消しゴムを拾ってあげた女子にストーカーされた話

ずっと前のnoteで少し話に出した、ストーカーされた話について書く。どこかの文章に混ぜ込もうとしてもインパクトが大きく話が逸れてしまうので、思い出話の単品として。

結論から言ってしまうと警察の介入で事態が収まったので、もし今現在ストーカーされている人は積極的にお世話になるといい。一昔前は男が相談しても受け流されてしまうなんて話もあったが、僕の場合は親切に対応してもらったし、受け付ける人によって対応が変わることもあるので、万一受け流されてしまったら他の署に相談するのもよい。

男女平等の世の中でも一般的に体格の差はあるわけで、男が女にストーカーされるケースの恐怖が多少軽くみられるのはある意味当然とは思う。相談しにくい心理も分かる。でも、やはり社会的規範から逸脱した行動をする人は何をするかわからない。大げさである方が、取り返しのつかない事態に陥るよりはずっとましだ。

以下、事実を時系列順に追っていくのだけれど、個人情報が特定されない程度にぼかしている点はご了承いただきたし。

無いとは思うが、万が一これを目にして気づいてしまうこともあると思い仮定のあなたに向けて先に書いておくけれど、僕はこの事件から人間関係、特に人との距離感についてたくさんの教訓を受けとっていて、僕の人生の一部としてあの経験を受け入れている。今はあなたに対して負の感情は一切ない。当時、あなたにも色々な事情があったのだろうとも思うし。その点は安心してください。だからといって関わろうとも思っていないけれど。その程度には怖かったよ。
幸い自分の場合はうまい具合に消化できたけれど、できない人だっているはずで、そういう意味ではやはりやってはいけなかったことではあったはずだ。僕は水に流せた。それだけ。どこか僕の知らないところで幸せになってくれていたらいいなと願っています。

・第一次ストーカー 学生編

・予備校にて

僕のストーカーになった女の子Oとは、大学受験を控えた予備校で同じクラスになった。寡黙であまりしゃべらない、可愛らしい子だった。いつも少しフリルのついた上着にロングスカートという全身黒の服装と、対照的な色白の肌から“お嬢”とあだ名がついた。
服装はいつも黒だったことをよく覚えている。

僕のクラスは予備校の中では一番難関とされるコースだったからか女子の比率が少なく、二人しかいなかった。のちに地下アイドルになるもう一人の女子Aは背が高く細身で明るい色合いの服装をしていて、二人しかいない女子仲間として強制的に一緒にいることになったAとお嬢がぎこちなく話している様は対照的だった。
平均より少し背の低くふくよかめなお嬢と、痩せて背の高いAが一緒にいる姿は、どこかマリオとルイージを思い起こさせた。

恋の自習室と半分やっかみで呼ばれていた早慶コースの女子たちと比べると、二人ともどこか近寄りがたい空気はあったようで、男子と女子であまりクラス内の交流はなかった。

男子はというとやはりバカなので、初日から仲良くなったKをはじめ、講義の一番前を占める遊びなんかをしながらすぐに打ち解けた。特に仲良くなった6人組は、その半分が海外勤めとなった今でも定期的にZoomで話すくらい親友となった。これはそのきっかけの一つにまつわる話でもある。

・恋の嵐

「イケている」恋の自習室ほど盛んではないが、やはり男女が一定の時空に押し込められると摩擦も起きれば恋も生じる。Kが後地下アイドルAと付き合い始めたことをこっそり聞いていた僕は、6人組の一人のちょっと無骨なMがAを好きになったから告白する!などとみんなではしゃいでいるのをひやひやしながら見守っていた。

結局僕とKの遠回しな抑止は功を奏さず、MはAに神社の参道で告白してしまい見事玉砕した。それでも僕もKもMも、結婚して子供もできた今もずっと仲良くしているのだから人生は面白い。

ともかく、当時傷心のMはすぐにお嬢を好きになった。勉強しかすることのない周囲にとってこれほど面白いことはないのですぐに囃し立てる。特に早慶コースに数多いたMの高校同級生たちが僕たちに輪をかけたバカ揃いで、声高に早く告白しろなどと廊下で叫ぶのだから堪ったものではない。

後に知ることだが、この時既にお嬢は僕のことが好きだったらしく、僕がMのことを応援していると聞いてAに相談していたらしい。元彼のKから聞いた僕はそれはそうだろうなと納得した覚えがある。

