見出し画像

オーストリア/フンデルトヴァッサー建築 聖バルバラ教会

親日家としても有名な、オーストリア人芸術家で建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(Friedensreich Hundertwasser)。ウィーンでは、シュピッテラウのごみ焼却場やフンデルトヴァッサーハウス、クンストハウス・ウィーンなど、直線を使わない特徴的な建築が随所に見られます。日本では、大阪のごみ焼却場が彼のデザインによるものとして有名です。

画像1

彼の建築の中でも特に交通の便が悪く、不便なところにあるのがこの聖バルバラ教会。シュタイヤーマルク州のベルンバッハ(Baernbach)という小さな田舎町にわざわざ行かなければ、見ることができません。

しかし、ここはフンデルトヴァッサー建築好きにとっては是非訪れたい場所です。1950年に建てられた教会が、1989年の改築の際に、フンデルトヴァッサーの設計に基づいて大きくデザインを変更されました。元々は普通の田舎の教会だったところに、こんなに奇抜な建物が現れたのですから、地元の人たちは驚いたでしょうね。

カラフルなセラミックのタイルと、黄金に輝く玉ねぎ形の塔が特徴的なこの教会。フンデルトヴァッサーの「世界の宗教を融合した教会」と言うコンセプトのもと、教会の周りには世界の宗教のシンボルをデザインした12の門が建っています。

画像2

苗字のフンデルト=百と、ヴァッサー=水を組み合わせた、「百水」という屋号すら持っていたほど親日家だったフンデルトヴァッサーは、この世界の宗教の門の中でも、日本の神道にかなり力を入れていたようで、他の門より際立って大きく、目立つ扱いを受けています。

画像3

神道のシンボルを象った門。他の門に比べても、かなり目立ちます。

他にも、ユダヤ教やイスラム教、ヒンズー教の門や、アフリカなどの土着の信仰を扱った門もありました。それぞれの門には分かりやすいシンボルが描かれ、教会の周りを一周巡ると、自然に世界の宗教に思いを馳せるようにできています。

画像4

手前がイスラム教の門で、その向こうには卍が書かれた仏教の門。

教会の入り口には、フンデルトヴァッサーらしいタイルのデザインで、キリスト教のシンボルが描かれています。

画像5

内部は意外に普通の教会とあまり変わらず、おそらく元からあった教会の内装を残してあるようです。ステンドグラスでフンデルトヴァッサーのデザインのものは一つだけあり、他のステンドグラスと一線を画しています。ちょうど洗礼台に光が差し込むところにそのステンドグラスがあり、その空間だけ光によって切り取られたようでした。

画像6

このステンドグラスの外側はこんな感じのデザインです。

画像7

ウィーンから1時間半、一番近い主要都市グラーツからも30分以上かかる、この小さな田舎町ベルンバッハに、こんなに貴重な建造物があるなんて、訪れたい人泣かせのこの教会ですが、フンデルトヴァッサー建築に興味がある方は、是非一日を割いて訪ねてみてください。

(2013年6月執筆)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?