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オリジナル漫画「scope」原作-13

【吹星姉妹篇】VS違法ドラッグ組織(橙)第2話


大きな観覧車をバックに、都会の人工的な風をなびかせ、愛車のバイクに2人乗りしながら、会話をしている。 < ブロロロロぉ~ >

ここ 「 …やっとだね。 」

もも 「 そだね。 いつでも思い出すんだ、あの優しかったママの顔をさ。 ビンボーだけど、誰よりも幸せだった。 …それを、メチャクチャにしやがって 」

ここ 「 うん。ウチらが一番大切にしているものを… 遊び半分で奪ったあいつらは、絶対に許さない。」


しばらくバイクを走らせると、道路標識に「 海景電波塔 第7倉庫 」が現れる。この交差点を左折した数km先に、目的地の倉庫がある模様。

一先ず、近くの公園の駐車場にバイクを停める。母が残した手紙を、改めて見返す2人。そこに記されていたのは、2人が物心つく前に離婚した父親の事、その父と共に“ある研究所”で母も働いていた事、そしてインターネットの深部に存在する闇の組織の事。

また、自身がまるで闇の組織に殺害される事を予期していたかのような、2人の今後の身の振り方に関する遺言も残されていた。…そして、最期にはこう記されていた。

母 「 ここ、もも。 …ずっと黙っていてごめんね。 私は、あなたたちの本当の母親では無いの。 でも…  」

静かに涙を流しながら、手紙を大事に懐にしまう、“ここ”。隣で同じように涙を流す、もも。改めて大好きだった母との思い出を胸に、闇への復讐を誓う2人。 と、次の瞬間には 近くのコンビニに立寄り、チュッパチャップス(棒付きキャンディー)を咥えながら出て来る。 …足も早いし、心の切り替えも異常に早い。。

ここ 「 <レロレロ> ぶっちゃけさぁ、けっこうヤバくね? これからウチらが行くとこ。 」

もも 「 <レロレロ> なに? 龍國マフィアって、映画の世界じゃん。 絶対ヤバいっしょ? 」

ここ 「 だよねー じゃさ、行先変更してクラブでも行かね?w 」

もも 「 いこいこ! …これが片付いたらね! 」

感傷に浸るぐらいなら、地方の秘湯に浸かりたい、さっぱりとした性格の2人。 以心伝心で、まだ見ぬ闇への恐怖をかき消すように、敢えて元気に振る舞っている。しばし、空元気を丸めてドッジボールをしているうちに、いよいよ取引の時間が迫って来る。

もも 「 そろそろ時間だよー 行こうぜぃ! 」

ここ 「 おぅ 行くか! …やっとこいつの本領発揮する時が来たかな。 」

バイクに積まれている、大きな布に包まれた2つの秘密兵器。 互いの心に、怯える鼓動と勇気のウインカーを交互に灯し、「海景電波塔 第7倉庫」方向へとバイクのハンドルを切った。

< ブロロロロぉ~ >

しばらく進むと、大きな倉庫が目の前に現れた。電波塔を中心に、円形に8個点在する7番目の巨大な倉庫。少し距離を取った物陰にバイクを停め、周囲を警戒しながら、倉庫へと近づいて行く2人。

< ドドンッ > そびえ立つ巨大な倉庫を見上げる2人。正面の大きな扉が僅かに開いている。物陰に身を隠し、再度周囲を警戒する。

もも 「 時間早かったかなぁ 何か人の気配全然しなくね? 」

ここ 「 …うん、もう少し近づいてみっか。 」


抜き足、差し足、以臓足。 息を凝らしながら、正面扉へと近づいて行く。扉の前に到着すると扉に背を付け、中の様子をうかがう2人。

倉庫内 「 ………………………。」

もも 「 真っ暗だね。 やっぱ誰も居ないみたい。 ちょっと入ってみようか? 」

僅かに開いている扉の隙間から、身体を斜めにしながら入って行く。

ここ 「 ちょっと待ってて、ウチも行くよ。 」

倉庫へと入って行く“もも”を後ろから見ている、“ここ”。“もも”が暗い倉庫へとスッと入って行き、姿が消える。

< ドゴっ >

“もも”が倉庫へと入った瞬間に、鈍い音が倉庫内に鳴り響いた。< ビカビカビカ > 倉庫内の電灯が一斉に点灯する。

ここ 「  <!?> ももーーーー!! 」

扉を入ってすぐの場所に、“もも”がうつ伏せの状態で倒れており、地面には生々しい血が流れている。 急いで“もも”へと駆け寄ろうとする、“ここ”。さそれを完全に遮るように、とっさに黒い影が割って入った。