そうでなくたって一般的に誰かから好意を向けられたらたいてい察知できるものではあるのだが、お嬢の好意はわかりやすかった。

だって、ストーカーだったから。

・可愛いストーカー

いつも黒い服を着たお嬢は一目でわかる。大通り一本でたどり着く駅までの道を、ゆっくりと歩くその後ろ姿でこれは僕を待っているのだなと確信した。
比喩でなく亀の歩みで、僕がどう遅く歩いたって追いつかざるを得ない速度で一歩、また一歩を5秒おきくらいに踏み出しているのだから。アルキメデスはどうしても亀に追いてしまう。それが現実だ。

僕がお嬢の好意を確信したのはそれより少し前のことである。もともと教室ではっきりと背中に刺さる視線から感じ取ってはいたが、明確にそれと決まったのはニルヴァーナのCDを介してであった。

仲良くなりはじめた僕とKは、教室でいろんな質問をしあっていた。生まれはどこだとか、好きな食べ物は何だとか。最近聞いている音楽の話になった時、僕はニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”を挙げた。青春を代弁するかのような、ちょっと不吉で激しいギターリフではじまるアレである。そしてCD時代の当時は赤ちゃんのジャケットも話題になった。赤ちゃんがプールでお金に釣られるアレだ。わかりやすい。

翌日朝一の講義に駆け込み、ようやく休み時間になった僕が後ろを振り向いてKに話しかけようとすると、その赤ちゃんがカバンから覗いていた。Kのではなく、お嬢のカバンから。そんなにちょうどよくこちらを向いて、わかりやすく出る?と思わず突っ込みたくなるくらいに綺麗な“ちょっと出ちゃった”感をまとって。

三十路を超えた今の僕であれば、すべての思いと言いたいことを飲み込んで『Oさんもニルヴァーナ好きなんだ』と口に出せるだろう。しかし当時は10代。周りにはたくさんの人。相手は消しゴムを拾ってあげたことがあるくらいで一切しゃべったことのない子。赤ちゃんと目が合った途端に頭の中で鳴り響くカート・コバーンの書きならすギターリフが、戦闘開始の合図のようであった。

とにかく向こうから何か言ってほしかった。だって、こちらから何か言えばそれって昨日の会話を聞いていたんだよね?ってことになるし、そうだったら相手に恥をかかせる雰囲気になるし、そうじゃなかったら自意識過剰でもっと恥ずかしい。とにかく向こうから口火を切って欲しい。
そんな願いは届かず、CDから少し目をあげると不気味な微笑を浮かべるお嬢と目が合って、数秒の間何も言葉は交わされず、僕は何も見なかったフリをしてわざとらしくKに天気の話を振った。

・分岐ミス

思えばここが分岐点だった。僕がもっと大人だったら。お嬢がせめて一言でも発してくれれば。当たり障りのない友人にはなれただろうし、付き合っていた可能性だって十二分にあったと思う。
でも、そうはならなかった。ならなかったのだ。こんなかけ違いだけで人間関係はどんどんこじれていく。

時間と場所を大通りに戻す。
ニルヴァーナ事件から結局一度もお嬢と話すこともなかった僕は、遠く前をわざとらしくゆっくりと歩くお嬢を猛然と早歩きで追い越し通り過ぎた。振り向いてはいけない。ここで話しかけられたら死である。

無事に家についたはいいものの、Kの彼女となったA経由で連絡先を聞いたらしいお嬢から長文のメールが来た。何を返せばいいか思案するうちに、半日たたないうちに来る追いメール。何度も震える携帯、増える着信履歴と留守電。すっかり怯えた僕はどれに返すことも出ることもできず、教室ではたっぷりと視線を浴びて帰り道では再びゆっくりと歩く後ろ姿に遭遇する。それを数日繰り返した。その数日ですっかり参ってしまった。

第一次ストーカー事件を終結させたのは、実姉であった。当時男を転がしすぎて小悪魔を通り過ぎ魔王と呼ばれていたその称号は伊達ではない。どうやら様子のおかしい僕から笑いながらすべての話を聞き出すと、急に真面目な顔つきになって僕の携帯をひったくる。何やらメールをお嬢に返し、それをきっかけにぱったりと全てがやんだ。
姉には感謝しているが、何を送ったのかは怖くて見ていない。

