【プレイバック2021】真・女神転生Ⅴについて考える
いろいろなことを振り返るプレイバック2021シリーズ、おそらく第一回で終わりそうだけど、今年のゲームの話をします。
と言っても、僕そんなにゲームを幅広く遊んでるわけでもなく、「2021年のベストゲーム!」とぶち上げるような資格も無かろうと。
ただ2021年、並並ならぬ思い入れがある女神転生シリーズの5年ぶりの新作『真・女神転生Ⅴ』をプレイできたことは、大きなゲーム体験だった。
そういえば先日、とあるテレビ番組で「ゲーム総選挙」をやっていたんだけど、視聴者投票の100位までのランキング結果を見たところ、女神転生シリーズが1本も入っていなかった。
(ペルソナシリーズは数本ランクインしていたけど)
一番人気の真3くらいはランクインしても良さそうなものだけど、メガテンブランドの微妙な立ち位置をあらためて思い知らされながら、メガテン5に対する想いの丈を書いていこうと思います。
ビジュアル面で、新時代のメガテンを見せてくれた
とにかく、
土居政之さんなのである。
正直、なめていたんだと思う。すいません。
まさか、ここに来て金子一馬氏につづくデザイナー、悪魔絵師に出会えるとは思っていなかった。
いや、金子氏への思い入れが強すぎて、出会えるわけないと思い込んでいたのかもしれない。
土居さんは、金子氏が関わらなくなった前作『真・女神転生Ⅳ』以降のメインデザイナーとしてメガテンシリーズに参加しているわけですが、今作での土居さんの仕事は一線を超えた、そりゃ素晴らしいものでした。
とにかく、今作のキャラデザインを見て欲しい。
美しくも神秘的、アイコニックな超美少年主人公・ナホビノ。
ラフム、イズン、アブディエル、フィン・マックール…、前作では多彩なゲストデザイナーの参加によって統一性が欠けてしまった感があった新規悪魔たちも、今作では土居さんのメガテンイズムに溢れたデザインに統合され、金子氏の生み出してきた悪魔たちと溶け合いながら、新機軸も見せてくれる。
そして、八雲ショウヘイ×ジョカ コンビの並々ならぬ色気の発露、
び、美の暴力や〜!!!!
「硬派なメガテン世界では、可愛い系すぎる」という意見もあると思うが、僕にはむしろメガテンの世界観を大きく逸脱せずにこれだけの「ポップさ」を取り入れられるバランス感覚に感動した。
メガテン的でありながら、新しい希求力を持った、新時代のメガテンビジュアルにふさわしい仕上がり。
もちろん金子氏の復帰も願っているが、ひとまず土居さん、ありがとう…!って気持ちなんだよね。
イズンよりアルテミス派なんだよね。
加えて、ゲーム全体のグラフィックが強化された。
別にメガテンにグラフィック面での不足を感じたことは無かったんだけど、いざ人物、悪魔たちの魅力が強化されたグラフィックを見ると、こんなに進化の余地があったんだと驚かされたなー。
お馴染みの悪魔たちも、より美麗、よく動き、大きく魅力度アップ。
スラオシャってあんな変な動きするんだ。これはペルソナシリーズからのフィードバックもあるだろう。
あざす!
