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南房総で中深場クロムツ五目とアマダイリレー/渡辺丸

※掲載終了の「@niftyつり」から2010年12月中旬の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。今回はゆるゆるな感じで外房の海を満喫しております。クロムツにアマダイ、素敵な組み合わせだなー。

釣り初心者といく中深場クロムツ五目とアマダイのリレー釣り

一つの魚をストイックに狙う釣りもいいけれど、何が釣れるかわからないようなゆるゆるの五目釣りというのも気楽でいいよねということで、今回は船釣り初心者であるカメラマンのオカダさんと一緒に、南房総の江見太夫崎(鴨川のあたり)からフラッシャーサビキを使った中深場のクロムツ五目釣り、からのコマセを使うアマダイ釣りという初めて聞く組み合わせのリレー釣りに挑戦することにした。

お世話になった渡辺丸は、早朝まだ暗いうちに中深場を攻めて、そのあと季節に合わせてオニカサゴやアマダイなどを狙うというリレースタイル。中深場の釣りというと道具も本格的になってくるので、初心者にはちょっととっつきにくい印象だが、渡辺丸では誰でもチャレンジしやすいようにと、乗船料に電動リールや竿のレンタル、そして消耗品である仕掛けなど、すべてが込みという料金設定をしている(※当時の話)。

ここで初めて沖釣りをして、そしてハマって竿やリールを揃えてまた訪れるお客さんも多いそうだ。

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この日の出船はまだ真っ暗の朝五時。船宿ではなく港集合。

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大仏みたいなパンチパーマにしたのかと思ったら、そういう帽子だったカメラマンのオカダさん。オニカサゴ釣りではカメラマンのみでしたが、今回は一緒に釣ってもらいます。

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びっくりするくらい氷がでかいぜ。大きいクーラー持ってくればよかった。

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クーラーだけ持ってきたオカダさん。仲乗りさんがすべてセッティングしてくれました。釣り座はもちろん船長の横。

一投目からクロムツとメダイが釣れた!

最初に狙うのは中深場でのフラッシャーサビキということで、水深は200~250メートルとかなり深い。使うオモリが200号なので、それを使える竿と電動リールが必要となってくるが、無料で借りられるレンタルタックルがかなりしっかりしたものなので、自前の道具がなければそれで十分。

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レンタルタックルは先調子のイカ竿に中型電動リールの組み合わせ。

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イカ・イカ・イカ。なにかの暗号だろうか。

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私は自前のレオブリッツ400とビシアジ竿で挑戦。糸はPE4号。

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ビシアジの取材で借りて使った竿がよかったので、結局あのあと同じ「ALB The AJI Bishi 180」を買ってしまった。

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道糸の先にフラッシャーサビキを結び、一番先に200号のオモリをぶら下げる。仕掛けがかなり長いのでオマツリに注意しながらほどこう。

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暗いうちはフラッシャーサビキにイカをつけるのが船長のオススメスタイル。

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オモリが重いし、一度に何匹も掛かる可能性があるので(サバ5匹とか)、糸が食いこまないように指サックやゴム手袋をするのがオススメ。

船長の話では、釣り場に着くまでの間に仕掛けを投入できるように準備しておくのがこの釣りのコツ。船長が船を止めるのは魚群探知機に反応が出た場所なので、群れがいなくなる前にいち早く投入したほうが有利なのだ。また投入のタイミングがバラバラだとオマツリがしやすくなってしまう。これは最初の時だけでなく、ポイント移動をした際も同じこと。

港から走ること30分、まだ薄暗い中で船長から投入の合図が出た。フラッシャーサビキの仕掛けは長いけれど、事前のセッティングをきっちりしておけば、投入時にオマツリすることはほとんどない。この時間帯はクロムツやメダイなどの深海系の魚が200メートル前後の深さで狙えるゴールデンタイムだ(明るくなると深場にいっちゃうというのは日が昇ってから理解した)。

仕掛けを一気に海底まで落として、一番下に位置するオモリを1メートルほど浮かしてアタリを待つ。※魚が浮いていて、船長がタナ(オモリを置く深さ)を指示する場合もある

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仕掛けを並べるマットが用意されているので、手前から順番に針を引っ掛けておけば、オモリを落とすだけで投入完了。

