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「ひらめき」は理由が言える、「直感」は理由が言えない

「ひらめき(inspiration)」と「直感(intuition)」は違います。ひらめきは理由の説明できる思いつき、直感は理由が説明できない思いつきです。例えば、数学の問題の解き方を思いつくのはひらめきで、「あいつが怪しい」という刑事の第六感は直感です。

 ひらめきと直感では使用される大脳の部位が違います。ひらめきは大脳新皮質の働き、直感は大脳基底核の線条体という部位による働きです。線条体は運動を司る部位でもあり、深く考えなくても歩く、走る、箸を使う、自転車に乗る、といった行動をコントロールします。直感は経験を積むことで働くものであり、未経験分野では働きません。

ひらめきは意味と意味のつながりを見つける働きで、ニュートンの万有引力の法則、アインシュタインの相対性理論はひらめきによって生まれた成果です。ひらめきは問題を解決しようとする意識的な活動から生じます。その土台となるのは頭の中に蓄積された知識・経験のデータベースです。

知識労働にはひらめきが必要です。今までなかった新しい発想・アイディアはひらめきによって生まれます。しかし、ひらめきはゼロからは生まれません。意味と意味との間をつなぐ新しい意味、概念と概念を結び付けて生まれた新しい概念、がひらめきの本質です。

頭の中にあるものが結びついて新しいアイディアが生まれるのです。ですから、色々な知識を持っている人ほどひらめきやすいのです。ひらめきは知識がゼロの状態からは生まれません。

こうしてみると直感よりもひらめきの方が優れているようにも思われます。しかし、そんなことはありません。直感は既存の領域で力を発揮する能力です。はじめの頃はできなかったことが練習を積むことで直感が働くようになります。直感が働くことで細かく考える必要がなくなるのです。

新人が苦労している仕事もベテランにとっては深く考えなくても簡単にできるのは直感が働くためです。しかし、直感には既存の経験の範囲内でしか働かないという弱点があります。自転車が乗れるようになっても車の運転ができるわけではありません。直感は全く新しい分野では働きにくいのです。直感は過去に向かい、ひらめきは未来に向かうと言えるかもしれません。

このようにひらめきと直感では役割が違います。既存の領域では直感を働かせ、新たな領域ではひらめきを働かせるようにするのです。直感は既存の領域で力を発揮する能力です。そして、私たちは両方の能力をうまく使いこなす必要があるのです。また、ひらめきの場合、睡眠や軽い運動をすると効果的であることも分かっています。

新しいものを生み出す仕事と決まったことを処理する仕事では働き方が違ってきます。決まった仕事であれば「9時から5時まで」といった働き方になります。そして、いつもの仕事では直感が成果を大きくするのです。しかし、新しいものを生み出す仕事はそうはいきません。ひらめきがいつ起きるかわからないからです。そして、ひらめきが必要な価値の高い仕事が中心になと、1日24時間をマネジメントする必要が出てくるのです。

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