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久保 康友 選手へ 今季最後のインタビュー ブレイバーズ通信 2022年12月号


久保選手へ7ヶ月ぶりのインタビュー!
シーズンの中で感じた「ブレイバーズ」の姿について聞きました!
過去のインタビューと読み比べてみても面白いかも?!
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久保「ラスト登板も真っ向勝負」



写真:ブルペンで投球練習を行う久保


 9月29日、アメニスキッピースタジアムでの全体練習。次の日のラスト登板に向けて、久保は汗を流していた。ランニングで体を温め、小笠原智一選手とキャッチボール。ブルペンではリズム良く40球近くを投じた。


 ラスト登板に向けての意気込みを問うと、「真っ向勝負で挑みたい。相手チームの選手にとってもプラスになるから」と答えた。ストレートを中心とした「逃げない」配球で、投げるコースもアバウトに。NPBを離れた今、哲学者である必要はない。「このリーグの主役はプロを目指す若手たち。おっさんの僕は彼らの経験値になれたらいい」


 「マウンドに立つと、『久保だ』と相手の目の色が変わる。僕も全力勝負でそれに応える。打った選手が大喜びしているのを見ると、こっちまで気持ち良い」 心から野球を楽しむ42歳の姿がそこにはあった。


 翌30日の試合では、3回を投げ4安打を浴び2失点。本塁打も打たれたが、堂々たる勝負を有言実行した証だ。最速144キロをマークし、衰えを感じさせない投球は健在だった。

 

練習時間を削って若手へ助言


写真:身振り手振りを交え、坂下(手前左)にアドバイスを送る久保



 「センスある人は1やれば良い。でも、センスのない人は10、20やらないと伸びない。僕は後者。だから必死で練習していた」


 9月29日、各選手がメニューをこなす中、久保は坂下空選手の質問に答えていた。坂下は28歳。ベテランの域にさしかかっても、プロへの夢は捨てていない。身ぶり手ぶりを交えた久保のアドバイスに、真剣なまなざしで聞き入る。


 「あれだけの実績があるのに、全くおごった所がないというか…本当に人格者ですね」(坂下)。「明日は久保さんにとって大事なマウンドのはず。でも調整する時間を削ってまで、僕に助言してくれた」と感謝しきりだった。


久保「西瀧、その考えは古いよ」


写真:ランニング練習も欠かさない


 「(久保さんは)ブレイバーズのお父さん」そう語るのは、選手で唯一の三田市出身である西瀧雄大投手だ。国内球団を渡り歩いた今は、アメリカでのプレーを目標にしている。海外での経験も豊富なベテランから学ぶことは多いという。


 「久保さんに『考えが古い』って言われたんですよ(笑)」(西瀧)。後輩たちが後片付けを率先してしないことに不満を述べた際に、返された言葉だという。


 この話を久保にも伝えると大爆笑。「僕も西瀧も昭和の人間。年下の人間が働くのが当たり前やと思ってしまう。でも今の若い子たちは、そうは思っていない」、「価値観をアップデートすることが大事。年上の方が余裕あるんだから、僕たちが若い子に合わせてあげるべき」


 本当に視野が広い選手だなと感じたという西瀧。外の世界で野球をしてきた者の大きさをそこに見た。

 

久保康友選手へのインタビュー



写真:笑顔でインタビューに答えてくれる久保


野球界の縦割りをなくすためのレンタル移籍


写真:ブルペンに入る前はキャッチボール

 
 ――ブレイバーズで1シーズンを過ごしたが?


 予想以上に(ブレイバーズというチームの存在が)認知されてなかったことに驚きましたね。もともと、僕も詳しく知りませんでしたが(笑)。だからこそ、情報発信はもっとしていった方が良いと思います。僕がレンタル移籍を提案した理由の一つも、話題になると思ったからです。



 ――富良野へ「レンタル移籍」をした他の理由は?


 「チーム」という縦割りが強い野球界において、「レンタル移籍」はこれまでにない試み。でも、いろいろな場で経験を積めた方が、選手個人にとってはプラスになる。僕が先駆者となり、後に続く若手たちの道を開きたいと思いました。

 どこに所属しているかは、僕からすれば小さなことに過ぎません。大谷翔平くんを見ていると、日本国内で対立しているのが無意味に感じます。野球界が一致団結して、世界に通用する選手、人材を育てる方向に進むべきです。


関西独立リーグは「連携できている」


写真:例のごとく、身振り手振りを交えて、インタビューに答えてくれた

 

 ――関西独立リーグはどう映るか?