ゲーム性は、メガテンらしくも、進化の手応えあり
お馴染みの悪魔会話、悪魔合体、そして今やメガテンシリーズの目玉でもあるプレスターンバトルも続投。
戦闘の難易度は、相変わらず雑魚戦でも事故れば即死という鬼畜っぷりで、マゾヒストしかいないメガテンファンをヒーヒー喜ばせてくれるけど、難易度選択可能という親切な作りで隔世の感もある。
初見では全く歯が立たなくて「これ、絶対勝つことができんだろ…、テストプレイしたんか金返せ…」とさすがのマゾヒストも絶望するような強敵でも、十分な準備と対策をしてから挑むとしっかり攻略できる絶妙な難易度に設定されている。
(個人的には、すこし難しいくらいを選択する方が楽しいと思う。)
今作では、相手の行動に対してどういう選択肢をとっていくか?というパズル的な戦略性が重視されていて、
相手の行動を無効化するシールドの使い所によっては、劇的に有利に戦闘を運ぶことができる。
これまで悪魔固有で設定されていた「耐性」をインスタントに獲得できる「〇障石」「〇〇ブロック」の登場で、戦闘がかなり違った手応えになっているのが、過去作との差別化になっていて面白いなーと思う。
それと、今作ではレベルが戦闘に与える影響がかなり大きく設定されていて、1、2レベル上げただけで大きく有利になる。
そのため、攻略できないボスがいても、とりあえず「レベルを上げてごり押し」で突破可能なので、「強敵に勝てずに詰んでしまう」ことはなかなか無いはず。
(自分は初見ハードモード=難易度最大でクリアしたけど、ヒュドラやジョカなど、初戦時はブッ壊れてるんじゃないかと感じる強敵でも、レベルを上げて対策を練るとなんとかなった。)
逆に言うと、レベルを上げすぎるとゲーム全体の難易度が大きく下がってしまうという弊害があって、サブクエストを見逃したり、後回しにしてしまうと、レベル差が生じすぎて「グワハハハハ、ひねりつぶしてやるわ」って感じで出てきたボスと戦ってみたら簡単にひねりつぶせるという事態が発生する。
常にギリギリの戦いをしたいのに、これは勿体無い。レベル上げは計画的に。
(ここに関しては、サブクエストに難易度表示をすることで、攻略のタイミングを少しでも可視化した方がよかったんじゃないかと思う。)
悪魔会話は、真3で簡略化された会話システムとほぼ変わらない。
不意打ちされると、例外なくすべての悪魔が「金出せば見逃してやるよ」と脅してくる殺伐とした世界には驚かされた。
会話パターンは少なく、そろそろソウルハッカーズの頃の狂気的な会話パターンの量に戻してほしいんだけど、ただ今回は特殊会話の数が多いのは良かった。
悪魔合体は、悪魔のスキルを上書きできる「写せ身」合体の登場でめちゃくちゃスキル継承しやすくなった。好きな悪魔に有用なスキルを揃えられるので、自由度は高い。ここも親切設計。
あとは、「ランダマイザ」「ラスタキャンディ」といった「とりあえずこれ使っとけばええやろ」系の最強技の消費MPがかなり大きく設定されていて、バフの有効ターンも3ターンに限定されたので、MPというリソースを管理する難しさもあり「思考停止で使っとけば良い」じゃなくなったのは改良点。
アクション性と、マップの煩雑さの足並みが揃ってなくない?
というわけで、メガテンシリーズとして申し分のないビジュアルとバトル、育成を楽しめるメガテンVだったが、マップもかなり進化している。
3Dマップを、高速のダッシュとジャンプを使って駆け巡り、オブジェクトとして表示されている敵に斬りかかると戦闘突入、というオープンワールド感は、正しく「ブレワイ」以降の「今っぽく」なったメガテンという感じで新鮮だった。
ただ、マップ全体がかなり煩雑な3次元構造になっていて、2次元で表示されたマップ頼りでは目的地にたどり着くのが一苦労。
要するに、マップに高低差を使ったパズル的な要素があるのだが、その辺のギミックが直感的じゃなくて、そもそもが難易度が高い戦闘と組み合わさった時にテンポが悪く感じてしまった。
メガテンは、昔からマップ探索は精神を削るのだが、アクションゲーム的な要素が加わった今作ではこの煩雑さがちょっと勿体ない。
「ブレワイ」のすごいところは、「これ出来ないだろうな」というアクションや移動が、いざやってみると出来てしまうところだと思うんだけど、メガテン5は「これ出来るだろうな」が出来ないという場面が多い。
要するに、探索が作業的であまり楽しくないんだ。
考えるに、探索が作業的になってしまう理由の一つに、魔界=ダアトのマップが代わり映えしないのがあるんじゃないかな。
メガテン5では、「すでに滅びて時間が経過した東京」がメインの舞台となり、その設定だけ聞くと、「これぞメガテン!」って感じでめちゃくちゃテンションぶち上がり案件のように感じるのだが、
「見慣れた東京が崩壊してしまった」という楽しさが、意外とマップから感じられなかった。
倒壊したビル、高速道路ばかりではなく、たとえば見慣れたランドマーク的な建築物がもっと出てきても良い。
アサクサのマップで、浅草寺に行く参道の両脇の土産屋が砂に埋もれている描写があったが、ああいうワクワクがもっとあったら探索が楽しめた気がする。
メガテンに求めているものは、「現実が悪魔に侵食される異化作用」だと思うので、徹底的にリアルな東京を舞台にしてほしいと熱望してます。その辺はアクションの洗練とともに、次回もっとお願いします!
