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花束はいりません

送別会とか謝恩会などの場で花束を贈るのはやめるべきだと思っている。  

贈る側としては「あいつの喜びそうなプレゼントとか考えるの面倒だし、適当に花でも送っとけばよくね?」という軽いノリで花束を選んでいるのだろうが、貰う側の立場になると、貰った瞬間はちょっと嬉しくもなるが、花束を持って家路についている時の間抜けさといったら筆舌に尽くしがたいものがある。   
 
若い女性なんかであれば花束を抱えている姿は絵になるだろうが、こちとら40過ぎたおっさんである。その花束が立派であればあるほど、綺麗であればあるほど、自分のみすぼらしさが際立つような気がして立つ瀬がない。   
 
特に会がお開きになり、途中まで帰り道が同じ仲間とも散り散りになり、遂に僕と花束だけになってしまった時や、一人花束を抱えて電車に乗り込むときのフワフワした感じはあまり味わいたくないものである。  
 
なんというか自分を中心とした半径5メートル圏内の人々の視線がこちらに集中しているようで鳥肌を抑えることができない。  
 

花束を持って一人佇む中年男性ほど、そこに至るまでにどんなストーリーがあったのか、想像を掻き立てるものはないと思う。   
 
ある人は素直に「ああ、送別会かなんかだったんだな」と思ってくれるかもしれないが、「この人は彼女にプロポーズしようとガラにもなく花束まで買ったのに相手が来なかったんだな」と思われてしまう可能性も一割くらいはあるかもしれない。   
 
自意識過剰のなせる業だと思うが、電車の中で花束を抱えていると、乗り合わせている人が半笑いでこちらを見ているような感覚に襲われる。   
 
もう笑ってる奴らが家に帰れなくなっても構わないから、自分の目当ての駅までノンストップで飛ばしてくれないかなと思う。   
 
そんな居た堪れない思いまでして、やっとのことで自宅に帰っても、カミさんにまで「こんなのもらって来られてもこれ飾るの私でしょ」という顔をされてしまう。   
 
こんなことなら花束なんぞ持ち帰らずに、駅の洋式便所にでも活けてくれば良かったとさえ思ってしまうのだ。   
 
そんなわけで、僕が日本国王になったら、安易な気持ちで花束を贈るのは禁止という条例を作りたいと思っている。   
 
個人的には花束よりも図書券500円分とかちくわ10本とかの方が遥かに嬉しい。なんなら何もくれないでもいいから、その花束代を会費の足しにでもしてくれた方がまだ良いと思う。

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