特殊警棒を持った大柄の男だ。

男 「 クックク。まともに後頭部に入ったなぁ、お気の毒に。それにしても、ノコノコと時間通りに来るとは甘い奴らだぜ。 」

ここ 「 …どういうこと?? 何だよ、これ! 罠じゃんよー! じょ、情報屋のヤロー!! 」

倉庫内の奥を見渡すと、闇の組織を彷彿とさせるスーツ姿の男たちが、各々武器を持ち、ニヤニヤしながらたむろしている。

ここ 「 ノヤロー! “もも”から離れろよ!! 」

多勢に無勢だが、お構いなしに特殊警棒を持つ男に突っ込んで行く、“ここ”。

男 「 …おいおい、本当にバカなのか? これが、どんな状況かも分からねぇのか? 随分と舐められたもんだぜ! 」
“ここ”に向かって、警棒を振るう。< シュッ >

元大翔ホネールズの助っ人外国人である「ポンス」のスイングスピードぐらいの速さでグィングィン振り回される警棒を、ひょいひょいと身軽にかわす、“ここ”。しゃがんでジャンプする反動で、男のみぞおちに肘打ちをかます。<ドゴッ>

男 「 うぐっ 」

まともに食らい、たまらず膝を付く男。<ガッ> 間髪入れず、まるで猛禽類のように、男にアイアンクローをキメる “ここ”。目がぶっ飛んでいる。

ここ 「 あ? 闇の人間ってさぁ、この程度なの? 履歴書の特技欄に“不意打ち”って書いてんのか? ダサっ 」握っている手に力を込める。<グッ>

男 「  < メキッ > やめっ うぎゃぁぁぁあああ 」

足をバタバタさせ、もがき苦しむ男。 ミシミシと、骨がきしむ音がする。

< バキューン! >

またも不意打ちだ。突如発砲された弾丸が、“ここ”の華奢な肩口をかすめた。ぽたぽたと血が滴り落ちる。

謎の男 「 お遊びはもう終わりにしようか? お嬢ちゃん。あんま、こっちの世界を舐めてもらっちゃ困るもんでね。」
< スチャっ 拳銃を構える >

ここ 「 おぅ マジかぁ 拳銃じゃん… てか、そんな簡単に普通撃つ?( ももを抱えて一旦退散って感じだよね。 ) 」

謎の男 「 素人が、何をコソコソと探り回ってるんだ? 不正アクセス? …もうちょっと、うまい事やらないとなぁ 全て筒抜けだ、バカが。 」

情報屋が、ハッキングにて違法ドラッグ関連の闇サイトから情報を収集していたことが、違法ドラッグ系闇組織(橙)には全てバレていた。

ここ 「 !? …あいつっ! ホント役に立たないじゃんよ。。マジでボコって契約解消してやる! 」

謎の男 「 理由はどうあれ、聞く耳持って無いんでねぇ。そろそろ消えるか? …触れてはならない領域に首を突っ込んだ自分を悔やむんだな。」

< バキュンバキュン!! >

容赦無く発砲してくる謎の男。放たれた弾丸が、“ここ”の太もも辺りをかすめる。 < ビシュッ >

ここ 「 痛っ! “アレ”をバイクに置いて来ちゃったからなぁ。反撃できないじゃん… 」

< ムクッ >

突如蘇生し、力を振り絞って起き上がった“もも”が、“ここ”を扉の外へ放り投げる。< ブンッ >

もも 「 ア、アタシは、いいからさ。 …あいつシバくついでに応援呼んできてよー ね? ニコッ 」

男から取り上げた特殊警棒を構えると、扉を閉めて施錠してしまった。

ここ 「 …おいっ!何勝手なことしてんだよー!! …ももぉ! 」

< ダンダン!ガチャガチャ > 押すも叩くも、閉ざされた扉が開くことは無い。

< ザッ ザッ ザッ > 静かだった倉庫の外から、大勢の人間が迫って来る気配を感じる。密かに外で待機をしていた、闇の組織の人間のようだ。

ここ 「 クッ こんなところで捕まっちゃったら、ももの覚悟を台無しにしちゃう。 」

玉砕してでも、“もも”を助けに行きたい気持ちをグッと抑える、“ここ”。タイミングを見図り、外にいた男たちを蹴散らして、その場を退散した。<ブロロロロぉ~> あふれ出る、悔しい味のする涙をぬぐい、がむしゃらにバイクを走らせる。

