9月1(日)〜4(水)の日記(チートデイ|水2リットル|地獄ラーメン(激辛)|新宿の街(それぞれの顛末))
9月1日(日) チートデイ
毎週日曜日は何をどれだけ食べてもいいということになっており、QBBチーズ(たぶん3つくらい)、近所のスーパーマーケットのフードコートにあるラーメン屋の辛麺(辛め)、大根とレタスのサラダ(with 青しそドレッシング)、こんにゃく麺(辛め)、マヨコーンパン、チャーハンおにぎり、かにかま、タコが入っている練り物を食べ、コーヒー、麦茶、発泡酒(糖質70%OFF)、赤ワインを飲んだ。何をどれだけ食べてもいいと言いながら、こうやって列挙してみると、そんなに無謀な感じで食べていないように思われ、もっとワイルドになるべきかもしれない。よい一日だった。
9月2日(月) 水2リットル
水を一日に2リットル飲むと健康によいらしいという言説を耳にし、今日からそれをやっていくことにした。なぜ一日に2リットル飲むと健康によいのかそのメカニズムは不明だが、人体の約70%は水でできていると言われていることに関係していると思われ、私の思い違いでなければ人体とは私のことだから、たぶん私は健康になることができるだろう。実は水2リットルチャレンジについては今年の1月頃に一度挑戦しており、3日目に頓挫した。当時は冬であり、冬というのは寒く、人体が水分の補給をあまり欲していないような感じで、水を飲みまくるのがきつくなったからである。しかし、今は夏、やってみると水をぐびぐび飲むことができ、私という人体がそもそも一日に2リットル程度の水を欲しているようにも思われ、継続は容易だろう。
9月3日(火) 地獄ラーメン(激辛)
我が街には「地獄ラーメン」と名の付くラーメンを提供する店が2店舗あると検索され、そのうちの1店舗に行ってきた。連れの者は醤油ラーメンをオーダーし、私は地獄ラーメン(激辛)をオーダーすると事前に決めていたためそれを注文した。不慣れな感じのアルバイトと思われる者は注文をたどたどしく繰り返し、「少々お待ちください」と言って去った。前から思っていたことだが、「連れ」というのがどういう意味で、「連れの者」というのがどういう者なのかよくわからずに私は使用している。私は当該連れの者と対等な立場で同時に入店したのであり、上下関係や主従関係はない。「行こう」と言ったのは私だが、ここまで自家用自動車の運転したのは当該連れの者であり、どちらがどちらを「連れ」てきたということも厳密には言えないだろう。じゃあ、「連れの者」以外に何か適切な言い方があればいいのだが、それがなかなか思い付かない。友人という感じではない。知人というには少し遠い気がする。恋人では絶対にないだろう。近頃、特にフィクションに対する評おいて「名前の付けられない関係」というフレーズよく聞くように思う。もしこのリアル世界においての何らかの関係を「名前の付けられない関係」と定義づけてしまったら、それはもう「名前の付けられない関係」という箱の中に押し込められてしまうわけで、「名前の付けられない関係」というのは名前が付けられないからこその自由が含意されていたはずで、それが──、などと考えているうちに先に醤油ラーメンが、少し経ってから地獄ラーメン(激辛)が着丼した。地獄ラーメンには5段階の辛さがあり、激辛は5の辛さ、つまりこの店で最も辛いメニューであるということになる。まずはスープを飲もうとレンゲで掬い、口元に近づけると、唐辛子の香りというんですか辛みというんですか、あの独特にむわっとする感じがおそらく鼻孔と思われる場所をむわっとさせ、とんでもない辛さであることが予感された。実際に口をつけて飲んでみると、予感通りのとんでもない辛さであった。