ガルシア=マルケス『百年の孤独』

マコンドはすでに、聖書にもあるが怒りくるう暴風のために土埃や瓦礫がつむじを巻く、廃墟と化していた。知り抜いている事実に時間をついやすのをやめて、アウレリャノは十一ページ分を飛ばし、げんに生きている瞬間の解読にかかった。羊皮紙の最後のページを解読しつつある自分を予想しながら、ロがきける鏡をのぞいているように、刻々と謎を解いていった。予言の先回りをして、自分が死ぬ日とそのときの様子を調べるために、さらにページをとばした。しかし、最後の行に達するまでもなく、もはやこの部屋から出るときのないことを彼は知っていた。なぜならば、アウレリャノ・バビロニアが羊皮紙の解読を終えたまさにその瞬間に、この鏡の(すなわち蜃気楼)の町は風によってなぎ倒され、人間の記憶から消えることは明らかだったからだ。また、百年の孤独を運命づけられた家系は二度と地上に出現する機会を持ちえないため、羊皮紙に記されている事柄のいっさいは、過去と未来を問わず、反復の可能性のないことが予想されたからである。

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