亀の手 2

ゆっくり、ゆっくり。手を差し出した瞬間、霧がふわっと晴れたように何かが見えた気がした。

もう1度、さっきよりもはやいスピードで手を差し出す。しかし、視界は黒のまま、何も変わらなかった。それから、何度も手を動かしてみるが何も変わらない、黒のまま。

今度は、足を出してみる。おそる、おそる。今、確実に触れている足を決してそこから離さないように、ゆっくりゆっくり。

すると、思っていたよりもすんなりと前へ前へと進むことができた。

「なんだ、崖なんてなかったんだ」


そう思うと、気持ちがとても楽になって、「もっともっと」と歩くスピードもはやくなる。疲れたら、その場に立ち止まって座り込むことも、寝転ぶこともできた。

ここがどこかは以前としてわからない。それでも、ここが悪いところではないという居心地の良さは感じていた。

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