創作スペースに使用したメモ書き

はじめに
・私個人の主観と体験・体感で語っているので合わないところや違うと思うことがあればスルーしてほしい。
・SSの書き方と題してるものの、このスペースでは文章の書き方だったり、SSを書くためのノウハウ、メソッドのような技術的なことはあまりお話出来ない(そういったことは私が話すよりも文章や物語の書き方の本などが多数出ているのでそちらの方がわかりやすいし的確なのでそちらを読んでみて欲しい)
私は10年くらい書き続けているけど、文章の勉強をしたいなと思うようになったのはここ二、三年だし、書くことについて色々考えるようになったのはここ一年くらいのことなので自分なりの明確なやり方みたいなものを見出せていない
・SSでも続けることで磨かれるもの(主に表現や描写、起承転結の要約のやり方など)単純に文章の能力を向上させたいならやっぱりある程度長めの話を書いた方が身につくものが多いと思う。長いということはその中でやれることが多いし、ひとつのものに時間をかけて向き合うことで見えてくるものもある。
それなら何故わざわざSSなのか、SSで何が出来るのかということを私なりに考えてみたので少しずつ話したいと思います。

SSの強み
(主にSS名刺メーカーさんを使った140〜300字程度のSSについて)

①短時間で物語の世界に行って帰ってこれる
長い物語は映画のようだけど、SSは切り取れる瞬間が短いので写真のようだなと思う。一瞬だけを映していること、その前後に何が起きているかを見ている人が考えるところが写真っぽい。
映画や漫画は画として見る人全てに同じものを見せられる。小説は画が見えない代わりに想像の中でしか見えない光景があって、100人読者がいたら100通りの光景があるのが魅力だと思う。そしてSSは短いから・一瞬を切り取るからこそ、読み手に物語の続きを想像させる力がある。
とっぷりと時間をかけて物語に浸かるのもいいけど、タイムラインで見かける写真のように、ふっと視界に入った文字を辿って別世界にいってふっと帰ってこれるのも魅力のひとつ。
時間が短いぶん長い物語ほど沢山のものは持ち帰ってこれないけど、なんだかすごくいい匂いがしたとか、暑い日に快い風が吹いたとか、そういう感覚に近いものを得られるのがSSの魅力だと思う。

②とにかく読んで貰いやすいということ
・人に読んでもらいやすいから書いた方がいいと言いたい訳ではない
・去年不在の魔法使い(200〜300字程度のSS)でバズったがこれが二段組の長文テキストだったらこれほど読んで貰えなかったと思う
・SNSやってる人は流れてくTLで画像から瞬時に情報を拾うことに慣れている(手早く情報を集めたい)→小説はSS名刺メーカーを使った作品が多いが、二段組の文字が書かれた画像が四枚並ぶと普段小説に慣れ親しまない人はうわっ長いなと思うだろう(小説を読むのに気力コストがかかるのはすごくわかる)
・みんな生活に仕事に忙しく、更に最近はコンテンツの数が膨大な為、みんなやることやれることは無限にある、そんな中で読んでもいいかなと思える長さ

・文章表現作品自体を読まないと決めている人は呼び込めないにしても、普段小説はあまり読まない層、自分の作品を知らない層の人にも「取り敢えず読んでみるか」と思わせられるくらいの字数
・あまりゆっくり時間が取れない時に流れてきても「これなら読めそう」と思わせられる→後回しにして忘れられたりすることが減る
・短いからこそ最後まで読んでもらえる可能性が上がる(小説だと文体が合わない、内容に惹かれないなど途中で読むのを辞められることもあると思う)

・長い小説を支部にあげたりべったーにあげたりした時に中身の一部を数百字程度抜き出して画像化するのもリンクだけ貼るよりは効果があると思う(手早く情報を拾うことに慣れてる人の目に触れやすい)(媒体を移動しなくてもTwitterだけで情報拾える)

