見つけてしまった
自分から何かを好きになることが、ない。
趣味のギターは高校入学当初、偶然隣の席に座っていた友達が勧めてくれてはじめたものだし、体に良いと聞いた途端プロテインを飲み、好きだと言われたから付き合って、プロポーズされたから結婚した。
そんな人生。
多趣味で好奇心も旺盛な性格のため、どんな風に趣味を見つけるのかよく尋ねられる。
どんなものもふとしたきっかけや偶然が重なっただけで、特にこれといった珍しさはない。ただその機会が多いだけだし、みんなそんなもんなんじゃないか。
友達に勧められた音楽を聴き、流行っているからドラマを見て、共通の話題で笑いたいからエンタの神様を見る。そんな人生だった。
特に私は趣味趣向にあまりエゴのない人間だと自己分析していた。特に音楽をやるようになってそれを痛感した。周りの人間は知らない洋楽やインディーズバンドをたくさん知っていて、自分が好きな自分だけの音楽があった。趣味の方向性さえも“個性”があるように思えた。
なんでそんなもの知っているんだろう?とは思うものの、私は自分から自分のハマれる音楽を探しにいこうとは思わなかった。有線から流れて来るJ-POPで十分だった。良いものは自分から探さなくても表面化してくるし、流行ってから手をつければ良いとさえ思っていた。
しかし最近そんな長年の考え方に青天の霹靂が走った。
BE:FIRSTだ。
彼らはAAAのSKY-HIが私費1億円を投じたことでも話題となったオーディションプロジェクト“THE FIRST“出身の7人組ボーイズグループである。
私は以前妹に影響され「虹プロ」にハマった。
オーディション番組が元々好きなのもあったがTHE FIRSTも虹プロ同様、Huluだけでなく日テレ系の情報番組『スッキリ』でも放送され、大衆に晒されるという機会は同等にある。
これは必ず爆発的人気グループになる!と踏んだ私はTHE FIRSTをたった1人見始めた。
友達に聞いても、妹さえも「何それ知らない」と言う反応で、自分の周囲での認知度はほとんどゼロだった。同じ話題を共有できる人は1人もいなかった。
自分が、自分のために、ただただ見ていた。
そんなオーディションも佳境を迎えるにつれて世間での注目度も高まり、次第に周囲での認知度も上がっていった。しかし内容について語れる人は居なかったし、自分が一番詳しいという状況だった。
人生で初めて布教をした。
(いや、今思えば大学1年生の時に箱根駅伝に染まってくれた3人にも駅伝布教はしていたかもしれない)
自分が心から良い!と思ったものを広める労力は全く惜しまなかった。
まだ知られていないものを認知してもらい、同じ熱量でハマってくれて、共有できることはこの上なく嬉しかった。
きっとインディーズバンドに火をつけていく、カルチャーを生み出して来たファン達は、この快感をとっくに味わっていたのだろう。
自分発のお気に入りを見つけることってこんなに楽しいんだ。
その上共感が波となり、他でも同じような波が起きて、やがて大波としてブームを形成する。良きものが世に表層化する裏側にはこんな喜びがあったのか。
私はもちろん同ボーイズグループのファンであり、彼らを“推す“ことにも喜びを感じてるが、それ以上に自分から見つけに行くことの楽しさを教えてくれたことにも感謝したい。
コロンブスがいなければ大陸が見つからなかった様に、好奇心なきところに新たな発見は生まれないのだ、という至極当たり前のことにようやく気付いた夏だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?