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③SANYO 製めん機 NM-G1 麺’S CLUB/昭和の「家電製麺機」を愛でる会

『昭和の「家電製麺機」を愛でる会』というマガジンで4台をレビューしたうちのひとつになります。

3台目は、三洋電機(サンヨー)が生み出した押出式製麺機、「製めん機 NM-G1 SANYO 麺’S CLUB」。正式にはNM-G1(W)、ホワイトという色指定があるので、色違いも存在したのでしょう。NMはヌードルマシンの略でしょうか。Gは謎。

当時のサンヨーは個性のある炊飯器やホームベーカリーといった調理家電を生産していて、我が家の炊飯器はいまだにサンヨー。

気になる発売時期ですが、こちらの情報によると、1989年(昭和64年/平成元年)なので、昭和から平成に変わった年に生まれたようです。定価は35000円。フィリップスのヌードルメーカーより25年も早かった国産押出式製麺機の実力や如何に!

外観

「麺’S CLUB」という浮かれた名前に対して、怖めのフォントで「食のアトリエ」と書かれています。どういうことでしょう。

それと相反するように、製麺を見守る子どもの絵がファンシーですね。平成レトロというやつでしょうか。

入手状態は箱あり、説明書あり!
左隅の「0.027」とう数字を覚えておいてください
買ってはみたけれど、ほぼ使わなかったと思われる状態
スイッチは一つだけのシンプルな設計
まさかこれが製麺機だとは誰も思いませんよね
「あっという間に」だそうです。本当でしょうか
反対側もどうぞ

兄弟機「NM-CH1」も買っていた

実は家電製麺機を集めているときに、あまり考えずにもう一個買っていました。それがこちらの「製めん機 NM-CH1 十割屋」です。

この商品の詳細は不明ですが、もしかしたら「麺’S CLUB」と名付けて家族のだんらん向けに販売した「NM-G1」を、定年後のおとうさん向けとして渋い路線にリニューアルしたものなのかもしれません。あるいは同時発売だったのかも。

入手状態は箱あり、説明書なし
左隅の数字は「0.028」なので、麺’S CLUBの後発であることがわかります
ゴミって書かれていました
十割屋は少し黄ばんでいますが、基本的に同じもののようです
二台もどうしよう

説明書類

麺'S CLUBには、説明書がついていました。

めんは平仮名。うどん、そば、ラーメン、パスタができるようです
三洋電機はもう家電を作っていないんですよね
そば粉と強力粉を混ぜるようです
穴の形状が違うノズルが5種類用意されていました
おいしく作るためのポイントをまとめたカードもありました
みんなもマスターしましょう

生地を捏ねる

それでは実際に使ってみましょう。
可能な限りパーツをばらし、洗浄してから使用しました。

今回はうどんではなく、あえて家庭用製麺機の鬼門ともいえるそばに挑戦。難易度の高いそばを作ることで、ロール式にはない押出式だからこそのメリットを感じられるはず。そば粉の割合は控えめに五割でやってみましょう。
「そば粉100g+強力粉100g+水66ml」
そろそろお腹が膨れてきたので、作る量は説明書の半分にしました。

ざっくりとした作り方

ちなみにこの家電製麺機ですが、なんとニーダーの機能が一切ないため、水回しは完全手作業になります。がんばりましょう。

加水率40%のうどん・ラーメンはそぼろ状、加水率33%のそば、パスタはおから状にするそうです
専用の計量カップがかわいい
中央を凹ませて水を入れて、粉を被せて振って水を広げる
握らないようにかき混ぜる。アナログ作業も楽しいですよね

生地を押し出す

水回しをしたら、「練る」とか「のす」とかの作業は一切なく、いきなり押し出します。
本当にこれで大丈夫なのでしょうか。

麺の作り方
ノズルはそば用の3番をセット
ホッパーの細くなっている部分の半分の高さをキープするのがコツ
大きなホッパーに生地を並べて落としていきます
この機械に夢中となったプロダクトデザイナーの辻村氏
このくらいの高さをキープ!