< ピピっ > しばらくして現れた中華街中心地にある、ネットカフェに入った途端、情報屋のアカウントから1通のビデオメッセージが届いた。

ここ 「 はぁ はぁ はぁ …こいつ! いい加減にしろー!!! ももが捕まっちゃったじゃんかよ!! 」

怒りのままに、ビデオメッセージを開封する。< ジ・ジジッ > 深々とパーカーを被ったいつもの情報屋が、一瞬映るや否や、別の映像に切り替わる。

< !? >

謎の男 「 これはこれは、先程はどうも。最近、売人を狙って情報収集している輩がいるようでさぁ。こっちも商売を邪魔される訳には行かないんでねぇ 」

ここ 「 いつもの“あいつ”のアカウントだけど …情報屋じゃ無い? まさか、乗っ取り!? 」

謎の男 「 ハッキングを繰り返す不正アカウントを割り出しておびき出してみたら… まさかお前らの母親があいつだったとはなぁ。傑作だ、クックク。まぁ 安心しろ、一先ず妹は預かっている。助けたければ、“秘密兵器”を持って、1人で第4倉庫まで来い。少しでも言う事を守らない場合、お前らの大好きだった母親のように、どっぷりとドラッグ漬けにした後に、新薬の実験台になってもらうぞ、ハッハハハ 」


ここ 「  …たぞ。 …
<ブチッ> やっと、やっと 見つけたぞ!! 」

<入り組んだ全ての感情が復讐へと姿を変え、大きく膨み、そして破裂した >

尚もビデメッセージは続く。

謎の男 「 おい! こっちに来い! 何か話してみろ、どうだ? 泣き叫ぶか? クックク 」

後ろ手に縛られ、額から血を流す“もも”が、動画に映し出された。

もも 「  …聞いた? んじゃさ、早く来てー …あ、暴れたくて、ドオニカナリソウ 」 
“ここ”同様に恐怖心は消え、復讐への強い気持ちが爆発しそうな、“もも”。

謎の男 「 何だ?それ。もっと助けを求めて泣き叫ぶもんだろー!!おい、連れてけ! < “もも”を蹴り飛ばし、部下たちが裏へと連れて行く。> <カメラ目線にて語る> 用件は以上だ。 くれぐれも約束は破るなよ。妹がどうなっても知らんからな。ハッハハハ 」

< ジ・ジジッ プスン >

ここ 「 もも… 待ってて、すぐ行く 」



【 --- 場面転換して、情報屋サイド --- 】


後ろに立っている謎の影に、何やら指示を受けて動いている情報屋らしき人物。 …これでいいのかよ、変態ヤロー。闇サイトから“ここ”宛てに送られて来たビデオメッセージをハッキングして、同タイミングで見ている模様。

謎の影 「 …よしっ、行くか 」

情報屋 「 よしっ じゃねーよ! お前なぁー こんな危険な囮捜査なんてあってたまるかよ! “ももち”に何かあったら許さねぇからな!! 」



【 --- 回想 --- 】

以臓らとの共闘によって、人身売買系闇組織(赫)を壊滅した条一狼。激しい戦闘による休息とさらなる情報収集のため、一旦自宅へと戻って来た。

情報屋 「 で、どうだったよ? 成果はあったのかよ?」

条 「 あぁ、大ありだ。組織の一つを壊滅させて来たぜ。 へっへ」

情報屋 「 …そうか、そうか、壊滅させたか。!?  ホントか! やりやがったな! 条!! 」

条 「 まぁな。 …だが、オレの復讐が終わった訳じゃねぇ。もっと深い闇に突っ込んだ情報が必要だ。誰か凄腕の情報屋はいねぇのか? 」

情報屋「 ”DOS”にでも潜り込むつもりか?オレが出来ればいいんだが力不足だな… フンッ 1人いるぜ、すこぶる腕の立つ情報屋がよ。 」

現在神出鬼没に現れては闇へのハッキングを繰り返す、天才ハッカー集団、通称 「ケツアゴデス」 政府や大企業、そして闇の巣窟、Out of Scope=インビジブルにまで、サーバーへの不正アクセスやデータ改ざんを繰り返すが、決して足跡を残す事が無い、正体不明のハッカー集団だ。