 チームではなく、リーグからNPB選手を出そうとしていますね。互いに連携しあえているのは、とても良い点です。だからこそ、IPBLへの加盟は実現してほしいですね。現状では大学生や社会人と練習試合ができない。これは選手にとって大きなマイナスです。


 ――現役を続行するが、来季もブレイバーズに所属するのか?


 来季のことは、まだ決めていないですね。いろいろな所を転々とするのが、僕のスタイルなので。シーズンが始まって何もオファーがなければ、また所属するかもしれません。



久保「今はヨーロッパに関心がある」



 ――どこで野球をプレーしたいのか?


 今はヨーロッパに関心があります。理由は、野球が盛んではない地域だから。「マイナースポーツ」という扱いの中で野球をしてみると、また新しい景色が見えてくるはずです。趣味の世界遺産巡りをしてみたい気持ちもありますしね(笑)。


 ――指導者に関心は?


 全くないです。選手として、同じ目線から助言することは好きですけど。コーチになると「上から」教えざるをえないし、選手はかしこまるでしょう。僕にとって、それはつまらなく感じてしまいます。


 ――今季は阪神タイガース公式戦の解説にも呼ばれていた


 久しぶりの友達に会いに行くという感じでしたね。記者の方々も全員知っているので。対横浜戦の解説をした際は、三浦監督から、「うちのチームには甘めに解説して」とお願いされました(笑)。



久保「ブレイバーズには開眼しそうな選手が多い」


 ――ブレイバーズの選手について


 さらに環境が整えば開眼しそうな選手は多いと思います。野手では島田や梶木、照英。投手なら颯太郎、巴瑠。アレックスもすごいボールを投げていましたよ。一緒にいて楽しいですし、好きな選手しかいません。



 ――ブレイバーズでした「面白い」体験は


 先にも述べた「レンタル移籍」で、球団ごとの壁を壊したことです。僕のやりたいことができたので、面白かったです。

 ベンチで試合を観戦するのも新鮮で楽しかったですね。NPBでは、登板後以外はベンチ入りしないので。一丸となってチームを応援する雰囲気を味わえました。


 ――独立リーグはプロと違い華やかな世界ではない


 バラエティー豊かな環境ですね。プロになれそうな子もいれば、退団を余儀なくされる人もいる。だからこそ自分なりの目標をきちんと定め、それに向けて努力すべきです。そうしないと、自らを見失ってしまうと思います。

 ブレイバーズの選手も、もっと明確に己の目標を設定してほしいです。中途半端が一番よくない。もっとガツガツしたらいいのに、とは一年中思っていましたね。速く行動すればするほど、いろいろな経験ができるはずなので。でも僕が若い頃も、そうはできてなかったなぁ(笑)。



久保「価値観をアップデートし、若い世代に合わせる」




 ――ブレイバーズで成長できた部分はあったか



 僕にとっての成長は、慣れない環境に対応できるようになること。ブレイバーズには若い選手が多く、最初は価値観の違いに戸惑いました。 

 でも実際に話してみると悪気はない。相手の背景を理解できれば、年が離れていても、雰囲気を壊さずに輪の中へと入っていける。このことに気づき、実際に(若い選手たちに)「合わせる」ことができているので、成長したなと思います。


 独立リーグのことを明確に理解することもできました。中に入って実際にプレーしてみたことで、それまで抱いていたイメージとのギャップが埋まりました。NPBを目指す選手だけじゃないんやな、とか。知ったかぶりをしたくない性格の僕には、貴重な機会となりました。


(このインタビューは2022年9月29日に行われました)


久保康友#15

 1980年8月6日生まれ。奈良県橿原市出身の元プロ野球選手。松下電器(現・パナソニック)を経て、2005年にプロ入り。現役時代はロッテ・阪神・DeNAに所属し、97勝をあげる。頭脳派投手として活躍する姿から「投げる哲学者」とも呼ばれた。2017年にDeNAを退団した後は、米独立リーグやメキシカンリーグに活躍の場を移す。
 2021年12月に「兵庫ブレイバーズ」に入団。再び海外でプレーすることを目指し、ブレイバーズで野球勘を取り戻すことを誓った。主に中継ぎとして起用され、最終成績は14登板で0勝1敗1セーブ、防御率5.06。
 2022年8月には、「富良野ブルーリッジ」に12日間のレンタル移籍。独立リーグの活性化を目的として自ら提案した。来季も現役は続行するものの、所属先は未定。

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