③表現や言葉の可動域が増える
・文章だけの表現とはまた少し違う方の話になる
・ある程度の短さの話は本の中や紙の上からも飛び出していけるし、読みやすい形に収まらなくてもいい
・長めの話であればフォントやそのサイズ、組版など読み易さを優先させた方がいいと思うが、短い話なら多少奇抜なフォントや色を使ってもいいと思うし、縦書き・横書きの枠に当て嵌めずに文字で形を作ったり逆さまにしたり回転させてもいい
・文字で自由に表現してるのが最果タヒさん(ことばそのものカードやモビールによる展示、階段や道路など街に書かれた言葉)
・十年くらい前のサカナクションのアルバムの歌詞カード(この頃の歌詞カードはデザインや装丁が凝ってた印象)
・RADWIMPSの絶体絶命の歌詞カード
・東京事変のcolor barの歌詞カード

④本にした場合好きな場所から読める
これは短歌や詩集と同じですね
寝る前にパッと開いたところから思いもよらない物語に出会える
なんとなく開いたページに好きな言葉や物語が載ってたら嬉しくなる

参考になりそうな本
・じゃあ書いてみるかって思っても普段長いの書き慣れてる人は短いの書く時にどう書けばいいんだ?ってなると思うから本の紹介を

・超短編の世界/創英社
500字以下の物語を集めたもの、書き手さんが複数参加している

①絵本、童話
・子供の気持ちを引いていられる、飽きない長さ
・大人の本はとにかく情報量が多い
子どもの本は説明は多過ぎず、かつ綺麗なやわらかい文章で書かれている。表現もうつくしい
・SSの参考とか関係なく読んでほしい。河合隼雄の子どもの本を読む「子どもの本を読んでいるというと怪訝な顔をされたり、子どもの本なんてと言われることが多いが、子どもの為の本ということは生きることに必要な本であるということ」
・小川未明の童話、宮沢賢治の童話
・54字の物語
・超ショート小説の書き方
・ショートショートドロップス(恩田陸、辻村深月、萩尾望都、三浦しをん、皆川博子、宮部みゆき)
・三円小説(インスタ発、100字程度の物語を集めた小説)

Twitter
・10文字怪談
・二行で心を奪うタグ

②飯田茂実の一行物語(って書いたけどこれAmazonでめちゃくちゃ価格高騰してるな???一年前くらいまで普通に売ってたのに)
・一行怪談なら在庫あるはず……
・一文・一行系は性質上収録数が多くて、正直微妙だなと感じるものもそれなりにあるんだけど、キラリと光るものがいくつかあるって感じ

短い中で完結させるというよりは、読み手に想像させる書き方をしていてそれがSSを書くのに必要な手法なのかなと感じる
・やなせたかしの夜霧の騎士もめちゃくちゃいいけどこれもう出回ってないのよね……

SSの書き方(200字〜300字程度)

①唐の詩人、杜甫(とほ)の詠んだ次の五言絶句の詩が、「起承転結」の例である。(起承転結のウィキで見れる)
起: 川の水は深緑で鳥はますます白く見え
承: 山は新緑で花は燃えさからんばかりに赤く見える
転: 今年の春も見ているうちにまたもや過ぎ去ろうとしている
結: 一体いつになれば故郷に帰れる年がくるというのか

②SSにするのに向いている内容
・大まかに言うと瞬間を切り取る話・空白の多い話

瞬間の話として先日あげたあんさんぶるスターズの葵ゆうたくんの話を分解していく
・ゆうたくんのざっくりとした説明
(双子の兄弟の弟、兄のひなたくんとは瓜二つで鏡合わせのよう、幼少期に親である自分ですら彼等を見分けられないことから「気持ち悪い」と言われたことが明確な傷としてあり、父親に対して憎しみを含んだ複雑な感情を持っている、作中で父親が男と書かれているのはゆうたくんが父親のことをお父さんなどと呼ぶことがなく、父親のような存在の人と呼んでいるから)
・これはゆうたくんの父親への殺意の話
・絶対に人を殺さない人間というのは存在しなくて、凶器と動機とタイミングが合えば誰でも人を殺し得るものだと思ってる。けどずっとこれが揃ったままでいられることもそうなくて、時計の時針と分針と秒針がぐるぐる回って揃ってはズレていくような感じだと思っている。これはゆうたくんの殺意の針が全て揃って、そこから一秒経過するまでの瞬間を切り取った話で、書きたいのはここ
・300字以下だと書けるものがとにかく少ないので、何が書きたいものをひとつだけに絞る
・あとはどれだけその一瞬を鮮明に見せるかの描写
・書くキャラクターらしい要素や解釈をベースにしたシチュエーションを盛り込む
・時間帯が夏の終わりの夕方なのはゆうたくんの名前が夕日と同じゆうの音を持つこと、また彼の父親に対する感情や殺意が衝動的なものでなく長年積み重なったものであること、彼が長年感情にじわじわと焼かれ続けただろうことから夏の盛りが過ぎてもまだまだ暑く日も沈まない暮れ時が思い浮かんだのでそうなった
・最後は感情よりも事実を描写した方が話として余韻が残るような気がする
・彼の手に包丁の柄の跡が残ったのはゆうたくんの殺意が紛れもなく本物であり、愛故に(家族だから血縁だからですべて解決される魔法が嫌いなので)我に返って殺意を喪失したのでなく、世界と彼の秒針が動いたから三つの要素が揃わなかったから殺せなかったことを書きたかった