情報屋 「 “ケツアゴデス”って知ってるか? …ありゃオレの孫だ。」

条 「   !?  あぁ もちろん知ってるが …はぁ?おっさんの孫なのか!? 」

情報屋 「そうだ。 内緒にしといてくれよ、お前だから言ったんだ。ちょっと連絡取ってみる。 」

条 「 口約束で、内緒にしといてくれってレベルの話じゃねぇけどな… 中々やるじゃねーか! おっさん ハハハ 」

天才ハッカー集団 「ケツアゴデス」。実は情報屋の孫がメンバーであった。世界的に有名な神出鬼没のハッカー集団が、こんな超至近距離の死角=Out of Scopeに存在するとは、予期不能な“闇”を追う条にとって、皮肉なものである。しばらくすると、今近くにいるとの連絡が入り、早速その孫に会いに行くことに。

< ガチャ > 待ち合わせ場所に指定された、高級ホテルの一室のドアを開ける。 そこにいたのは…

条&孫 「 おっ & あっ!」

どこかで見た顔 …何と、人身売買の調査で赴いた、漁業都市でばったり遭遇した、高性能のノートPCを携えた、あの青年であった。

条 「 やっぱ悪いヤツだったか、お前。 」
< コミカルな昆虫のように、内股になり、そそくさと その場を足早に立ち去る姿を思い出す。 >

情報屋 「 なんだ お前ら、知り合いじゃったのか?? おう 元気にしとるようだな、瞬斗。 」

瞬斗 「 ジィちゃん、1人じゃ無かったのかよぉ。誰か連れて来るなら先に言っといてくんねぇとさぁ。場合によっちゃ仮面とか被る必要あるじゃん?オレ 」


入来 瞬斗< イリキ シュント >
 現在、条一狼とコンビを組んでいる情報屋=古太郎の孫で、天才ハッカー集団 「ケツアゴデス」のメンバー。入来家は、代々 闇を専門とする情報屋の家系である。 祖父古太郎はかつて凄腕の情報屋だったが、インターネットの普及により 世の流れに付いて行けず、一線から退く事に。

元々、古太郎と条一狼は、古太郎が、父:豹尾のパートナーだった事から知り合った。 幼くして両親と死別した瞬斗を引き取り、育ててきた古太郎だが、瞬斗に両親の死亡状況を聞かれても話を逸らすだけで、決して真相は教えてくれない。一筋縄ではいかない、謎多き家系である。

古太郎 「 そりゃ スマンかったな。 こいつは条、大噛条一狼だ。 理由あって、闇組織の情報を収集している、今のビジネスパートナーだ。 」

瞬斗 「 闇組織の情報収集だって?…なるほどぉ、あそこにいた理由も分かったわ。 人身売買だろ? 」

条 「 あぁ そうだ、ちなみにその組織は、壊滅させて来た。」

瞬斗 「  …は? ウソだろ? 素人が闇の組織にちょっかいを出すなんて… しかも壊滅!? あんたヤバいな。やっぱ頭おかしいわ。」

条 「 そんな事はどうでもいい、オレにはまだやらねばならない事があるのだが… DOSの情報が欲しい、行けるか?」

瞬斗 「 DOS? んな事は、日常茶飯事だよ。もっと深いところまで行けなくもないぜ。ニヤっ それより、こっち手伝ってくんねーかな。 」

古太郎 「 お前、そんな簡単に… さすがワシの孫じゃ。 」

条 「 へへっ やるねぇ、こりゃ頼もしいわ。で、手伝うってのは? 」

瞬斗 「 マッチングアプリで知り合ったパートナーが今調査してんだけどさぁ、危ない目に遭わせたくないのよねぇ。調査内容は、違法ドラッグ絡み。 」


( つづく )



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