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恵方巻なんて節分に何の関係もない

恵方巻は某コンビニから1990年代初頭に始めたれた節分に関連させた歳時商品だという。いろいろと、いや大正時代から、いや戦国時代から・・という言説もあるが、証拠となる文献もなく、さても「江戸しぐさ」的な現代人の空想した「存在しない歴史」の習慣だろう。

明確に分かるのは「節分」の陰陽五行の呪術的な風習として、太巻きを食べる行いの意味に、全く根拠がないことだ。
「節分」は冬から新春への境目の日である。陰陽五行でいえば、冬の「水気」から、春の「木気」への移り変わりの儀式を行う日である。吉野裕子の研究によると、平安時代には土で作った牛の像を家の門から引き出すという行事が行われていたようだ。牛は干支でいえば「亥・子・丑」の冬に属する最後の動物で、これを家から追い出して春を迎えたのだ。
 牛には角があるが、角があるものは鬼を象徴する。節分で言った豆を投げて鬼を追い出す行事は、牛の像に代わって現代まで受け継がれている。

 また陰陽五行では、春の「木気」は、「金気」によって剋され、傷つけられてしまう(金剋木)。よって春を迎えるために「金気」のものを痛めて弱めることが「節分」には行われたのだ。豆は白く硬く「金気」のものとされる。その豆を火で炒って(火剋金)弱め、それを地面に投げつけて踏んで剋した行事が、鬼を追い出すことに結びついたものが「豆まき」に変容していった、と考えられる。
 
 今では都市部ではあまり見ることもないが、かつては節分にヒイラギでイワシの頭を突き刺したものを飾る家も多かった。ヒイラギは柊と書く「冬」と「木気」を橋渡しする常緑植物で古来から魔除けとして使われている。イワシやボラなどの魚でウロコ(木気)のあるキラキラしたものは「金気」、そして木気でもある便利な呪術物だ。
 「金気」の魚の頭(ウロコ(木気)を取り除いたもの)を冬の相を持つ力の強い「木気」で痛めつけることで、春を邪魔する「金気」を弱めたのだ。

古来、中国では節分の日に「金気」の動物である「犬」を裂いて街の門に貼り付けていた。日本ではその風習は徐々に廃れて、白い餅で作った「犬形」をまだ寒い屋外にぶら下げるという習慣に代わりながら、近年まで東北地方に残っていた。

で、「恵方巻」であるが、どこに「金気」を剋する「節分」の呪術的意味があるのかね?黒い海苔が「冬」の相だから?いや、それを剋することは「水生木」で、春が生じなくなる。なので、やってはいけないことだと考える。
 
 陰陽五行で説明のつけにくい風習として、晦日蕎麦(年越しそば)が上げられるが、旧暦の年越しの夜に食べるものとして、コンビニの企画担当者は2か月前に食べた蕎麦の代わりに、もっと違うものはないか?ということで「太巻き」を考えたのかもしれない。
 
なので、某コンビニの為に「太巻き」を「節分」に無理して食べることはない。

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