こうやってストーカーは終わったかに思われた。ちなみにここで言った“可愛い”とはストーカーの程度のことである。
人に話すと、女性であればそれなりに似たような体験している人は多いように思う。本当によくないことだけれど。
よくあることだから、僕もこの出来事はすぐに忘れた。

ちなみにMはやはり周囲におだてられてお嬢にも告白し、玉砕したらしい。
どこで告白したかは聞く気も起きなかった。

・第二次ストーカー 社会人編

・謎の手紙

ちょっとした小話程度になって、すっかり頭の隅に追いやられたその記憶。郵便受けに入っていた一通の手紙がそれを鮮明に思い出させた。
時は過ぎ、僕は社会人になっていた。

確か社会人1年目か2年目。付き合っていた看護師さんと別れ、その慰めも兼ねてか呼んでもらった合コン。そこで意気投合した年上の女の子と、家が近いことが判明して途中まで一緒に帰っていた。
当時はまだ一軒家の実家に住んでいたのでうちに来なよ、とは言えなかったが、一人暮らしだったらそうなっていただろう距離感で話をしていた。正直可愛かったし、いい感じだった。お互い酔っていたし、電車の中で恥ずかしげもなく手をつないでいたかもしれない。

先に電車を降りた、男子ウケ抜群とネットに書かれている通りの白いフワフワのジャケットに手を振りながら、早くも彼女がまたできるだろうなと無邪気に確信していた。
高校時代から変わらぬ駅から実家への帰り道。ありきたりなありがとう気を付けてねもう家についた?を送っているとすぐにつく距離なのはありがたい。

平和な、期待に満ちたLINEをやり取りしているうちに数日が過ぎた。帰宅すると、封筒が届いているよと家族がテーブルを指さした。
普段仕事関係くらいしか手紙が来ることなどないのに誰だろう?とりあえずあけて中を見てみると、手紙が入っている。

“お久しぶりです、私を覚えていますか?”
誰だろう。その答えはすぐ下に書いてあった。びくっとしてとっさに手紙の全体を見渡すと、裏には不思議なレーダーチャートがあった。

イメージ。実際はもっと複雑な立体であった。

各項の頂点には“優しさ”“カッコよさ”などと書いてある。なんだこれは?と姉や母も集まってきて眺めると、どうやら僕のことを評価してくれているらしかった。
元々の経緯からちょっと不気味に思いつつも、謎の図にのおかしさにちょっと姉が面白がっているとすぐ下の文言に場が凍り付いた。

“でも、この前一緒にいた女はふさわしくない”

その周辺をの文章を見ると、明らかに僕があの路線の電車に、女の子と乗っている場所を見ていないとわからないことが書いてある。

あれから4年以上が経っている。僕があの日合コンに行くことなんて当時の誰にも言っていない。疑心暗鬼になって、唯一つながりがありうる例の6人に連絡しても、そもそもお嬢の連絡先を知らないという。当然だ。

まぁ、偶然同じ電車に乗り合わせて僕と女の子がいるところを目撃してしまい、当時の思い出がよみがえって気持ちもよみがえってしてしまったのではないかということになった。

手紙の最後に書かれていた連絡先には当然連絡せず、もしかしたらこれ以上は何も起きないのではないかという希望をもって、一旦日が過ぎるのを待ってみることになった。

しかし、数年越しに自分が告白していた時にその相手が僕をストーカーしていたことを知らされたM。あの時どんな気持ちだったかはあまり考えたくないところである。

・ご近所の目撃談

一旦何も考えないことにした僕とわが家族だが、ことが収まるわけがない。
周りを警戒してもなぜか一切僕は目撃しなかった。これは僕が終電まで仕事をしている時期だったからかもしれない。何も起きていないと信じたかった。
しかし、ご近所のうわさ好きなおばさんが、母に“謎の黒い女が近所をうろついている。昼夜問わずあなたの家をじっと見ている”と告げていることから周辺に存在することは確かであった。

おばさん曰く、チャイムを鳴らそうとしてやめている様子も見ていたので、もしその時魔王つまり姉が在宅していれば当時と同じように対応し場を納めてもらおう、ということになった。魔王はそれほどまでに強い。幾多の痴漢を駅員に突き出してきた猛者なのだ。

