納豆に砂糖を混ぜることを半年間オススメしてきた田中くんの話
⚪️なぜか毎朝絡まれる
わたしは父も転勤族で幼い頃からあちこち引越が多かった方だと思います。
中学あがってすぐの夏、納豆が有名な街310市から、霧と坂が多い北国946市へ転校したのですが、そこで登校時にある会話が待ち受けていました。
「おい!おまえ今日は納豆に砂糖入れて食べてきたんだろうな?」
いかにもやんちゃな中学生の風貌をした
田中くん(仮名)に、これから半年間も絡まれる事は想像できませんでした。
ただ310市から引っ越してきただけなのに
「おい、納豆!」と呼ばれる始末。
何をするにも「これだから納豆は。」と、ディスられ、わたしの心はどんどん疲弊していったのです。
そんなに嫌なら登校時間をずらせば?と聞こえてきそうですが、
転校先で馴染めず、学校は最低限の滞在時間で済ませることを生き甲斐にしていたゆえ、登校時間は遅刻ギリギリを攻めていました。
両者を天秤にかけた結果、田中くんに納豆いじりされる方へ軍配があがったのです。
しかし、中学生ながらも310市に縁のある者として、納豆へのリスペクトが少なからずありましたし、田中くんが推す「納豆に砂糖」というのは正直、邪道と思っていました。
納豆の聖地である310市から来たわたしの方が先輩として色々知ってるだろうし?と
転校して早々に納豆マウントを取ってしまったのです・・・
今考えれば、スルーが最適解でした。
わたしは、ただ納豆を混ぜただけのシンプルな食べ方をしていました。
でもそれもなんだかつまらないなと思い、
「納豆はマヨネーズが至高!」と妙な主張を始めたのです。
というのも当時、人気雑誌の読モがこの食べ方を推していたことから、トレンドの合わせは「マヨネーズ」に違いないと確信したからです。
本当は普通に食べるのが一番好きだったのですが
ここまでくると、変な意地が出てきてわたしは毎朝反論を始めました。
⚪️当時のモーニングルーティーンを再現する
田中 「おい!おまえ今日は納豆に砂糖入れて食べてきたんだろうな?(圧)」
わたし「はあ??だから納豆にはマヨネーズだからね。何回も言わせないでね!」
田中「明日は絶対砂糖入れて食べてこいよ!(圧)」
⚪️310市の友達へ会いにいく
こんな調子で半年たっても学校に馴染めなかった私は、親に頼み込んで310市へ遊びにいくことにしました。
その時期は真冬で、946市内にキタキツネが徘徊し(かわいいけど触ってはいけない)鼻毛まで凍るマイナス20度の世界から、関東平野の乾燥した暖かい310市の冬に懐かしさを覚えました。
やっぱりわたしは310市に戻りたい。
納豆で絡まれることもないし、馴染みの友達だっている。
しかし時間は残酷もので、わたしがいなくなってからの半年間、310市の環境も変化していたのです。
当時はスマホがないので、友達とのやりとりはもっぱら手紙でした。
その手紙から友達の変化は感じていましたが、実際会うと印象が全然違う。
半年いないとこんなに変わっちゃうんだ、
わたしの居場所はもうここにもない。
⚪️腹を決めて納豆に砂糖を入れてみる
自分の居場所は今住んでいる946市で作るしかない。もう戻れる場所はない
と、覚悟を決めた中学生のわたしは、田中くんオススメの「砂糖」を入れて納豆を食べることにしました。
もうどうにでもなれ!と、納豆に砂糖を混ぜていくと、
すごく納豆の伸びがいい!
嘘でしょ?砂糖を入れたのに変な甘さがない!
「全然美味しいじゃん!」と。
これにて半年続いた田中くんと朝の会話が終わりました。
田中くんに砂糖を入れて食べたことを話したら、
彼は勝ち誇るどころか、どこか安堵したようにも見え、わたしは拍子抜けしました。
「クラスに馴染めないおまえを見かねて毎朝、声をかけていたんだ。おれも転校生だから気持ちわかるよ」
と。
彼なりの気遣いだったのですね。
それから話すことは少なくなり、しばらくして彼は別な街へ転校していきました。
40過ぎた今、わたしは納豆には大根おろし派です。
この歳になると、さっぱりした大根おろしが朝のお供に最高ですよね
北海道産の納豆です。よかったらご賞味ください!
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