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【資産形成】毎月配当ETFの最適な買付頻度

リスクを抑えつつ安定した収益を得るべく、ドルコスト平均法にならって、毎月ETFを購入している方は多いと思います

ドルコスト平均法とは、予め決めた金額分のETFを毎月買うという資産形成戦略です。利点は、予算額分を一度に買うよりも、高値でETFを買ってしまう可能性が減ることです。ETFの価格が変動しても、毎月こまめに買うことで買付額が平均化されます。

最近知ったのですが、このドルコスト平均法には、毎月購入ではなく毎年1回購入するという応用もあるそうです。

この応用のメリットは一度に買うことで買付手数料が減ることです。例えば、SBI証券の米国ETFの買付手数料は買付額の0.495%ですが、手数料には上限があり22ドルです。従って、4444.45ドル以上買う場合は、手数料は22ドルで固定となり、それ以上かかるはずの手数料はお得となります。デメリットは、毎月買うよりも買付価格が平均化される度合いが減ることです。とはいえ何十年も買い続けるとすると1年1回買付でも十分平均化されるとのことです。

なるほどこれはいいですね。買付手数料が減るのは魅力です。毎月買う手間が減るのも魅力です。

他方、毎月配当のあるETFを買っている場合、1年に1度購入するよりも毎月購入するほうがトータルで得られる配当は増えます。持っているETFの数が多ければ多いほど配当が増えるからです。

では毎月配当のあるETFの場合、どの買付戦略が最適でしょうか?

前フリが長かったですが、各々の買付戦略の期待リターンを計算しどの戦略が最適かを調べてみました。この記事で紹介します。

実験条件

Mドルを持っているとし、年間にNドル準備し追加で購入するとします。ETFの価格は変わらないとし、価格は0.01ドルとします。利回りはYです。

月ごと購入戦略は、毎月得た配当と「N / 12」ドル分、毎月ETFを購入します。年ごと購入戦略は、その年に得た配当とNドル分、1年に1度ETFを購入します。

これらの戦略を1月からはじめて、3年後の資産を比べます。年ごとの購入は12月に行うとします。年ごとの購入を最終月に行うことの是非ですが、年末に1年貯めたお金でまとめて買うことはよくあると思い、妥当と思います。

結果

元資産M、追加額N、利回りYを色々変えて計算しました。いずれの場合も毎月購入戦略の勝ちです。

それぞれの条件での「月ごと購入戦略の結果」-「年ごと購入戦略の結果」を記します。月ごと購入戦略のほうがリターンが高いので、下記表のセルは+の値となっています。

  • 利回り1%のとき

$$
\begin{array}{l|lll} & N=10000 & N=15000 & N=20000 \\
\hline
M=50000 & 53.83 & 41.60& 29.39\\
M=100000 & 53.22 & 41.0& 28.78\\
M=200000 &52.0 & 39.77& 27.55
\end{array}
$$

  • 利回り2%のとき

$$
\begin{array}{l|lll} & N=10000 & N=15000 & N=20000 \\
\hline
M=50000 & 210.73   & 341.1& 471.47\\
M=100000 & 223.77& 354.14 & 484.51\\
M=200000 & 249.84 & 380.21 & 510.58
\end{array}
$$

  • 利回り3%のとき

$$
\begin{array}{l|lll}
& N=10000 & N=15000 & N=20000 \\
\hline
M=50000 & 389.36   & 668.8& 948.24\\
M=100000 & 431.27& 710.71 & 990.15\\
M=200000 & 515.1 & 794.54 & 1073.99
\end{array}
$$

分析

1年後の月ごと戦略での資産と年ごと戦略の資産を式で見てみましょう。

月ごと戦略の資産推移はこのようになります。$${M_i}$$が$${i}$$ヶ月後の資産を表します。

$$
\begin{array}{rl}
M_1&=M+(M*(Y-1)/12+N/12)*c\\
M_2&=M_1+(M_1*(Y-1)/12+N/12)*c\\
&…\\
M_{12}&=M_{11}+(M_{11}*(Y-1)/12+N/12)*c\\
&=(1+\frac{Y-1}{12}c)^{12}(M+\frac{N}{Y-1})-\frac{N}{Y-1}
\end{array}
$$

ここで、$${c=1-0.00495}$$で、買付手数料で減る資産の割合を表します。

次に、年ごと戦略で得られる資産はこのようになります。

$$
M*Y+N-22
$$

従って「月ごと戦略の年間増加分」は

$$
M_{12}-M=((1+\frac{Y-1}{12}c)^{12}-1)*(M+\frac{N}{Y-1})
$$

「年ごと戦略で得られる年間増加分」は

$$
(Y-1)*(M+\frac{N}{Y-1})-22
$$

となります。

ところで「月ごと戦略の年間増加分」の$${(1+\frac{Y-1}{12}c)^{12}}$$は、下に示す通りほぼ$${Y}$$となります。

$$
\begin{array}{lc}
1.00999&(Y=1.01)\\
1.02008&(Y=1.02)\\
1.03026&(Y=1.03)
\end{array}
$$

従って、「月ごと戦略の年間増加分」は

$$
\begin{array}{rl}
M_{12}-M&=((1+\frac{Y-1}{12}c)^{12}-1)*(M+\frac{N}{Y-1})\\
&\simeq (Y-1)*(M+\frac{N}{Y-1})
\end{array}
$$

となります。結果、22ドル引かれてる分、「年ごと戦略で得られる年間増加分」の方が少なくなります。

月ごと戦略は、月ごとの購入で得られる複利効果で、買付手数料分を埋めあわせできる程度の利益を1年間で手に入れていたということですね。

まとめ

複利効果は偉大

複利効果の図 by いらすとや


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