私はこれまで、近所のスーパーマーケットのフードーコートにあるラーメン屋の辛麺(辛め)、スーパーマーケットのチルドコーナー及びカップラーメンコーナーにある辛辛魚(麺処井の庄監修)、辛麺屋桝元のみそ辛麺(15辛)、蒙古タンメン中本の北極(9辛)、蒙古タンメン中本の冷やし味噌(10辛)、などの堂々たる猛者共を赤子の手をひねるように完食してきたが、その栄光ある歴史をもってしても前例にない辛さであった。あえて言えば、ペヤングの獄辛という世間に衝撃を与えた辛いというかただ痛いだけの食べ物があるが、あれに近い辛さであった。「かなり辛い」「やばい」「こないだ食べたヴァルハラ麺と比べ物にならないくらい辛い」などと向かいで醤油ラーメンを食べている者に発話しながら地獄ラーメン(激辛)を食べていたが、途中で自分が無口になるのがわかった。私はそもそもそんなに喋る方ではないが、先程までは辛さを紛らわすためになんやかんや発話していたものの、その辛さを紛らわすための発話でさえ停止した。眉間に深い皺が寄っているのが自分でわかったが、どうすることもできなかった。「少し食べる?」と醤油ラーメンをもらい、きわめて美味な上に全く辛くなく、天国ラーメンと改名すべきだと思った。いや、全く辛くなく、とは言ったものの、辛さと熱さは似ており、全く辛くないはずの醤油ラーメンがその熱によって舌上で辛さを誘発した。地獄ラーメンは天国ラーメンをも地獄に引きずり込もうとしていた。やめてくれ。尋常でない汗が吹き出し、ハンドタオルで拭った。ハンドタオルを持ってきていてよかった。バスタオルでもよかったくらいだ。なんとか完食した。私はラーメンの具もきちんと残さずに食べたいと思っており、スープに浮いている玉ねぎ、きくらげなどはなんとか全て食べたが、この時点で閾値を超え、スープの底に沈んだコーンを食べる気にはなれず、残してしまった。同様にして、完食後にスープを味わうことも不可能であった。正直、辛すぎて味がよくわからなかった。我が街には「地獄ラーメン」と名の付くラーメンを提供する店が2店舗あると検索されており、もう1店舗にも近々行こうかと思っていたが、本日このラスボス級の辛さを全身全霊をかけて撃破したことにより、葬送のフリーレン的な気分になってしまい、しばらくはいいかなといった感じである。そう言えば水を2リットル飲むのを忘れたが、この地獄ラーメン(激辛)を食べている間に水を2リットルくらい飲んだかもしれない。
9月4日(水) 新宿の街(それぞれの顛末)
私の友人に友人Aという者がおり、共に都内に行った。だいたいこうして月に1〜2度、仕事の打ち合わせと称して飲み食いにくる。場所はいつもなぜか新宿である。友人Aというのはかつて新宿歌舞伎町でホストをしていたことがあるらしく、その名残りかもしれない。懇意にしているオイスターバーで生牡蠣6種盛り合わせ、牡蠣のピザ、サーモンのサラダ、牡蠣フライ、牡蠣の白ワイン蒸し、牡蠣のパスタを勢いよく食べ、ボウモアというウイスキーを飲み、退店した。少し散歩してからバーで飲もうと言うので、私は散歩ついでにホテルのチェックインをしたく、その旨を伝え、少し遠回りになるがそのように新宿の街を散歩することにした。だいたいは友人Aがずっと喋っているが、我々の最近の議題は、モテるって一体なんなんだろうね、である。金やビジネスの話をするよりは恋愛の話でもしていたほうが気が楽だし、正解もないのでだらだら話し続けることができ、よかった。やがて私がよく宿泊する相鉄フレッサイン東新宿が見えて来、私はチェックインをし、友人Aはタバコを買うこととなった。我々は普段タバコを吸わないが、最近では、バーで酒を飲む時だけは喫煙することとなっている。喫煙をするために毎月新宿に来ていると言っても過言ではない。私は当該ホテルのフロントでチェックインをしようとしたが、宿泊名簿に名前が見当たらないとのことで、おかしいなぁ、などと思いながら一時退却した。