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彼からの別れを受け入れた-とうとうふられました その2

彼とは最高潮にラブラブで。
いままでに無いぐらいの幸せの絶頂にいた私。

が、その夜は少し違っていた。

決定した飲み会の日時を知らせたあたりから彼のラインの反応がいつもと違った。
毎晩恒例の電話のタイミングが合わなかった。

それで。
いくら待っても電話がかかってこない。
年齢が年齢なだけに安否が心配になる。
体調が悪くて倒れているのでは??
不安になる。

携帯の電話にかけてみるが出ない。

家の電話にかけてみる。

少し呼び出し音が鳴って彼が出た。
「どうしたの?大丈夫??」
心配した私が発した言葉に彼が笑う。
「大丈夫だよ!さくらこそどうしたの?」

ああ、良かった。
いつも通りラインの電話に切り替える。

が…。
やっぱりなんだか今日は様子がおかしい。

段々イザコザしはじめる。
要約するとこんな感じ。
「今日はさくらと電話をしない方が良かった。さくらが電話をかけてきたから話がおかしな方向に行ってしまった。飲み会がそんなに楽しみなら僕と会わないで飲み会ばっかり行って生きていけばいいだろ?お前なんか飲み会で持ち帰られて他の男にやられちまえ。もう終わりにしよう。もう嫌になった。もう一緒にいたくない。ばいばい。」

「ちょっと待って」
の私の制止も効かず…。

ラインもブロック。
インスタもブロック。
Facebookもブロック。

何度かけても、家の電話にも出ない。

八方塞がり。
どうにもならない…。

でも、もう眠らなければ。

絶望のまま、それでも眠りにつく。

だって明日は。
長女の卒業式なのだ。


目が覚めて。

「飲み会があると知らせただけで、こうなってしまう相手と付き合い続けることは不可能だ…。」と今さらながら思う。

私はイチ社会人として生きている。
他の人との関わりだってある。
彼のためだけに生きることは出来ない。

それを、彼が。
受け入れられないのであれば。
別れを選ぶほかにはない。

それは理解できる。
冷静に考えれば別れ以外の選択肢は無い。

だが。

昨日まで自分の一部分だと思っていた彼が、急に私を拒絶して、いなくなった。
昨日まで将来を思い描いていた彼が、急に私を拒絶して、いなくなった。

それを受け入れられるほどの容量は…。

私には、無かった。

最後の望みをかけて。
携帯のメルアドにメールを送る。

届いているのかどうかもわからない。
でも、何度も送る。

「届いていたら文面がなくてもいいから返信下さい。そうじゃないと家まで行ってしまいそうだから」
半分脅しのようなメールに、文章なしの空メールが届く。

彼は。
一文字ですら、私に言葉を送る気は無いらしい。

…。
絶望…。

それ以外のナニモノでも無い感情に体中が支配される。

今までだったら。
朝には「昨日はごめんね」のメッセージが届いて事なきを得てきた。

だけど、今朝は、違う。

そのあと何度もメールを送ったが
「もう別れて欲しい」
との文面が届いて、あとは音沙汰ナシ。

これは…。
受け入れるしかないのか。

だけど…。

「私の一部分」と「思い描いていた未来」が突然奪われたことにより、私が吐く息からは絶望という気体しか出ない。

呼吸をするだけで。
絶望が私の体内を巡る。

もうダメなのか。
もう戻れないのか。

戻りたい。
でも戻れないのか。

彼は、私を、拒絶した。

身体中いっぱいに充満した絶望を隠し持ったまま、長女と卒業式に向かう。
道中、運転する車で「最後の手紙」が流れる。
いつもと違う私であることを長女に悟られないよう、鼻歌を歌う。
不意に涙がこぼれないよう気を使いながら。

卒業式の会場に到着し、余計なことを考えないようにと持参した本を読む。

普段なら。
顔見知りの保護者を見つけておしゃべりに興じる私だが。
今日は誰かと話ができる精神状態ではない。

式が始まるまで、ひたすら本を読み「彼が私を拒絶した」事実から意識を逸らす努力をする。

ほどなくして。
卒業式がはじまった。

入学式から3年ぶん成長した子どもたちが、入場してくる。
彼とのことで痛む胸を抱えながら、式が進むのを見て思った。

この会場にいる、たくさんの生徒たちと、たくさんの先生方が、いま、ここで、別れの切なさを抱えて、この場にいる。

51年も生きてきた私が。
恋人からの別れを受け入れずにもがいているのは。
オトナとして彼らに恥ずかしいことなのではないか。

私は。
生徒たちが抱える、別れの切なさを目の当たりにして。

潔く。
彼の別れを受け入れるべきなのではないだろうか。
そう思った。
そう思えた。

そうして。

今まで「別れたくない」と送り続けたメールから一転。
「本当は別れたくないけれど、ふたりの合意がなければ恋人ではいられない。しんちゃんがどうしても別れたいなら、その気持ちは受け入れます。」
と別れを受け入れるメールを送った。

するとすぐに返事が来た。
「別れを受け入れてくれてありがとう。本当に好きだったし、愛する気持ちでいっぱいでした。でも、これからは別々の人生を生きていこう。今までありがとう。」

ああ。

本当に終わったのか…。

卒業、か。

あんなに一生懸命頑張ったけれど。
恋愛は、ひとりでは成立しない。

彼に拒絶された痛みは、これから、どうにかして癒していかなくてはいかないのだ。
自分自身で。

でも。

目の前にいる。
長女を含めた卒業生たちの涙と。
彼らの切なさに比べたら。

私の胸の痛みなんて、なんてこと無いことなのかもしれない。

こっからどのぐらい時間がかかるかは、わからないけれども。
今までの経験をフルに活かして。
私は自力で立ち上がらなければならない。

卒業の切なさを乗り越えて巣立っていく彼らの姿に恥じないオトナであれるように。