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オリジナル漫画「scope」原作-12

【吹星姉妹篇】VS違法ドラッグ組織(橙)第1話


――― お化けトンネルの出口付近で騒いでいる以臓ら3人の様子を、遠くの小高い丘の上から見ている、2つの人影。< 小型の双眼鏡を覗き込んでいる >

< ピピッ! >

情報屋から最新の通信が入り、狙撃を中止して、求めていた真の目的地に向かう事を決める、謎の影A、B。
姉 「 吹星<フカボシ>ここ 」 と 妹 「 吹星<フカボシ>もも 」 の双子の姉妹だ。 ここは服飾アーティスト志望、ももはヘアメイクアップアーティスト志望の学生で、共にオシャレに敏感。一見、やんちゃなイメージだが、人情に厚く弱者の面倒見が良い。彼女らもまた闇の組織の被害者で、復讐のために人生を費やしている。


【 --- 回想 --- 】 ※ここ、ももの小学校時代


ここ 「 やばい やばい! また遅刻じゃんよ~ あぁ 今日も朝ごはんが… 」

もも 「 何でいつもギリギリになるんだよぉ~ ウチら成長しないねぇー 」

母 「 全く、毎朝慌ただしいわねぇ… ここー!ももー!車には、気を付けるんだよ、いってらっしゃい! 」

ここ&もも 「 は~い いってきまーす! 」

ここ、ももが物心つく前に離婚をし、女手一つで姉妹を育てて来た吹星(母)。 生活するのに精いっぱいで、贅沢があまり出来ない貧しい家庭環境だったが、親子3人は非常に仲が良く、楽しい日々を過ごしていた。母はいつも優しく、ここ、もものために自身の楽しみを全て絶ってまで、生計を立てていた。

そんなある日、闇の組織に精通している母親の同級生から甘い誘いがあり、まんまとハメられ、多額の借金を背負ってしまう。 借金返済のため、あらゆる仕事を掛持ちして奮闘する母。働けど働けど利子の返済が精一杯で、徐々に精神が闇へと墜ちて行く…。
ある日、判断能力も低下し、出来心から心の闇に付け込んで近づいて来たドラッグの売人から違法ドラッグを購入してしまう。ドラッグは一瞬で嫌なことを忘れさせてくれる。 …しかし、それは身体を蝕む事の代償で得られる、ほんのひと時の「まやかし」。損得のバランスが崩壊した、悪魔への魂の売買契約に似ている。追い込まれた母は、さらなるドラッグ欲しさに売人への借金も重ねてしまう。
責任感と言う太いバネの反動が引き起こす、想像を絶する負の連鎖。いつものように優しいが、日々やつれ目つきもおかしくなっている母を心配する、吹星姉妹。しかし、まだ子供であったため、姉妹は心配する事以外、何もする事が出来なかった。 責任感の強い母には、その娘たちからの心配も、逆効果になっていた。

母 「 心配しないで。 わたしが、わたしが守ってあげるから… うっ うわぁぁあああ 」< 末期の禁断症状で、自我を保つのにギリギリの状態 >

ある日、とうとう精神が崩壊し半狂乱となった母は、違法ドラッグ欲しさに誤って売人を強殺してしまう。 闇界隈の情報伝播は異常に早く、すぐに組織にバレ、捕まってしまうのであった。

違法ドラッグ企業(橙)「 奥さぁん、一般人が殺しはダメでしょう。 …そんなに薬が欲しければくれてやるよ! クック 」<謎のドラッグを大量に注入される >

危険がゆえに国から認可されていない違法ドラッグを、実験がてら大量に注入されてしまい、もがき苦し母。…爪は逆側に反り返り、毛髪は抜け落ち… やがて身体が深緑色に変色して、絶命してしまった。

しばらくの間、施設に保護されていた姉妹に訃報が入る。…母親の変わり果てた姿を見た吹星姉妹は発狂し、絶望に暮れる。
深い悲しみを背負ってギリギリ生きていたが、ある日残された母の手紙をみつけ、真実を知る事に。ある事実を知った姉妹は互いに手を取り合い、闇への復讐を誓うのだった。