ホテルから出るとほぼ同時、友人AからLINEが入り、「ごめん!偶然にも空いてて予約できたから行ってくるわ!3時間後にバーに集合で!」と記述されていた。このわずかな時間の中でどこかへ連絡し、何らかの予約ができてこれから3時間ほど一人でどこかへ行って何かをするらしい。なんて勝手な奴なんだ、と私は思い、「行けたら行く」とだけ返信した。もう帰ろうかと思った。時刻は19時。ほろ酔いのまま急に3時間暇になっても困る。体が熱くなり、急速に汗がだらだら流れた。コンビニでハンドタオルを買った。バスタオルでもよかったが、荷物としてかさばるためハンドタオルにした。ホテルの予約ができていなかったのは、アプリにうまくログインできていないために支払いが拒否されていたからと思われた。予約がキャンセルされた旨のメッセージが来ていたのを見落としていた。なぜ支払いが拒否されたかというと、ログイン時にSMSに認証コードが送られてこないため、メールアドレスでログインしたのがいけなかったようだ(なぜメールアドレスでログインするといけないのかは不明)。仕方ないので、新たなアカウントを電話番号認証の必要ない方法で作り、別のホテルを予約した。当該別のホテルにチェックインし、なんだかどっと疲れたなと思いながらベッドに横たわると、汗臭いような匂いがした。確かに私はハンドタオルを買わなければならないほど汗をかいてはいたが、自分の汗の匂いはなんとなく自分でわかり、そのような匂いではなかった。ベッドシーツの匂いを嗅いでみると、尋常ではない生乾きのような汗臭いような匂いがし、嘔吐するかと思った。よく見てみれば、ベッドの上に短い何らかの毛やら女性のものと思われる繊細な長い毛やらが散らばっており、この部屋で寝るのはどう考えても不可能と思われた。チェックインの際に「何かありましたらフロント9番まで」と言われていたので、私は部屋に設置されていた電話の形状をしている機器の受話器を取って「フロント9番」をし、「部屋が不衛生な気がするので、部屋を変えてもらうことは可能ですか」と言った。別の部屋に変えてもらえなかったら、速やかに鈍行列車で2時間かけて帰宅しようと思っていた。やがて、部屋のドアがノックされ、開けるとパリッとした格好の従業員がいて「どうなさいましたか」と言った。私は、この部屋の異常について当該箇所に指差しを行いながら説明した。結果、ご迷惑をおかけしたので、ということで、ワンランク上の部屋に誘導された。ワンランク上の部屋は、まずフロアからしてワンランク上であり、室内も一見してワンランク上であり、ワンランク上の広さであり、ベッドが2台あり(なぜならワンランク上だからである)、ソファーがあり、デスクのチェアも座り心地がよく、風呂とトイレが別であった。ベッドを確認する限り、先程のような異常はなかった。ワンランク上のラグジュアリーな部屋に変えてもらえたことにすっかり気分をよくした私は、帰宅するプランのことなど忘れ、そうだ♪先にバーに行って本でも読みながら友人Aを待とっ♫と思い、集合時間の1時間前にバーに到着し、ウイスキーを飲みながら、持ってきていた『百年の孤独』の文庫本を読み始めた。この本は読み終わるのに100年かかると言われている。だいたい40年分を読み終わったところだから、読了するまであと60年かかるだろう。時刻は22時前。ブルックラディ・クラシックラディ、オーヘントッシャン12年をいずれもソーダ割りでちょうど飲み終わったところで友人Aが慌ただしく息を切らせて到着した。隣のカウンター席に着座した友人Aに、「あのさ、勝手すぎ」と私は言った。後に聞くところによると、新宿の街を走ってここまで来たらしい。「まじでごめん」と友人Aは言い、それぞれの顛末を、タバコを吸い、酒を飲みながら話した。