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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【6〜7月】

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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今月も、世界各国で空飛ぶクルマの導入に向けた取り組みが見られました。機体の販売契約締結や工場の建設など、量産に向けた動きも見られ、空飛ぶクルマ市場は開発段階から販売段階へと移行しているようにも見受けられます。

また、今月から開催のパリオリンピックで空飛ぶクルマが飛行することも決定しました。この取り組みを皮切りに、空飛ぶクルマの社会実装が一気に世界で広がるかもしれません!

国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1.SkyDriveとJR九州、空飛ぶクルマの運航を目指して連携協定を締結(7/4)

株式会社SkyDriveと九州旅客鉄道株式会社が、九州エリアでの「空飛ぶクルマ」事業の実現に向けて連携協定を結びました。

SkyDriveは2025年の大阪・関西万博を皮切りとした事業の拡大を目指しており、JR九州は「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」ことをビジョンとして掲げています。

今回の連携によって新たな技術を活用したモビリティが導入されれば、九州エリアの開発、MaaS等へのビジネス領域拡大のみならず、地域課題の解決に貢献することが予想されます。

両社は今後、事業スキームや導入エリアなどについてさらに具体的かつ詳細な事業可能性の検討を行い、JR九州の持つ鉄道駅や商業施設等などを活用した「空飛ぶクルマ」運航ルート開設を目指すとのこと。

九州エリアにおける将来的なまちづくりや沿線観光地への誘客に向けて、新たな交通手段の導入に期待が集まっています。

2.岡山県で新たな空飛ぶクルマを公開。瀬戸内エリアを中心に導入へ(7/4)

岡山県岡山市南区の飛行場で、新しい「空飛ぶクルマ」が公開されました。

導入されたのは「V2000CG」と呼ばれる、中国の峰飛航空科技(オートフライト)社製の貨物機。最大350kgの荷物を積むことができる全長11.5mの機体は、プログラムされたルートを無人で飛行する能力を持っています。

この機体を導入したのは、瀬戸内エリアで空飛ぶクルマの実用化を目指す団体「MASC」。2028年度までの事業化を目指しており、日常生活や離島への物資輸送など、緊急時の役立つ道具として空飛ぶクルマを発展させたいと導入に取り組んできました。

MASCの井上峰一理事長は「日常のことや緊急なことなどそういう中でのお役に立てられれば。瀬戸内の航空宇宙産業をさらに推し進めていきたい」とコメント。実用性を重視した、国内での導入の取り組みに注目です。

3.岐阜・飛驒のスタートアップが空飛ぶクルマを開発。4分間の試験飛行に成功(7/8)

7月8日、岐阜県飛驒市のスタートアップ「白銀技研」が、第1号機「Beedol(ビードル)」のテスト飛行を成功させました。

テスト飛行は福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)にて行われ、70kgのダミー人形を乗せた上で、通算4分15秒のフライトに成功しました。強風の影響で目標の15分連続飛行には届きませんでしたが、今後もテストを重ねる予定です。

ビードルは1人乗りの電動垂直離着陸機で、全幅約3.6m、全長約3.5mと、他社製品より小型。前後2枚の翼と8つのプロペラを備えており、水平飛行時の電力消費効率が高いのが特徴です。

また水に浮く設計であることから、将来は通勤やレジャー、水害救助などでの活用も見込まれています。

白銀技研は、過疎地域の特性を活かした新たなモビリティの創出に意欲を見せています。今後、人のいない屋外での試験飛行の許可を国土交通省に申請するほか、2025年大阪・関西万博への出展も視野に商用化を目指していくとのこと。

国内の空飛ぶクルマ開発に新たに名乗りをあげたスタートアップの今後が楽しみです。

4.東京都、空飛ぶクルマの離着陸場整備へ。年度内に4カ所の候補地を選定(7/19)

空飛ぶクルマの実証実験に取り組む東京都は、空飛ぶクルマの商用運航を見据えて離着陸場の整備計画を進めています。ビジネスとしての実現可能性や機体の性能などを踏まえ、年度内に市街地を中心とした4カ所の候補地を選定するとのことです。

