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11-20ショートショートnote杯まとめ

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氷堂出雲のショートショートnote杯 まとめ 記事番号11-20
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タイムスリップ運試し(410字)ショートショートnote杯

タイムスリップ運試し(410字)ショートショートnote杯

タイムスリップが自由にできるようになった今、僕と彼女の千春は、禁じられたタイムスリップ運試しをしようとしていた。

タイムスリップは、その時代の自分に憑依する形なので、行き先は、過去に限定されていた。未来に行って自分が死んでいたら、そのまま、浮遊霊になって今の時代に帰れなくなるからだ。

タイムスリップ運試しとは、そう、禁じられた未来に行くこと。

千春は、ジェットコースターやホラー映画が大好きで

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逆転のおと(409文字)ショートショートnote杯

逆転のおと(409文字)ショートショートnote杯

我が家の家宝。
カスタネットのような形のもの。
これで音を鳴らすと劣勢を逆転できるという魔法のようなアイテム。

先祖が、源義経から盗んだ。

ひどいことをしやがる。その怨念で義経が死んだ西暦1189年から832年間音が出ない。

アイテムを「闇に」葬るということだろう。
これさえあれば、頼朝に勝てただろうに。

いよいよ今年2021年、音が復活する年。

俺は、マッチョでゴツい顔をした柔道選手。

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健康ポケット(404文字)ショートショートnote杯

健康ポケット(404文字)ショートショートnote杯

野良猫がいたので親切にしたら、人間になって恩返しに来た。

健康ポケットというものをくれた。その時の健康状態を見てアドバイスをくれるというアイテムだそうだ。

きちんと人間用に改造したって言ってたのが気になるが、元々は何用だったのか。

さすがに、人に見られると恥ずかしいので上着の内側につけている。接触させただけなのに引っ張っても取れない。取ろうという意思を持って引っ張ると簡単に取れる。

朝、出

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道ばたで見つけたATM(406文字)ショートショートnote杯

道ばたで見つけたATM(406文字)ショートショートnote杯

道端にむき出しのATMがあった。ジュースの自動販売機のようにむき出しで。

ちょうど、財布が寂しくなっていたが、これって、カードを盗んだり、暗証番号を盗んだりするためじゃないのかと疑ってしまう。

しかし、背に腹は変えられない。すぐにでも現金が欲しいのだ。
カードを入れ、嘘の暗証番号を押してみる。

「番号が違います」

嘘の番号を見破った。本物なのか? これほど怪しいATMだ。こちらの心理を読ん

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二人用の思い出(409文字)ショートショートnote杯

二人用の思い出(409文字)ショートショートnote杯

「では、確認させていただきます。イタリアへの新婚旅行の記憶をお二人に植え付けます。
 ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ベネチアをまわるコースでよろしかったでしょうか?」
 私は、カップルに確認する。

「はい。あと、俺がかっこよく解決する感じのちよっとしたトラブルも入れてもらうと」
「健二ったら。うふふ」

「では、私が考えたハプニング入れておきますね」

 ここは、二人の思い出づくりの場所。二人の

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道に落ちていた消しゴム(409文字)ショートショートnote杯

道に落ちていた消しゴム(409文字)ショートショートnote杯

小学6年の由佳は道に落ちていた新品の消しゴムを拾った。

由佳は、家に帰り、紙に隠れるところに「晃」と書いた。おまじないのつもりだった。

翌日、昨日から急に由佳のことが気になり出したと晃から告白された。魔法の消しゴムだと由佳は思った。

つき合ってみると、晃はガサツでエッチですぐに冷めてしまった。消しゴムの名前を消すと別れを告げるまでもなく疎遠になった。

高2で、同じクラスになった淳に恋心を抱

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誰も知らない実家(408文字)ショートショートnote杯

誰も知らない実家(408文字)ショートショートnote杯

大学生の潤は、同級生に声をかけた。
「おい、陸、お前、自分の実家って覚えてるか?」
「知らない」
「お前もか。誰に聞いても知らないって言うんだ」
「教授に聞いてみれば?」
 陸は、眉をひそめて言った。誰もそんなことには興味がないらしい。

「教授、どうして僕らは実家を誰も知らないのですか?」
「不妊症のカップルが増え出し、今では人間には子を産む能力がなくなった。それからは、クローンで人は生まれるよ

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金持ちジュリエット(409文字)ショートショートnote杯

金持ちジュリエット(409文字)ショートショートnote杯

お爺さんから莫大な遺産を相続したジュリエット。
ただ、法的にジュリエットは相続できず、お爺さんの家で住み込みの家政婦だったアンナの名義になった。
だって、ジュリエットはゴールデンレトリバーだから。

「全財産を愛犬ジュリエットに渡したいが、名義上はアリスのものにする。しかし、あくまでジュリエットのお金だ。
アリスにジュリエットの面倒をみてほしい。そうすれば、その報酬に相当するお金はアリスが使っても

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君に贈る火星の(385文字)ショートショートnote杯

君に贈る火星の(385文字)ショートショートnote杯

 僕は、小説を書いている。最近はうまく書けず悩んでいた。
 ある夜、庭に出てみると知らない小学生が洗面器に水を張りしゃがんでそれを眺めている。

「君は誰?」
「あ、君、ちょうどよかった。ちょっと見てて」
 少年は、僕のことを君と呼んだ。

「今、火星が大接近していて赤く目立っているから、君にもわかるでしょ。水面に映ってるの。これ」
小学生から君と言われ、苦笑いする。

「君に贈る火星の……なんて

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助手席のハナ(410文字)ショートショートnote杯

助手席のハナ(410文字)ショートショートnote杯

 ああ、緊張する。気に入ってもらえるかな?
 そんなことを考えながら、車を彼女の実家に向かって走らせる。
 助手席には、綺麗な花。どう装えば綺麗に見えるのかを知り尽くしているような完成した美しさ。

 僕は、今日結婚の申し込みに行く。うまく喋れるだろうか? そんなことを考えながら、横を見て、また、その美しさに見惚れてしまう。
 この美しさが永遠のものであってほしい。でも、それは移ろいやすいもの。時

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