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#90 コメ先物終了:蓋すれば価格が安定すると考える浅はかさ

大阪堂島商品取引所のコメ先物取引が終了することが決定しました。

これは2011年の民主党時代に試験上場として復活したものでした。

農水省が「参加者数が伸び悩んでいて」「取引高が少なくなり」「価格が乱高下すると困る」という理由らしい。

参加者数は168と着実に増えてきたのに。

つまりはJAの反対工作。

医師会と並ぶロビー団体。

そして自民党(農林・食料戦略調査会)が止めたのが真相。

先物市場の「価格発見機能」が怖いのだ。市場価格がわかってしまう。あえてこれが「真の価格」と表現してしまうと、これまで「砂上の価格」でつくろっているからな。

コメの価格は事実上JAが決めている。

相対(あいたい)取引価格は、JAが生産者に支払う「概算金」という非公表の数字が目安になっている。

JAがお手盛りで決めて、高く買い取る。JAは生産者(農家)の団体だからね。

外食産業や卸業者に負担を強いる。

もちろんこれは消費者の支払う価格に上乗せされる。

スーパーで買うお米が5kg2000円が、本当は1000円くらいだったら怒るよね。あまりに長く搾取されているので怒るのも忘れている。消費税が100%と同じなのに。2ポイント上がるだけで大騒ぎするくせに。

これが「稲作は日本の文化」「コメは聖域」「田園風景が美しいニッポン」「農家は集票マシーン」の実態。

実際にコメの需要なんてずっと下がっていて、田んぼは一定なんだから、価格が下がらないのはおかしいでしょ。世の中、需要と供給で価格が決まるんだから。

歴史的には、1730年に堂島米市場で先物取引が始まった発祥の地でありながら、このていたらく。

これは「実勢価格がわかってしまうのが怖い」「だから蓋をして見ないでおけ」「価格はオレ様たちが決める」ということ。

価格統制なんて戦時立法でしか聞いたことないでしょ。

見えるとコメの衰退が一目瞭然だからね。まあ価格下落を見なくても量でもわかっちゃうけどね。

勉強していない人に、「厚生経済学の第一基本定理」をしんぜよう。

「需給法則に基づく価格メカニズムを通じてパレート効率性という望ましい資源配分が実現できる」つまり、「パレート効率性を達成するためには、特に政府は経済に介入すべきではない」のだ。イロハのイ。

さすがに自民党の農林・食料戦略調査会も「現物市場」の創設を農水省に働きかけているらしい。

これも変だ。

「現物価格はいいけど、先物価格は見たくない」というのはおかしい。

この2つの価格は連動して決まる。保管費用と金利を考慮して。

市場の分断が無い限り、全く別の価格がつくことはない。

例えば、今はだぶついているけど、秋は凶作が予想されるからその時々の需給で全く違った価格になるような特殊な場合。

現代は保存技術が高いからどうってことない。分断されない。足りなきゃ輸入すればいいだけの話。

しかも先物の「リスクヘッジ機能」という大きなメリットを失ってしまう。半年先の価格を確定することで売り手も買い手も安定するのに。

豊作だ凶作だ、台風だ水害だ、天候不順だと騒いで、補助金ももらうよりちゃんとリスクヘッジしなさいよ。保険掛けるのと同じ。

スキー、レジャー、ビールなんかの業界はちゃんとやっている。

それもしないで補助金や助成金、金利や税の優遇措置だけはちゃっかりもらう。

もしかして裏でヘッジして、さらに補助金もらっていないよね。まあ価格上げてるんだから同じことだけど。

もっと変なのは、市場価格を見なければ価格が安定しているという考え方だ。

為替の固定相場制を思い出して欲しい。

固定すれば経済が安定する?

バカな。他で吹き出るだけでしょ。

これ不動産の私募リートの場合も使われるレトリック。

「非上場なので投資口価格はより安定します」

ナゾだ。

実態は、上場リートも実物物件も上下しているのに、非上場にするとあら不思議止まるの?

これは帳簿上そう処理していいよ、という話であって時価会計趨勢の世の中で安心しているのは、えらく古い人なんだなあ、と感心してしまう。

この会社やファンドの投資家は怒るよね。時価を隠してるんだから。

コメの場合は消費者が怒るべきよ。だってこっちは実際にお金を取られているんだからね。

広くかすめ取る、じゃない広く多額にずーっと奪う。ペニーオークションよりひどい。

稲作農家の保護なら、直接お金渡せばいいと思う。保護されて一人前みたいに気勢を上げられてもねえ。

それにしても農家やJAってかつてほど票に結びついているとは思えないけど。

決別できないんだろうね。腐れ縁。


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