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6月某日

そろそろ大変貴重なモラトリアム期間が終わりそうな気がしてむしゃくしゃしている時に、欲しかった特典付きの本が神戸の元町の本屋でしか買えないのだということをインスタグラムのストーリーで知り、慌てて平日の昼間に本屋へと向かった。前職の事務所が神戸にありなんとなくそっち方面には行かないようにしていたので神戸行きの電車に乗るのは久しぶりだった。

その日は6月とは思えないほどの夏日ではあったが風が吹くとそれなりに涼しかったので、じめじめ雨の6月よりかは幾分ましだった。快晴の空からさんさんと降り注ぐ太陽の光は神戸の海と空と山に反射して少し淡いような懐かしいような独特の明るさと雰囲気を醸し出す。

元町駅から本屋までは鯉川筋からメリケンロードへ行った方が早かったのだけれど、本屋の開店まで時間があったのと、前職の仕事で色々と歩いた街を散歩したくなり少し遠回りしようとトアロードの方に行ってみた。お昼時だったからか意外とたくさん大人がいて、少しだけ社会に接続したような気持ちになった。某感染症の影響なのかテスト期間だからかはわからないけれど、制服をきた学生もたくさんいた。手には何かしらの飲み物を持ち、恋人や友達同士で神戸の街を歩いているのをみて、なんだか懐かしくていろんな感情が溢れてしまいそうだった。もうあの頃には戻れないんだなと思うと少しだけ心がしんどくなる。
そんなことをしみじみ思いながら歩いていたからか、前を横並びで歩く学生たちの、かつて自分が学生だった頃は好きだったはずの、妙にさわやかなあの香りが今はもうあまり好きではないことに気がついた。

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