・旧友再集結、カラオケ店での戦い

並行して、僕も動くことにした。例の女の子といい感じだったのに、彼女に危険が及ぶことを恐れて会うこともできない状況だったので、一刻も早く何とかしたかったのだ。
このままだと、やたらとLINEではいい感じなのに会おうとしない思わせぶりクズ男に認定されてしまう。

こうなったら直接お嬢の方に会ってけりをつけたいものだが、会うこともできない。会いたくないけれど会いたいけれど会えない。西野カナよりもうちょっと複雑だ。どうすればいいか考えあぐねて旧友たちに相談したところ、みんなで話し合いながら電話すればいいのではないか、ということになった。

大学時代もちょくちょく会っていたが、まさか社会人になってこんな理由で集まるとは。当時を思いだしながら軽く話そうか、という気楽なワクワクもあった。
カラオケに男6人で入り、一向に歌が聞こえてこないさまは店員さんからすると不気味だったに違いない。申し訳ない。
開口一番、まさかそんなことになっていたなんて、とMも笑っていたので場が和んだ。

例のチャートが書いてある手紙の実物を見せると、みな深刻になった方がいいのか笑った方がいいのか複雑な顔をしていた。人にチャートで診断される機会はそうそうあるものではない。どこから判断したのか年収も高く評価されていた記憶がある。

もしかして、と気の利くKが当時の元カノAの連絡先をどうにか繋げ、以下のようなことを聞き出してくれていた。
・予備校時代、お嬢から相談を受けていたAは僕の情報を話していた。
・その中で、僕の家の最寄り駅を言ってしまっていた。
・もしかするとその時僕を追いかけて自宅を特定していたのではないか。
・ほんとゴメン。

ごめんで済んだら警察はいらない、と言いたくもその当時は何が起きていたのか知らかなったので仕方ない。

というより、もし自宅を知っていたからこうなっていたとして。この4年間定期的に僕の家周辺をうろついていたとして、偶然あの子と帰った日にぶつかる可能性はどのくらいだろうか。というか僕の方が後に電車を降りているのだから、自宅じゃないもっと前から見ていたということになるが果たして・・

考えても仕方ないので、念のため僕ではなく友人Tの携帯電話を借りて電話をかけてみることにした。スピーカーにして全員が聞こえるようにしておき、その都度何を話すかアドバイスを筆談する作戦だった。
仮にもみな1年を同じ教室で過ごした相手だし、前回は姉のメール一発で何とかなったのだ。今回もなんとかなるに違いない。

そんな甘い見立てを、電話がつながってすぐに後悔することになる。

もしもし?と知らない番号の電話に怪訝そうにでた声に“○○ですが”と告げる。あっあっと戸惑う相手に“正直困っていて”と告げようとした瞬間。
怒涛のような早口の洪水が流れ出した。まったく口のはさめないような速さと質量で。無言で目を合わせる僕たちはその異様な雰囲気に何もできない。言っていることはところどころしかわからない、まさに支離滅裂。

突然言葉がやみ、絶望の頭で僕は何かを語りかける。
それに対して的を得ない早口が数分続く。

それを何往復か繰り返し、もはや一方的に“とにかくもう来ないでくれ”といって電話を切った。
何も伝わった気はしなかった。

僕たち6人は言葉少なげにこれで終わるといいね、と言いながらとぼとぼと解散した。めちゃくちゃなエネルギーに圧倒されてしまった。

そのあと、友人Tには昼夜問わず電話がかかりまくってきていたらしい。ほんとゴメン。

・謎の小包

何も成果を得られなかったカラオケ店での戦いから数日後、果たして実家のチャイムは鳴らされた。
しかし、幸か不幸か姉はもちろん誰もいない時間帯で対応はできず、動画が残されているのみであったらしい。

僕が次に見たものは、帰宅すると同時にダイニングテーブルに一堂に会する父母姉と、テーブルにぽつんと置かれている黒いゴミ袋であった。

緊迫した空気から、誰からのものかは明らかだった。コートを脱ぎながら近寄ると、真黒なゴミ袋と見えたそれは小包のようだった。真黒なので、中身はわからない。

家族からは、これは開封せずに警察に相談してもいいのではないかと言われた。ここまでくると皆頭の中があらぬ想像でいっぱいだ。刃物や髪の毛、はたまたもっとおぞましいものや、毒かもしれない。
真黒な小包がこれほどまでに想像力を掻き立てることは、きっと一生ない。

