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“わからない”ことが「受託型UXリサーチャー」の介在価値なのかもしれない。


最近、インハウスでUXリサーチをしている友人たちと話す機会があった。

インハウスではなく、受託型UXリサーチャーとしてものづくりに初めて携わった自分にとって、「リサーチ」の発生過程や、その土台となる課題意識、さらにそのまた下地にある組織土壌について重い描きながら、自分の仕事が組織内でどう消化され身になっていくのか、イメージが補完されていく感覚。

同時に、受託型UXリサーチャーの価値って何だ?と頭の中でぐるぐるし始めたので、記しておく。

社内リソース事情がわからない受託型UXリサーチャー

友人Aは、わたしのような受託型リサーチャーへ、既存サービスの課題把握を目的にユーザー調査依頼をすることがあるらしい。その際、受託型リサーチャーがリサーチ結果とともに「改善方針」も提示してくれるが、実はそれ、なくて良いと感じてるのこと。

友人A曰く、改善方針を考える際には、どうしても社内リソース(使い回しできそうなコンポーネントがあるか等)を考えないといけない。今ある社内リソースを活かせるなら一から作る必要がないので楽に早く動けるし、開発側も動きやすいし、長い目で見れば結果的に新しくチームに入った人も理解・手入れしやすい土壌ができる。

社外リサーチャーは社内リソース事情まで理解していないのだから、実際に実行可能な改善方針が出せなくて、当然(実際、出されても、うーん、、、言いたいことはわかるけど、、、という温度感に留まる方針が多いらしい)。作業コストをかけないためにも、改善方針は出してくれなくて良い、とのこと。

わたしもユーザー調査の結果を提出する際、頼まれていなくても改善方針を提示することがある。社外×ユーザー理解の見識を一応は持った人間として、新しい視点を提供し貢献ができればと思ってのことだが、Aの話を聞き「あ、そうなんw」と面食らった。

もちろん企業やプロジェクトによっては、外部からの改善方針が欲しい場合もあるんじゃないかとは思うが、これは考えさせられる話だった。

「わからない」が「固定」を外せるかもしれない

そしたら、社内で手が回らない状況でしかリサーチを外注する意味ってないのでは…と考え始めるわたし。幸い、友人Aはリサーチを外注したことで得られる良い効果についても語ってくれた。

友人Aは、社外リサーチャーに、「何のためにこの調査あするんですか?背景は?」
「調査結果を使って、何がしたいんですか?」と聞かれることをきっかけに、改めてプロダクトマネージャーや開発関係者と「今回の調査目的はこういうことで認識あってますよね?」と、改めて確認する。結果的に、外部リサーチャーの介入が、社内の目線合わせの良いきっかけになっているとのこと。

なるほど。社内にいれば当たり前のこととして認識にすら上らない点でも、外部リサーチャーからすると疑問に思うことがある。その疑問を投げかけることで、クライアントチームの目線合わせになるのか。

ちょっと話が飛躍するかもしれないが、ここで、問いのデザインで読んだ「認識の固定化」「関係性の固定化」という概念を思い出す。組織内で認識や関係性が固定化するのはいわば自然現象。潜在的に固定化された何かを顕在化させた上で(固定から自由になった上で)、改めて最適な調査設計を考える。そのために、受託型リサーチャーの「わからない」光線は威力を発揮するのかもしれない。

そう言われてみれば、自身の尊敬する凄腕の受託リサーチャーの方々は、「わからない」の引き出しが多く(良い調査設計をするための確認項目の幅)、わからないことに対する答えを引き出す工夫、つまり「組織」に対する関わり方やはたらきかけ方が絶妙だと感じる。

というわけで、受託型UXリサーチャーは、社内事情がわからないから価値がないのではなく、わからないからこその価値を発揮できるのかもしれない、という話でした。


筆休め🍵

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