだ。肌身離さず持ち続けてOTやPTへも持参する始末。セラピストさんたちには苦労をかけてしまった。電車を連結させ、動かし、乗車アナウンスを叫び、集中して訓練に取り組んでくれる。5000円を払った元は取れているが朝6時から自由室でプラレール遊びをし、訓練の合間も2時間休まずプラレール遊びをし、少し仮眠をしようと画策してその場を離れても、廊下を猛スピードのハイハイで追いかけてくる。もうホラーである。(続く)

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