しばらくするとニョロニョロと縮れまくった麺が押し出されてきました。ちぢれたそばって初めて見ました。

ただこれはメーカーの想定内で、先ほど説明書を改めて読んだところ、「最初にでてくる麺は圧力が十分かかっていないので、細かくしてもう一度ホッパーに戻してください」と驚きの手順が書かれていました。麺の可逆性を感じる工程です。

最初に出てきた麺は、ホッパーに戻すのが正解でした。やっぱり説明書は大事ですね

しばらくすると、とても美しい麺線のそばが押し出されてきました。想像以上に滑らかで、そして意外と出てくる速度が速い。

ホッパーに生地を少しずつ入れながら、出てきた麺を捌いて打ち粉を振るという一連の流れ、なんらかのエンターテインメント性が感じられて最高です。

すぐにきれいな麺線が出てきます
出てきた麺に打ち粉をまぶす。結構忙しい
均一なそばができました
ほとんど生地に無駄が出ません
と思ったらスクリュー部分に残っていました。でも楽しいからOK!

試食

たっぷりと沸かしておいた熱湯で打ち立ての五割そばを茹でて、しっかりと冷水でしめて、シンプルにもりそばでいただきました。

普通に麺棒で伸ばしたそばと違って、生地がギュッと詰まった感じの麺がおもしろい。これは押出式共通の食感ですね。加水率33%のそばはこうなるのかという驚きがあります。手打ちやロール式製麺機では絶対に体験できない新感覚に一同感激。

加水率が低いのでゴワっとした生麺になります
茹でても切れません
洗っても切れない
ちゃんとそばです。でも知っているそばとはちょっと違う
業務用っぽいそばと言えるかもしれません

十割そばに挑戦

この機械なら夢の十割そばも作れるのでは。なんといっても兄弟機が「十割屋」を名乗っているのだから。

この機会を逃したら、もう一生試さない恐れがあるので、せっかくなのでチャレンジしてみましょう。

加水率は33%のままでやってみます
パッサパサ。大丈夫かこれ

甲子園の土くらいパッサパサ(適当な比喩)の生地をホッパーに入れると、五割そばと変わらないくらいに滑らかな麺が出てきました。

十割そば、全然いけます!ちょっとすごくないですか!

あれ、全然普通に出てきた!
なんだかチョコレートみたい
茹でてももちろん大丈夫!

こちらも水で締めて食べてみると、五割そばよりもツルッツル。手打ちの十割そばに感じるボソボソ感がまったくありません。蕎麦というか冷麺をイメージさせる食感ですらあります。なんだこれ。

表面に油をまぶしたのではというくらいの喉ごしにびっくり。もしかしたら圧力が凄すぎて、蕎麦粉から油が絞り出されたのかもしれません。押出式っておもしろいですね。

こんな十割そばってあるのか

盛岡冷麺も作ってみよう

この機械なら、もしかして憧れ続けている低加水の盛岡冷麺もできてしまうのでは。これまで何度か手回し式の押出式製麺機で冷麺を作ってきたけれど、その加水率は50%程度、そして太麺。本当に食べたいのはそれじゃないんだ。

ということで、そば用の細いノズルのまま、加水率33%でチャレンジ。
配合は「強力粉50g+片栗粉50g+熱湯33g」
重曹やかんすいは抜きでシンプルにやってみます。

不安になる低加水の生地

これが、なんと、ちゃんと、出てきた!

これぞ私が食べたかった盛岡冷麺!
すごくしっかりしている
まさか家電製麺機でこの麺ができるとは
茹でます

手回しの押出式製麺機だと、どんなにがんばってもできなかった細さとツルツル感に感激。これは業務用の味がする。お店で食べる本物の冷麺だ。

正直なところ、「イメージ通りの味」を求めるのであれば、そばよりも冷麺が絶対的におすすめです。そばも予想外でおもしろいですけどね。低加水のうどんもどうなるのか気になるところです。

この麺が食べたかったんですよ

動画

麺作りの様子を動画にまとめました。チャンネル登録してね。

総評

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