最高のストーリーと、共感できないキャラクター
最後にストーリー。
実にメガテンらしい壮大さと、サプライズも盛り込まれ、強化されたビジュアル演出と合わせて、やや駆け足ながら素晴らしい出来だったと思う。
(制服以外は)見慣れた学園ドラマから、舞台を魔界に移し、だんだん世界の本当の姿が暴かれていく過程はゾクゾクする面白さだ。
メガテンらしいダークな展開も存分に楽しめるし、まさかのタイトル回収には目が点になったね。
メガテンシリーズのお約束であるLAW、NEWTRAL、CHAOSと思われる三つのルートは今作でも存在するのだが、これが今までの概念とは大きく変わっているのも特徴的。
え、それはLAWなのか?それはCHAOSなのか?という部分も多く、LAW、NEWTRAL、CHAOSというよりは、どのキャラクターの理念に賛同するか、と言ったところか。
強いて言うなら、DARK-LAW、LIGHT-CHAOS、DARK-NEWTRALみたいな感じ?
ただ、それだけキャラクターの理念に寄り添った選択を迫られるストーリーでありながら、キャラクターの掘り下げが薄味なのは気になるところ。
そもそもメガテンは全体に突き放した世界観が魅力だとは思うけど、要所要所でキャラクターたちともっと交流できるタイミングがあったら、ストーリーにももっと感感情移入できただろうと思う。
正直サクッとゲームをプレイしているだけだと、ユヅルはただの真面目くんだし、タオは突然ご神託を告げる電波ガール、イチロウはグズグズしているYouTuberだ。
かといって八雲ショウヘイかと言うと、問答無用で殺しにかかってくるような奴だしな…超カッコいいけど…。
そんな中で、思わぬ収穫だったのは、サブキャラである樹島サホリと敦田ミヤズだった。
特に、ミヤズはモブキャラに毛が生えた程度の存在かと思いきや、本編とは別で進行するエジプト神話系のサイドストーリーの中核を成す超重要人物で、その切ない展開も含めて、彼女が一番ドラマを持ったキャラクターとして印象に残った。
メガテン5マニアクスでは、二人のルートをお願いします。
というわけで、『真・女神転生Ⅴ』について思いつくままに書いてきた。
自分の中では新しいメガテンの胎動を感じられる傑作で、ものすごく楽しかった。
そのわりには文句多いな!って感じもするけど、それは今後のメガテンがますます楽しみであるがゆえだと思ってほしい。
何より、かなりプレイしやすくなっているとはいえ、このご時世にいまだ「分かる人にはわかる、ハマる人はハマる」の世界観を貫いているスタンスには頭が下がる。
中学生の時、『ソウルハッカーズ』でメガテンシリーズに出会い、中古で買った『真・女神転生』に衝撃を受けた。
あれから20年経っても、真・女神転生は変わらず、クールで、厳しく、そして美しい。
死ぬまで追いかける所存。
あとは、デビルサマナーシリーズの新作に期待してます。
ナホビノのらくがき
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