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「最適な配置」とは? ロジックはあるの

大手企業に勤める人が来社されました。
問題意識が高く、行動力もあり、バシバシと仕事を遂行していくことで一目置かれるよう存在感のある人です。ただ、2年前、自分の仕事のやり方に悩んだこともある人で、悩み相談を受けたこともありました。しかし、1年前に上司が変わったことから、風向きが変わったようなのです。
 
話しをしていると「私は何も変わっていません。上司が変わったことで、仕事は以前よりもやりやすくなったし、職場の雰囲気は変わりました。例えば、以前なら提案したことは保留になってばかりでストレスを溜めていましたが、今はすぐに動けるので、楽しく働けています」
「自分の評価に興味はありませんが、私の評価も上がったらしいです。私自身は特に何も変えていないのに不思議ですね (笑)」
 
この人の体験は〝特別な事例〟だと思いますか?
 
実は、多く組織で起こっている「あるある」なのです。
ただ、それを口に対して言うか、言わないかの差なのでしょう。我々のところには、日々こんな問題、課題が報告されています。
個人、上司、チームのデータを見ている我々にすれば「やっぱりデータ通り。そうなんでしょうね」と当たり前とわかる範囲なのですが…。
言わないまま、〝腐っていく〟または〝辞めていく〟ことで、表面化しません。優秀であればあるほど、環境とのミスマッチは軋轢、乖離を大きくすることになり、「腐る」「辞職」も早まるのです。もったいない話しです。
 
 そんなことを考えながらタクシーに乗ると、「最適配置が出来る」人事・組織向けのシステムのCMが流れてきました。
「最適な配置」とは、どんな基準で、どんな状態を指すのでしょうか?
 
企業は「生産性」が求められますので、「最適な配置」とは〝一人当たり生産性の高さ〟になります。さらに、サステナブルさも必要なので、若手を育成しつつ、それぞれのキャリアに役立ち、部門としてもシナジーを生み出している状態になるでしょう。
さらに付け加えると、「業務ミッション」に合致しているかです。組織論の原則は「組織は戦略に従う」ですから『組織』は〝ミッション・オリエンテッド〟でなければなりません。
例えば「議論をして様々なメリット、デメリットが検討され、活用できるリソースも考慮され、最短で実現できるような意思決定が出来ている」ことと「運営プロセスにおいて、スピード感がありながらも、抜け漏れなく進められる」ことで、「ミッションへの適合性も高い」ということが、「最適な配置」なのです。
 
 つまり、組織として「どんな議論」や「やりとり」があり、誰がどんな役割を担っていくのか、それを明確に予測し、評価できることです。
 例えば、〇さんは、発想が豊かで議論を広げられる人。□さんはリスクに敏感でヘッジしようとしやすい。△さんは分析的で賛否両論を聞きつつ、より合理性のある方に判定しやすい等々。そして、チームとして補完し合う関係性であり、◇◇な議論を展開しやすいため、『既存サービスの新規市場への参入というプロジェクトには最適である』という内容です。
さらに、S氏、T氏、U氏、V氏、W氏、X氏の6人チームがあったとして、X氏よりもZ氏の方が、「何々の理由で最適だ」とメンバーを変えることで起こる変化を予測できなければ、最適とは言えないのです。
冒頭に紹介した人は、まさに、その事例です。
ご本人から悩みを聞いて、組織分析をおこなったところ、「マネジャーはチームミッションへの適性が低い」「この人との相性も悪い」という結果で、マネジャーの異動をアドバイスしていました。その後、異動が実現したことで〝この人が活躍し出した〟のです。もっと早く異動の意思決定をしていたら、ご本人が悩む期間が少なくて済んだのです。
尚、上司も別の組織に異動したことで、ミッションとの適性も高まり、成果に貢献したのです。「二人を失ってしまうリスク」を回避し、さらに成果につながる「最適な配置」が実現しました。
 
このように、ロジックに基づき、未来予測で出来るからこそ、「最適だ」「最適でない」と評価できるのです。
一つの事例ですが、こんなレベルが実現できているのであれば、CM等で「最適配置を謳う」のは当然だと思いますが、そうでない場合、何を持って「最適配置」と言うのか、それを明示する責任があるのではないかと思います。
 
 「人的資産経営」や「データ人事」「HRテック」と人事関連のビジネスが広がっています。市場が拡大することは嬉しいのですが、「安かろう」「悪かろう」では、ユーザーからの信頼を失います。やはり「何を根拠にしているか」を示す責任はあります。
ユーザー側も、是非に突っ込んでください。市場をより健全にしていくためにも。
(2018年5月/2022年1月記事の合作)