・余白の多い話である不在の魔法使いも、書き方としてはさっきのものと同じ(書きたいものをひとつに絞り、そこを際立たせるような描写をする)
・ゆうたくんの殺意の話という個人の感情とは反対に世界に残っている事象や伝承のようなものを書いているので、ゆうたくんの話よりもカメラを引いて広めの視野で描写する(感情などを描く時は視野のカメラをぐっと近付けて、逆に世界の話を書くときはカメラを下げて広くを写す感覚)
・こういう話を書くときは絵本や童話の文体を参考にしています。個人の感情にフォーカスしすぎずに、世界に起きたことを淡々と、でも美しいと思える描写で、キャラクターらしい要素を盛り込んで書く
・最初から綺麗に収まるように書き切ろうとしなくてもいい。長めの話を書き慣れてる人ほど、ひとつの物事から無数に情報を拾えると思います。でもそうすると字数を大幅にオーバーしちゃう。取り敢えず書きたいように書いて、そこから必要ないと思う描写を減らしていき、画像内に収まる長さにする(短文で魅せるという目標上、その作品内で一番と思う文は絶対に減らさない)
・SSを書くにあたって最初にぶち当たった悩みが独りよがりになるな……ってことでした。これは自分が当時感情にフォーカスする方の作品を書くことが多かったからというのもあるんですが、あくまでSS、ストーリーを書くのにこの短い尺でモノローグ入れすぎると結局そこしかかけなくて独りよがりに感じてしまうんですよね。あと体言止めとかも数個入れるだけで物語というよりも単にそのキャラ視点のモノローグの切り出しみたいになってしまうので、一人称視点で書く時はあまりそういう要素は入れないようにしています。

・同人誌を出すハードルが上がってるツイートを見かけた
・確かに時間もお金も手間も知識もいる
・でも自分は書くことで救われた部分がある人間
・原稿してると躁鬱がターン制バトルみたいにやってくる人間なんですね
・〆切3日前くらいになると、なんでこんな苦しいことをわざわざやってるんだろう、なんで書いてるんだろうなんの意味があるんだろう、こんなことしなきゃもっと丁寧に健康的な生活が送れてるのにって毎回思う
・でも自分の書いたものが形になったとき、なんでこんな苦しい思いをしてまで書くんだろうの答えが本として形としてそこにある
世には他人が書いた面白い話が山ほどあるけど、これだけは自分が自分にだけ贈ることが出来るギフトだと思う。なんで書くのの答えを私が書いて渡してくれる
・長い話が書けないという人が本を出したいと思った時に長い話が書きたいから本を出したい、というならその方向で努力していくしかない
でももし本を出す理由が本を出す経験を得たい、形にしてみたい、けど長い話が書けないから難しいと思っている人がいるのならこの世にはまだ小説や短歌や詩ほど認知されていないだけで数多の短文表現があり、あなたの書けるものそのままでも本は出せますよ〜とインターネット世界の端からお伝えしたい
長い話に挑むのも凄いことだし素晴らしいことで、でも本を出したいという時に選択肢が長い話を書くしかないと思い込んでしまうのは苦しいと思う。
その人に合わせたスタイルで本は出せるし、道はひとつじゃないから色んな表現に親しんで、楽しんでいけたらいいなと思う。

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