しかし、猫をも殺す好奇心には僕も勝てなかった。開けてみる、そう宣言して恐る恐る小包を開けてみた。触ってみると意外と固く重く、危ないものではなさそうだった。

開けてみると拍子抜けだった。それは公務員試験の教材だった。ハンドブック然とした、暗記用の教材だろうか。
Amazonが変な包み紙で配送してしまったのだろうか。それとも人づてに貸そうとして間違ってポストに入れてしまった?ここまでくると自分をいい方向に納得させるのも無理やりである。Amazonが配送先も何もつけない小包を送るはずがないし、そもそも動画が残っているのだ。

ともかく変なものではなくてよかったね、とページをめくってみた瞬間、戦慄した。
ページの余白という余白に、びっしりと手書きの文字が書き詰められていた。

“将来子供は何人いて”“上の子は男の子”“○○君の年収はいくらで”と、主に僕との結婚生活について、すべてのページの、ヘッダーとフッターの余白に書き詰められてある。もちろん余白の豊富な表紙裏や最後のページにはたっぷりと。
これはもはや特級呪物だ。

人の手書きの文字がこれほどまでに気持ちのこもったものになりうるなんて、もっと他の方法で知りたかったな。

呪物が放つあまりの狂気に、母はその場で警察に電話をかけた。こじれにこじれてそのうち放火でもされるんじゃないかと口をつく冗談は、あまり冗談に聞こえなくなっていた。

・国家権力

男がストーカーをされても相手にされないのではないか。そういった事例は聞いていたし、相談がこのタイミングになったのもその懸念があったからだったが、警察はすぐに動いてくれた。

国家権力はすさまじい。すぐに相手の親が特定され、幸い相手の親御さんは何も知らない普通の方だったようですぐにストーカーは止んだ。ことの顛末も警察に聞いたが、詳細への言及は避けたい。
就活や資格試験などいろいろなストレスが溜まった結果起きた、不幸な事故だったのではないかということで納得している。
親御さんから謝罪も来たが、お互い大変ですね、よくなりますようにということで、今に至るまで何も起きていない。

・ストーカーにまつわる他山の石として

・この話を書いた理由

僕がこの話を書いた理由の一つは、結構似たようなことをしてしまったり、する直前まで行ってしまった人は多いのではないかと思ったからだ。
僕だって、この体験が戒めになってできる限りこれに近いことはしていないつもりだが、自分が気づいていないだけでちょっとしつこいなと思われるくらいのことはしてきた可能性は十分ある。

もちろん詳細な状況は異なるが、最近身近な女性が“学生編”のようなことをしてしまっていたということを聞いて、若い時にはまぁ“よくあることだな”と一旦受け流してしまった自分に驚いた。

男性側とも女性側とも友人であり、女性側と話しているときはそこまではしていなそうだったけれど、男性側から話を聞くとそうであった、という次第だった。自分の体験があるのにも関わらず止めることはできなかったのだな、と考えると物悲しかった。なんとかできるというのは思い上がりかもしれないが、何せ二人を引き合わせたきかっけは僕であったのだ。

もしくは“学生編”程度であればよくあることで、“社会人編”まで行かなければギリギリセーフなのかもしれない。間違ったことをしてしまっても、指摘されてすぐに直すことができたのだから。

・境界線の前で引き返せますように

ストーカー。そう言える行為がどこからなのかはそれなりに曖昧だ。“好きな人以外からの好意はすべて悪”みたいな風潮もあるが、そんなことを言ったら人の心を読めるエスパーしか恋愛できなくなってしまう。

僕たちができることと言ったら、できる限り相手の反応を見ながら嫌がることをしない程度だ。そのラインはどこで、どんな反応で判断すればいいのか。それを学習するためには実地の経験も必要で、どうしたって誰かに多少嫌なことはされるし、してしまう。

だから、もし何か誤ってしまったとしても反省すればいい。そして、そもそも自分の状態が悪いと気づいたら、取り返しのつかないところになる前に誰かを頼って欲しい。僕も、そうやって誰かを頼るようにしたい。

誰もいなかったら、それこそ国がホットラインを用意してくれている。それを頼ることは何も恥ずかしいことではない。むしろ自分を変えるための勇気ある行動だ。

僕とお嬢だって、いい友人になって、Mたちと一緒に今でも仲良くしている未来はあったはず。
そして、それは今現実となっている未来とかなり近いところにあったのではないかと今でも思っている。

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