候補地の条件には、機体2、3機が収まる格納施設が建設できる広さや、羽田空港の管制圏内であることなども含まれます。市街地で適地が見つからない場合は、臨海部も検討される予定です。

また、都はこの計画を進める委託先を決める「希望制指名競争入札(総合評価方式)」を公告しました。調査では事業者へのヒアリングや離着陸場の概略設計などを行った上で、離着陸場の候補地から2拠点を結ぶ三つの飛行ルートをシミュレーション。実現可能な飛行ルートを一つに絞り込むとのことです。

都は調査結果を踏まえ、離着陸場の整備・運営を都と民間のどちらが担当するかも検証します。履行期間は2025年3月14日まで。運行に向けた準備が急ピッチで進められています。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

5.東急、タイ王国における「空飛ぶクルマ」事業検討に向けた基本合意書を締結(6/28)

東急株式会社の合弁会社「サハ東急コーポレーション」は、次世代エアモビリティ開発企業のSkyDriveとタイの大手企業サハ・パタナ・インターホールディングとともに、タイでの空飛ぶクルマ事業の実現可能性調査を開始することを発表しました。

3社は2024年6月28日に、基本合意書を締結しました。調査の対象となるのは、バンコクから南東約100kmに位置し、多くの日本企業が集積するシラチャ地域。タイ政府が産業誘致を推進する東部経済回廊(EEC)内にあり、今後さらなる発展が期待されているエリアです。

サハ東急はこれまで、シラチャで日本人向け賃貸住宅事業を展開してきました。今回の取り組みでは、その経験と現地ネットワークを活かして3社連携の中心的な役割を果たすことが期待されています。

今後、3社はSkyDriveが開発する空飛ぶクルマ『SKYDRIVE(SD-05)』を活用したサービスの可能性を探ります。空飛ぶクルマの導入によってタイの慢性的な交通渋滞や環境汚染といった課題の解決を目指すとともに、新産業の誘致による地域発展にも貢献する方針です。

プレスリリースでは「今般のSkyDriveとの連携をきっかけに、他業種との連携を加速し、タイにおけるさらなる地域経済の振興と向上に貢献していきます」とコメント。日本の企業は、海外でも空飛ぶクルマ開発を進めています。

6.ERC System、医療輸送用の最先端eVTOLを公開。救急車の3倍の速さかつ、ヘリコプターの3分の1のコスト(7/5)

ドイツのスタートアップ「ERC System」は5日、医療輸送に特化した最新のeVTOL(電動垂直離着陸機)を公開しました。開発期間は空飛ぶクルマとしてはかなり長い4年間。同社のCEO・David Löbl博士は「医療関係者と緊密に連携し、彼らのニーズに合わせて設計しました」と説明しています。

機体は450kgの積載量と5.2m³の広々としたキャビンなどを持ち、迅速かつ効率的な医療輸送を可能にするもの。救急車の3倍の速さかつ、ヘリコプターの3分の1のコストで患者を輸送できるとのことです。

ERCのeVTOLは、ヨーロッパと米国における緊急医療搬送のギャップを埋めることを目指しています。ヨーロッパと米国では、毎年約8,200万人の重病患者や負傷者が緊急かつ迅速な医療搬送を必要としています。しかしこれらのうち、最速の手段であるヘリコプターで搬送できるのは約150万人にすぎません。

特に近年はドイツで病院の集約化が進んでおり、eVTOLの活用がより期待されています。

公開された実証機は、2024年末に初のホバリング飛行を予定しています。ERCは2032年までに年間250機の生産を目指すとのこと。医療輸送の未来は空飛ぶクルマによって変わるのか、注目です。

7.シャオペン子会社、空飛ぶクルマの大規模工場を中国広州に建設(7/10)

中国の空飛ぶクルマ開発企業・小鵬航空(XPENG AEROHT,シャオペン)は、広州開発区と投資協力協定を締結し、空飛ぶクルマの研究開発、製造、販売の拠点を設立することを発表しました。

