ジョーカー

「ペニー
 ペニー・フレック
 嫌な名前だ
 言ってたよね?
 僕の笑いは病気だ
 僕は おかしいって
 違う
 これが本当の僕だ」

「ハッピー…」

「ハッピー
 何がハッピーだ
 幸せなど一度もなかった
 笑えるのは…
 マジで笑える
 人生は悲劇だと思ってた
 だが今 分かった
 僕の人生は喜劇だ」
「そのメイクだが──
 政治的な意図は全然ないと
 話してたよね?」

「僕は政治には無関心
 人を笑わせたいだけ」

「うまくいってない?」
「君はコメディアンだ
 新しいネタを
 披露してくれる?」

「いいよ」

「ノートだ
 ネタ帳だね」

“この人生以上に  硬貨な死を望む”

「ひと晩でも待つ」

「よし じゃあこれだ
 “ノック ノック”」

「暗記できない?」

「やり直そう
 “ノック ノック”」

「どなた?」

「“警察です
 息子さんが酔っ払いに
 轢き殺された”」

「ダメよ そういう冗談は」
「笑えないね
 この番組向きじゃない」

「そうだね 悪かった
 このところ
 ツラいことばかりで
 あのこと以来…
 証券マン3人 殺した」

「それでオチは?」

「オチはない
 ジョークじゃない」

「君が地下鉄で
 3人を撃ち殺した?
 どう信じろと?」

「僕には もう失うものはない
 傷つける者もいない
 僕の人生は まさに喜劇だ」

「人殺しが笑えることか?」

「そうさ
 自分を偽るのは疲れた
 喜劇なんて主観さ
 そうだろ?
 みんなだって…
 この社会だって そうだ
 善悪を主観で決めてる
 同じさ
 自分で決めればいい
 笑えるか 笑えないか」

(つまみ出せ!)
「つまり君が
 この番組に出たのは──
 ブームを起こして
 シンボルになるため?」

「カンベンしてよ
 僕がブームの火付け役?
 奴らが最低だから殺した
 どいつもこいつも最低で
 狂いたくもなるさ」

「君は狂ってるから
 人を殺していいのか?」

「違うよ
 音痴だったから
 死んでもらった
 なぜ彼らに同情する?
 僕が歩道で死んでも
 踏みつけるだろ
 誰も僕に気づかない
 たが あの3人は
 ウェインが悲しんでくれた」

「ウェインと問題でも?」

「そのとおりだ」

「マレー 外の世界を
 見たことあるか?
 スタジオの外に
 出たことは?
 誰もが大声で罵り合ってる
 礼儀も何もない!
 誰も他人のことを
 気にかけない
 ウェインみたいな奴らが
 僕の気持ちを考えるか?
 他人の気持ちなど考えない
 こう思うだけさ
 “黙って いい子にしてろ
 狼にはなれない”」

「終わった?
 自分を憐れんで──
 殺人の言い訳を
 並べてるだけだ
 みんなが
 最低ってわけじゃない」

「あんたは最低だ」

「私が?
 私が どう最低なんだ?」

「僕の映像を流して
 この番組に呼んだ
 笑いものにするために
 奴らと同じだ」

「私を知らないくせに
 君が引き金になって──
 暴動が起きた
 重傷の警官たちを
 君は笑った
 君のせいで
 今日も殺人が起きてる」

「そうだね
 笑い話を」

「聞きたくない」

「心を病んだ孤独な男を
 欺くと どうなるか
 社会に見捨てられ
 ゴミみたいに扱われた男だ!」

「警察を呼べ」

「報いを受けろ クソ野郎!」

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