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『オススメの短編(1)』

ワダチ - 松本零士

guchon
今回は好きな短編をオススメする回です!

kobochanne
はい!おれのオススメは『ワダチ - 松本零士』です!

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ワダチ - 松本零士
山本轍(ヤマモト ワダチ)は、ボロアパート大下宿荘の四畳半に住む浪人生。怪しげな教授、佐渡酒造と知り合ったことから、日本人を他惑星に移住させる「カミヨ計画」に巻き込まれてしまう。

『男おいどん』の四畳半要素と『銀河鉄道999』のSF要素っていう、松本零士のエッセンスが全2巻に詰まっているのが好きで選びました。

guchon
コボチャンはずいぶん前からオススメしてたよね。
おれは、これまで松本零士作品って漫画もアニメも観たことがなくて、Daft Punkのミュージックビデオぐらいでしか触れてこなかったから、もったいないことしてたと思ったよ。

kobochanne
おれも、これを読むまではDaft Punkのイメージしかなかったなー。なにしろ1974年頃の作品だから古いし。

guchon
2巻に収まってるとは思えないスケールの漫画だよね。

kobochanne
話のスケールが大きいし、けっこうガッツリしたSFなのに、松本零士の四畳半ものならではの童貞の純情がしっかり描かれてるのが、ホントいいんだよね。

guchon
わかるわー。ワダチ、マジいいやつだし、一生懸命すぎて応援したくなる主人公。

kobochanne
『男おいどん』もオススメだよ。主人公の大山昇太は、ほぼワダチと同一人物みたいなもんだし。
ちょっと話がそれるけど、松本零士作品はどの作品も同じ世界を描いていて、『男おいどん』の大山昇太は『銀河鉄道999』の星野哲郎の先祖って設定らしいのもオタク心をくすぐるんだよ。『ワダチ』にもハーロックが出てくるし。

guchon
マジ、そういう世界設定大好物すぎる!『ドラゴンボール』でペンギン村でてくる的な!
『ワダチ』は大筋のストーリーはシリアスなSFなのに、主人公がワダチだから終始脱力しながら話が進むところが良いよね。

kobochanne
そうそう!この「トマホークとナイフとパンツ十まい」を買うコマとか、かなり好き。

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guchon
わはは!めちゃいいコマ!
世界観は『マッドマックス』みたいなのに、なごむっていうね。

kobochanne
ワダチの言葉づかいも、ホントかわいいしね。

guchon
読み始めたときは「ばってん」っていう口癖も「何これ!」って思ったけど、最後には好きになってたわー。

kobochanne
Daft Punkは『ワダチ』もちゃんと読んでるのかなー。

guchon
わはは!
おれも松本零士作品をもっと読み進めて、Daft Punkに追いつかないと…。でも『ワダチ』が良すぎたから、相当ハードル上がっちゃったかもしれない。

kobochanne
他の作品もいくつか読んだけど、おれはやっぱり『ワダチ』が好きだったかなー。最初にも言ったけど『男おいどん』と『銀河鉄道999』のエッセンスが2巻に詰まってるのが良いのよ。

guchon
たしかに、松本零士入門編としてもバッチリだった!

kobochanne
連載期間でみても『男おいどん』(1971-1973)→『ワダチ』(1973-1974)→『銀河鉄道999』(1977-1981)っていう順番みたいだから、『ワダチ』は実際にふたつの作品の橋渡しみたいな立ち位置だったんじゃないかなー。

guchon
Daft Punkのアルバム『Homework』→『Discovery』→『Human After All』のながれに通じるものがあるかも。

kobochanne
わはは!なんとなく分かるわー。だんだんシリアス路線になってくかんじね。
なんにせよ、松本零士作品って今読むにはクセが強いから世界観に馴染むまで苦労するけど、ぐちょんには楽しんでもらえたようでよかったよ。

guchon
2巻に収まってるだけあって、テンポもいいし最高だった!

kobochanne
Kindleでも手軽に読めるし、紙書籍も中古で600-800円で2冊揃うから、松本零士作品に馴染みのない人にも、ぜひ読んでほしいです!


名人伝 - 中島敦

guchon
おれのオススメは『名人伝 - 中島敦』です!

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名人伝 - 中島敦
天下一の弓の名人を志した主人公・紀昌が最後に到達した境地とは…?33歳で夭折した中島敦の遺作のひとつであり、生涯で最後に書いた作品ともいわれる。

中島敦といえば、虎になっちゃう『山月記』が有名だけど、おれは断然『名人伝』派!

kobochanne
この作品は全然知らなかった!ホントいい作品を紹介してもらったわー。これは、なにで知ったの?

guchon
中学の頃に、図書館で借りた短編集で読んだんだよね。『山月記』よりこっちを先に読んだから、おれの中で中島敦と言えば『名人伝』になっちゃった。

kobochanne
中学で中島敦を読んでるとか、マジ渋すぎ!

guchon
中島敦だけじゃなくて、ファンタジーとかSFを集めた短編集で読んだのよ。「中島敦全集!」みたいなノリだったら、おれも絶対読んでなかったと思う。

kobochanne
短編のオムニバスって、そういう出会いがあるからいいよね。

guchon
そうそう!それで『名人伝』を読んで、中学生ながら「“不射之射”ってマジやべー!かっけー!」ってなったんだよね。内容的に中学生が好きそうな話だし。

kobochanne
わはは!“不射之射”はたしかに中学生の心をくすぐるよね。

guchon
あと、『名人伝』も『山月記』も中国古典をサンプリングして再構築してるのが、ディスコとかファンクのリエディット的で好きなんだよね。
芥川龍之介の『羅生門』も今昔物語集からのサンプリングだし、名作ってサンプリングが多い。サンプリング最高!

kobochanne
たしかに、漢文で習ったような古典の読み心地だけど、今でも読みやすい内容になってる。『名人伝』は『列子』が元ネタらしいし。
『名人伝』は、主人公の紀昌が“不射之射“を極めすぎて弓を忘れたようにも、違うようにも読める終わり方がよかった。

guchon
そうそう!紀昌が単にボケて弓を忘れちゃったのを周りが騒いで噂だけが独り歩きしたって解釈もできるしね。

kobochanne
“不射之射”という極意が、フォロワーによって陳腐化しちゃうんだよね。紀昌もそういうフォロワーの一人だったとも読めなくないし。

guchon
“不射之射”の本質は、弓(道具)を忘れたり使わない事(形式)ではないもんね。

kobochanne
本質は一般化しにくいし広まりにくいっていう話なんだろうね。うわべだけが広まっちゃう。

guchon
中国古典っぽい教訓だよね。行為の本質(極意)を理解してないのに、その行為だけ形骸化して模倣しちゃうっていう。
例えたら、ルールで決まってるから印鑑を押すけど、何のために印鑑を押すかは知らないでやってるみたいな。

kobochanne
そうそう。もともとは印鑑にも意味があったんだけど、広まったのは意味のない形式としての印鑑ってことだよね。

guchon
こういうの現代でもよくある話だし、さすが中国古典だわ。

kobochanne
そんな昔から形骸化が疑問視されてたんだって思うと、クソめんどい印鑑も「そんなもんだよな」で済まさず、ちゃんと意味を考えないといかんよね。
なんなんだろうね、印鑑って。

guchon
印鑑の話になっちゃった。

つづく

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