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釣り初心者のオカダさんは、仲乗りさんのアドバイスで仕掛けを横に伸ばしてから投入する方法を採用。もし船が空いていれば、この方法が一番確実。

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やさしい目でオカダさんを見守る船長。

そんなにすぐには釣れないだろうと思って置き竿にして、電動リール初体験のオカダさんの様子を観察していたら、船長から「もう釣れているよ!」と声を掛けられた。あれー。

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なんだかすごい勢いで引っ張られている。

私もこういう深場の釣りはほぼ初めての経験なので、どんな魚が掛かって、どれくらい引くのかよく理解していないのだが、このグイグイと引っ張られる感じはかなりの大物。私が今まで釣った経験の中でいえば、一番近いのは……サメかな。あるいはエイ。

時には電動リールの巻き上げが止まるほどのやりとりの末に上がってきたのは、本命のクロムツと、釣れたらうれしいなと思っていたメダイの高級魚セット。夕飯のおかずとしては、この二匹でもう十分である。メダイは触ると鱗の上から脂でヌメヌメしていて明らかにうまそうだ。

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真っ暗な海中から、なにが上がってくるのかわからないドキドキ感がたまらない。

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ナイスなサイズのメダイとクロムツ。上のハリに掛った魚から外していき、仕掛けをマットに掛けながら上げていくと絡まない。うまくできないけどね。

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そして棒高跳びの助走みたいなフォームで誘っていた岡田さん。

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どのタイミングで巻いたらいいのかわからないといいつつ、見事クロムツを一荷でゲット。関係ないけど、彼は戦場カメラマンのモノマネがとても上手だ。

この上げてみるまで何が釣れているかわからない福袋みたいなフラッシャーサビキの五目釣り、やってみるとかなりおもしろい。初心者でも船長や仲乗りさんからいわれたことに気をつけながらやれば十分できる釣りだけど(ほとんどの釣りがそうだね)、どうしても投入や取り込みに時間が掛かってしまうので、そのあたりの手返しの良さが釣果に比例するところもまたおもしろい。

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追い食いを狙って待ってみたのだが、ハリスを切られた。歯の鋭いクロムツが掛かった場合は、早く上げた方がいいようだ。慣れてくるとアタリでどんな魚が掛かったかわかるらしいよ。

明るくなるにつれてサバが増えてきた

一投目はクロムツとメダイの嬉しいダブル、二投目は追い食いを狙ってのハリス切れ、そして空がだんだんと明るくなってきた三投目は、オカダさんとオマツリをした末のゴマサバ4匹。

そしてその後もサバが入れ食い。どうやら日が昇ってきたのに合わせて、クロムツやメダイなどの深海系の魚はさらに深場へと移動してしまったらしく、ここからは青魚系の出番のようだ。もうちょっとクロムツが釣りたかったんだけどな。

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この時期はこれくらいのゴマサバでも脂が乗っているそうです。

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「僕は今日、サバを釣りたかったんですよ!」と、でっかいマサバを釣ってご機嫌の岡田さん。いーなー。

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アジは釣れなかったけど、オアカムロアジがはじめて釣れた。船長曰く、鮮度が良ければ刺身でいける魚だそうで、食べたら確かにうまかった。

このようにお土産をたっぷり確保したところで、前半戦のフラッシャーサビキ釣りは終了。暗いうちにしっかり攻められれば、もっとお土産は増えたはず。これは次回の課題だな。

後半戦はコマセを使った房総流のアマダイ釣り

前半戦の中深場五目でのフラッシャーサビキ釣りですでにクーラーボックスを満たした後は、水深80メートル前後の場所に移動してのアマダイ釣りに種目交代。水深の変化に合わせてオモリが80号に変わるので、こだわる人はちょっと柔らかめの竿に交換するが、私はそのままビシアジ竿で続行。