【 --- 場面転換して、チャイナタウンへ --- 】


巷で悪い噂が絶えない 「チャイナタウン」 通称“デュラ・チャイナ”。表向きは高層ビルが立ち並ぶ近代的な街で、流行りの飲食店も密集しており、家賃こそ高額だが、住みたい街ランキングで常に上位に位置する人気の街だ。その中でも特に、老若男女幅広い層に人気の中華街と、国内No.1の高さを誇る、電波塔が有名。

その裏で、ある時期を境に、闇サイトを介した違法ドラッグの取引が加速的に急増していた。その危険性とは裏原に、誰でも気軽に取引が出来てしまう簡便性から、街のごろつきだけでなく、大人しそうなサラリーマンから大学生、さらには、主婦にまで購入層の裾野が広がって来ていた。

情報屋マッチングアプリにて知り合った男から、デュラ・チャイナにて蔓延している黒い噂に闇組織(橙)が関わっている情報を得て、本地に着いた吹星姉妹。2人乗りして来た、ベスパのようなオシャレなバイクからを降りる。 < ブロロロロぉ~ >

もも 「 ……って、なに なに なにぃ~ めっちゃ栄えてて、ヤバいんだけどぉ! どの店から行く? ここ。 」

ここ 「 取りあえずさぁ、どっか適当に店入らん? そこで決めれば良くね? おぉ!良さげな店ばっかで迷っちゃうね。」

街に繰り出す吹星姉妹だが、地元のさびれた村とは違い、最先端の情報がふんだんに盛り込まれたオシャレな街に、二人ともかなりテンションが上がっている。また、中心街に大きく広がる中華街は、その規模の大きさから、世界的に有名なグルメスポットでもある。

ここ 「 へぇ~ これが中華街ってヤツね。 なんか外国って感じー。どこもかしこも、いい匂いだらけじゃん。 」

北京ダックや中華まん、ぎっしりと密集した漢字だらけの縦型のネオン板。 裏にはちょっと古びた怪しげなビル。 見渡す限りが異国情緒あふれるTHE繁華街だ。数百件が連なる中華料理店街を歩いていると、ひときわ目立つ長打の行列の先に、大きな中華料理店が見えて来た。

「 名菜・趙飯店 」

まるで要塞のような、三階建ての大きな店構え。 頻繁にTVの取材が入るような超人気店だ。

もも  「 ねぇねぇ このお店なんか見た事あるよねぇ? せっかくだから入ってみない? 」

ここ 「 いいじゃん! いこいこー 」

行列の最後尾へと並び、フライングボードに映るメニューを見ながら、キャッキャとはしゃいでいる。 …まずは“表のチャイナタウン”を存分に体感するようだ。席数が多いからか、長蛇の列ではあったが、思ったよりも早く案内され入店する、吹星姉妹。

< ボウッ! > 中央に位置した360度ガラス張りのライブキッチンにて、鍋から特大の炎が上がる。「オォー」 自席で目を輝かせながら鑑賞している来店客たち。すると、徐に床が開き、筋肉粒々の大柄な男がせり上がって来て、3mはあろう肉の塊を上空に放り投げ、特大の肉切り包丁でズバズバとスライスしていく。

< パチパチパチ~ > 店内に湧き上がる拍手の嵐。料理の美味しさに加え、エンタメ要素の強い、圧倒的なパフォーマンスも人気店の所以と言えるのだろう。

もも 「 エグッ あのおっさんヤバっ笑 」

ここ 「 だね笑  あー料理が楽しみだなぁー 」

個室へと案内された姉妹は、メニューに書かれた趙の主張のクセが強すぎる事もあり、せっかくだからと、豪華な中華フルコース(趙スペシャル)をオーダーする。

< コンコン ガラガラガラ~ > ノックと共に、個室の扉が開く。

店員 「 本日は趙スペシャルのご注文、誠にありがとうございます。 さっ ご一緒に  … うぅ~ん、趙!」
掛け声と共にコースメニューが次々と円卓へ運ばれてくる。

ここ、もも 「 ……………………。」 ( 何?その掛け声。。 )

