タイムカプセル
10年ぶりに、中学のグループLINEが動いた。
「10年前に書いた自分への手紙が届いてない人は僕に連絡ください!」
なんのことだ?
それは埃をかぶったというレベルではなく、僕の脳内から完全に忘れ去られた記憶だった。
どうやら、中学3年生の卒業期に、10年後の自分にむけて手紙書いていたらしく、それが手元に届いているかの確認が、当時の学級委員長から来ていたのだ。
振り返ればこの10年、本当にいろんなことがあった。
高校、大学を卒業し、社会人となり、国内様々な場所に転勤し、今年26歳になる。
中学卒業時には想像もしていない未来だ。
当時の自分といったら、学校ではひたすら騒いで、受験の為に勉強を必死に頑張りながら、暇さえあればエロいことばっかり考えているようなテンプレートの中学生3年生だったと思う。
それなりに不安なこともあった気がするが、今の僕からしたらちっぽけに思えるような、そんな狭い世界で過ごしていた「僕」が、いまの僕に向かってどんなことを綴っているのか、たまらなく気になって仕方がなかった。
実家は住所は変わっていないので、すぐさま母親に手紙の事について確認した。
届いていない。
ならば、なにかの手違いで郵便局に戻っているはず。
連絡をくれた同級生に、当時の担任にもう一度確認してもらうようお願いした。
僕は、手紙を書いていなかった。
その日たまたま休みだったのか、はたまた思春期特有の尖りなのか。恐らく後者が有力だろう。
僕は10年後の自分に手紙を書いていなかった。
堪らなく情けなく、恥ずかしい気持ちになった。
それはダサい「誰か」ではなく、紛れもない自分だからだ。
なんだかんだ、楽しく生きてるよ。
この世に存在しない手紙に、僕はそう答えた。
当時いた横浜とは少し遅れて、ここ仙台では桜がこれでもかとばかりに咲いている。
社会人4年目が始まった。
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