アマダイ釣りは相模湾でのライトタックルなら何度か経験があるけれど、房総流の釣り方は初めて。一番の特徴は相模湾のアマダイ釣りではあまり使わないコマセを用いること。これはもちろんアマダイの活性を上げるという意味もあるのだが、船長曰く「コマセを使った方がタイなどの外道も掛かって楽しいから」だそうだ。アマダイ釣りというよりは、アマダイ五目という感じか。

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天秤、コマセカゴ、オモリのセットも貸してもらえる。本命はアマダイなので、コマセはパラパラと少しずつ出るように調整。

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船宿仕掛けはハリス3号のイサキ用。もちろんアマダイ用の市販仕掛けや、自作の仕掛けを持ち込んでもいい。

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コマセはアミエビ、付け餌はオキアミ。形のいいオキアミを選んで、尾羽を切ってまっすぐになるよう付けるのがポイント。

最初に釣れたのはチカメキントキ

アマダイ釣りで一番肝心なのは棚どり。アマダイは砂底スレスレを泳いでいるとか、巣穴の中に潜んでいるとかいわれているが、どっちにしろ棚が底付近なのは間違いない。

船長のオススメは、アマダイだけを狙うのなら底からオモリを50センチだけ上げて、そのまま海底をエサが這うように釣る方法。先日もこの方法で初心者の女性が3匹の大型を仕留めたらしい。コマセを使っているので、派手に誘いを掛けたり、棚をちょっと上げると外道のアタリが多くなるそうだ。それはそれで楽しそう。

あくまでアマダイだけを狙うべきか、とりあえずなんでもいいからアタリが多い方を優先するか、そこが悩みどころであるのだが、悩んでいる間に早くもグッと大きめのアタリが来た。

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あれ、もうアマダイが釣れちゃったかな。

竿を立てて魚が掛かったことを確認し、最初の数メートルはせっかくなので手巻きで楽しみ、あとは電動でゆっくりめに巻き上げる。この重さの感じだったらそこそこのサイズだけど、アマダイにしてはちょっと引きが弱いかな。

なんて思っていたら、水中から赤っぽい魚が浮いてきた。

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赤いのが見えたので、アマダイもしくはタイだと確信。

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しかしその正体は、チカメキントキ。あれー。ハリが三本とも飲まれていた。

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漁師はあまり狙わないけど、おいしい魚だそうですよ。しかし胸ビレがでかいな。バブル時代のジュリアナ東京の客みたいだ。

残念ながらアマダイではなかったけれど、とりあえず一匹釣れたのでヨシ。

さあ次こそはアマダイだと思ったけれど、相模湾のアマダイ釣りでもおなじみの外道達が、ここでもアマダイよりも先にオキアミを食べてしまう。そんなにがっつくんじゃありません。

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タマガンゾウビラメ。これでヒラメを釣ったと言い張れなくもないな。
まあ虚しいだけだけどさ。

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オカダさんもワッペンサイズを釣った。干物にすると結構うまいよね。

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続きましてはカナドかな。カマドウマではない。

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そしてお約束のクラカケトラギス。

このように我々が小魚に翻弄されている中、周囲の方々はタイやアマダイなどを見事釣りあげていたりする。あれー。

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裏本命ともいえるナイスサイズのハナダイ。釣る人は五匹くらい釣っていたよ。棚を少し浮かせていたのかな。

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そしてド本命のアマダイ。どうやら魚はいるらしい。

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おいしい外道のヒメコダイ(アカボラ)も上がっていた。千葉の海にもいるんだね。

そして大物が掛かった!

アマダイ釣りは広い範囲での流し釣り。そしてアマダイは同じエリアに複数いることが多いため、誰かが釣ったらそれはナイスポイントに差しかかった合図。エサを新しいものに変え、集中してオキアミを底ギリギリにはわせつつ、わずかに竿先を揺らしてコマセをポロポロと出す。

釣りは運の要素も多々あるが、やっぱり丁寧にやることが釣果につながるはず(じゃない場合も多々あるけど)。そう信じて竿先を見つめて、小さなアタリに合わせてみれば、グングンという強い引き。これはアマダイの三段引きというやつじゃないですか。