この協定は、2024年7月4日に広東省広州で開催された「低高度経済高品質発展会議」で締結されたもの。広州は小鵬航空を土地、資金の面で小鵬航空を全面的にサポートし、小鵬航空は広州開発区に空飛ぶクルマの研究開発、インテリジェント製造、販売センターを設立することを約束します。

今後小鵬航空は、世界初の大規模な空飛ぶクルマ工場を建設し、モジュール式の機体「陸上空母」の生産を開始するとのこと。11月に行われる広州モーターショーでは、先行販売を開始する予定です。

空飛ぶクルマやドローンを活用した「低高度経済」を新たな成長エンジンとして投資を続ける中国。この取り組みにより、中国の空飛ぶクルマ産業がさらに前進することが期待されています。

8.eVTOL「VoloCity」オリンピック期間中にパリ上空を飛行(7/12)

2024年のパリオリンピック期間中、空飛ぶタクシーがパリの空を飛ぶことになりました。

飛行が決まったのは、ドイツのVolocopter社が開発した電動垂直離着陸機(eVTOL)「VoloCity」。4日、フランス環境移行および地域結束担当大臣付運輸担当大臣が、パリ・オーステルリッツにバーティポートを設立するとともに、VoloCityに開放することを認可しました。

運用は2024年12月31日までの期間限定で、毎日午前8時から午後5時まで行われるとのこと。安全性を考慮して、飛行回数は実験期間中に最大900便、1時間あたり2便に制限されています。

世界中から観光客が集まるこの時期に運行開始となった空飛ぶクルマ。パリオリンピックという世界的なイベントでの運用は、新しい交通手段として注目されているeVTOLの実用化に向けた大きな一歩となりそうです。

9.ASKA、ハイブリッドeVTOL機「 ASKA A5 prototype 」の特別耐空証明書を更新(7/13)

米国の航空宇宙企業「ASKA」は13日、同社が開発中の空飛ぶクルマ「ASKA A5 prototype」が、連邦航空局(FAA)から研究開発飛行試験用の特別耐空証明書の更新を受けたことを発表しました。

ASKA A5は電動とハイブリッド技術を組み合わせた垂直離着陸機(VTOL)で、道路走行も可能な革新的な設計が特徴です。昨年6月に研究開発用の特別耐空証明などを取得して以来、無人航空機としてホバリングやVTOL(垂直離着陸)飛行の試験を重ねてきました。

今回の承認により、ASKAは飛行試験を継続するだけでなく、前進飛行への移行や滑走路での離着陸など、次の段階の試験に進むことができます。

「ドローンと何が違うのか」と度々議論が起こる空飛ぶクルマですが、ASKAの公道も走れるeVTOLは多くの人が想像する空飛ぶクルマにより近い機体です。ASKAの技術開発の進展は、将来の都市型航空モビリティ(UAM)の実現に向けた重要な一歩となるのではないでしょうか。

10.Saudia Group、Liliumから最大100機のeVTOLを導入(7/19)

サウジアラビア航空グループ(Saudia Group)は19日、ドイツのLilium社製電動垂直離着陸機(eVTOL)を最大100機導入することを発表しました。この契約は、中東・北アフリカ地域で過去最大規模の確定発注となります。

Lilium社の電動ジェット機は、最高時速250km、航続距離175kmで、6人乗りの広々としたキャビンを備えたもの。二酸化炭素排出量を抑えた上で都市間の移動時間を最大90%短縮し、交通渋滞の解消にも貢献すると期待されています。

中東地域では現在、メッカ巡礼者の輸送や観光、スポーツ、エンターテイメントへの空飛ぶクルマの活用が注目されています。サウジアラビア航空は2026年から運用を開始する予定で「全電気式eVTOLジェット機を導入した最初の企業としてMENA地域を開拓することを誇りに思います」とコメントしました。

eVTOLの導入に力を注ぐ地域は世界中にありますが、サウジアラビアはここ数ヶ月で次々と社会実装に向けたニュースが飛び込んできています。中国、米国に並ぶ推進国家となるのか、今後の動向にも注目です。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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