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相模川の伏流水に生息するメクラヨコエビ類

神奈川県厚木市内の相模川に水生昆虫探索によく通っており、伏流水の湧く地点から盲目のヨコエビ類を見つけたことがある。話によると、このような地下水性のヨコエビ類はそれほど珍しい存在ではないらしいが、実際に目にすると、地下水の知られざる生態系を垣間見たようで、何とも不思議な気分になる。

2019年3月 盲目ヨコエビ類の採集地

よく分からないが、メクラヨコエビ類のPseudocrangonyx属だろうか? 上記ヨコエビは、2018年12月~2019年1月に採集したもの(標本は残してない)。体長は1 cm弱ほどで、決して微小なわけではない。 上記写真の採集地では、当時、写真手前の川底から伏流水が湧いており、川底の砂をかき混ぜると真っ白透明なヨコエビが簡単に出てきた。当時、地下水性ゲンゴロウ等の微小甲虫が見つからないかと思いつき、上記場所周辺で地下水がある程度勢いよく湧いているところに網を張って粘ったが、甲虫で採れたのはヒメドロムシ科のゴトウミゾドロムシの成虫1匹のみだった(齋藤, 2022)。これだけでも、個人的には大成果だったが。ゴトウミゾドロムシは、井戸水から採れることもあるようである(中島ら, 2020)。網には盲目ヨコエビ類もたまに掛かったが、網に掛かるのは小型で弱っている個体ばかりだった。網に掛かる個体=弱っていて簡単に流されてくる個体ということか。上記の場所では、2019年10月の台風19号襲来時の増水後、ヨコエビ類は見つからなくなってしまった。伏流水は相変わらず湧いているので、環境が落ち着けばそのうちまた出てくると思われる。

いずれにしても、これら盲目ヨコエビ類は、普段人目に触れる機会がないだけで、川底のもっと深いところの礫の隙間に広くに生息しているのだろう。

相模川の岸辺の湧水に網を張って採れたゴトウミゾドロムシ Ordobrevia gotoi.
この場所近辺で本種が採れたのはこの個体のみで、通常見つかるはずの河床からは全く得られていない。


引用文献

齋藤孝明, 2022. 神奈川県におけるヒメドロムシ類の追加記録(I)(山梨県と東京都の記録を含む). 神奈川虫報, (206): 30--34.
中島 淳・林 成多・石田和男・北野 忠・吉富博之, 2020. 日本の水生昆虫. 351 pp., 文一総合出版, 東京.


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