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アマダイだったら明らかに自己最大級レベルの大物。

80メートルを巻き上げる間、小声に出してのブツブツとアマダイコール。

「アーマダイ、アーマダイ、マダイでもいい、でもアーマダイ、アーマダイ、アーマダイ、でもアーカくない、アーマダイじゃない、ホーシザメ、ホーシザメ……」

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アマダイコールも虚しくホシザメでした。

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アジ狙いだとサメって明らかにわかるのだけど、アマダイ狙いだと紛らわしいね。なんか悔しかったので、すぐ内臓を出してキープ。

今度こそは本命だと思うのだが

船長と岡田さんに「これは絶対大型のアマダイだよ!」とアピールした末のホシザメにがっかりしつつも、またすぐ次のアタリをキャッチ。今度はチカメキントキよりは大きいけれど、ホシザメよりは小さい感じ。

今度こそはアマダイかもと思うのだが、たった今ホシザメの強力な引きを味わったばかりなので、イマイチ気持ちが盛り上がらない自分が悲しい。

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疑心暗鬼。

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しかし今度こそピンクの魚体に青いヒレ。

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でもこのずんぐりした形はイラかあ。

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いやイラじゃない。すごい太ったアマダイだ!

魚影が見えた瞬間に、その色からアマダイと思ったけれど、あまりにも太り過ぎているのでイラ(ベラの仲間)かとガッカリしたら、タモに入ったのは間違いなくアマダイである。アマダイの三段引きならぬ、アマダイの三段喜びだ。

体長は44センチ。船長の話だとこのあたりのアマダイとしては標準サイズというからびっくりだ。それでも船長が驚く太りっぷりは見事の一言。これは絶対にうまい魚だ(実際プリプリでうまかった)。

これほどのアマダイが釣れるのであれば専門に狙ってもよさそうだが、船長はアマダイばかり何匹も持ち帰るよりも、いろいろな魚を持ち帰った方がいいでしょうとリレー釣り乗合を提案している。またアマダイはオニカサゴほどではないにしろ成長の遅い魚なので、資源保護の意味もあるそうだ。

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後ろで釣っていた方もナイスなアマダイをキャッチ。

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オカダさんにもアマダイっぽいアタリがあったのだが、電動リールの巻き上げ速度を速くし過ぎて痛恨のハリス切れ。

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アマダイらしき魚をばらしてわかりやすくガッカリしていたが、またすぐにアタリがあって笑顔にチェンジ。彼は表情が豊かだ。

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釣れたのは塩焼きサイズのハナダイ。マダイではないが「赤いタイってうれしいね!」と素直に喜んでいた。次の釣りまでに、糸の結び方をおぼえてくるそうです。

この日は潮があまり流れなかったため、クロムツもアマダイもポツポツという感じだったが、おいしい外道もいろいろ釣れて、11時の沖上がりまでには二人ともクーラーボックス満タン。

岡田さんもいろいろな魚を釣ることができて喜んでいたのだが、ちょっと防寒対策が甘かった点が心残りとのこと。次までに釣り用のアウターを買うんだと張り切っていた。

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船長は東京で暮らしていた期間が長いそうで、しゃべり方が柔らかい。顧客満足度を追求するタイプの船宿。

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バラエティ豊かな釣果だな。サメとか。

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クロムツは炙りと刺身のハーフ&ハーフにしてみた。

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メダイは少しだけ刺身にして、残りは西京漬けを作成中。

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チカメキントキはめでたい感じに煮てみた。おいしかったけど、ちょっと鱗が残っていたのが反省点かな。どうやって調理すればいいんだろ。

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アマダイは半身をバターソテーに(でも醤油を掛けて食べる)。残りは骨をつけたまま干物で。サメも食べたよ。

私の釣果は前半戦がクロムツ1、メダイ1、オアカムロアジ1、サバ多数と他。後半戦がアマダイ1、チカメキントキ1、ホシザメ1と他。

釣りに行くと同じ魚をたくさん持ちかえることが多いのだが、渡辺丸ではいろいろな魚がバランスよく釣れた。これでしばらくは魚に困らない豊かな食生活が送れそうである。こういう釣りも楽しいね。

■渡辺丸

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