さも当たり前のように促される 「 趙!」 コールは、この店恒例の掛け声らしい。本当はオーダーしたいのに、これをやるのがイヤで注文を避ける人もいるようだ。

もも 「 そう言うのはイイから… にしても、うわぁ~ スゴッ うまそー 」

ここ 「 これはヤバいね! 来て良かったかも。 ほらっ テーブルくるくる回るじゃん! 」

遊園地の“コーヒーカップ”を操作するように、ぐるぐるテーブルを回してはしゃぐ姉妹。ひとしきり回して飽きた2人は、次々と運ばれて来る豪華な中華料理を堪能する事に。どの料理も美味しいのだが、 時々運ばれて来る、見た目が完全にフランス料理のような“何か”が格別に美味しい。「趙スペシャル」が看板メニューとなっているのは、このフランス料理のような“何か”が美味過ぎるからなんじゃないか?と、疑うぐらいの完成度の高さである。
しばらく料理を堪能し、コース料理も終盤を迎えた時に、個室扉を叩くノックが鳴った。

< コンコン ガラガラガラ~ > ノックと共に、やたらと巨大な影が入って来た。

大男 「 ご来店、誠にありがとうございますゾネ。当店のオーナーシェフ、趙・砕雀(チョウ サイジャク)と申しますゾナ。 楽しんでいただけてますか?お嬢さんたち。 ニヤっ 」

もも 「 ブッ! さっき肉切ってた筋肉粒々のおっさんじゃん!笑 ってか変な語尾! 」笑って噴出したほうじ茶が、ここの顔面に掛かる。

ここ 「 ちょっ 何してんだよ!もも! …汚ぇなぁー。 てか、“カラコン” ズレたじゃんよー 」カラーコンタクトレンズを取り、ナプキンで顔を拭く、ここ。

趙 「 あら あら、大丈夫ゾナ? …!?  」
“ここ”の顔を見て何かに気付き、一瞬動揺したように見える、趙。

ここ  「 大丈夫、大丈夫ー  てか、肉圧!笑 」
改めて至近距離で見た趙は、通勤ラッシュ時の“肉専用車両”に乗る、肉の塊ようだった。

趙 「 そ、そうですか? 良かったゾナ。筋肉?すごいでしょ?<胸筋をピクピク動かす> 元軍隊に所属してたので、身体は今でも鍛えてるゾヨ。お嬢さんたちは、観光か何かですか? 」

もも 「 んー まぁ そんなところかなぁ …ホントは、人探しって感じだけど。 」

趙 「 そうなんですね? この街は色々観るところも多いので、是非ゆっくりしていってくださいゾネ。 探し人が見つかりますように。 」

ここ 「 んじゃ、ウチらも、そろそろ行こっか? あぁ 満腹じゃ。 」

もも 「 そだね。まだ並んでいる人も多いし、出よっ。 食った食った、世は満足じゃ。 」 < 満足な表情で、退店して行く2人。 >

趙 「 ありがとうございました。またのご来店お待ちしておりますゾナ。 」笑顔で2人を見送った後、感慨深い顔をする趙であった。

「名菜・趙飯店」 にて、たらふく中華(※一部フランス料理)を堪能した2人は、一旦宿泊予定のホテルへと向かう。

ここ 「 やっぱ都会の店は楽しいねぇ~ あっ すっかり作戦会議忘れちゃったじゃん。」

もも 「 うん、美味過ぎて完全に忘れたね。肉の壁もいて話せなかったし、ホテル行って会議しようぜ。 」

ホテルにチェックインをし、部屋に入る2人。テーブルの上に薄型タブレットを置き、闇サイトへのアクセスに試みる。

ここ 「 この裏掲示板でイイんだよね? …そう言えば、あいつシバかないと。 」

母の復讐を遂げるべく、独自調査をしていた2人だが、ある日、闇に詳しい「情報屋」の存在を知った。この情報屋もグレーな立ち位置だが、豊富な情報量を武器に、あらゆる取引にて生計を立てている輩だ。 当然インターネットの深部に存在する、インビジブル(Out of Scope)領域にも侵入するような、素人では中々難しいとされる、いわゆるハッカーである。

この情報屋と依頼者とを繋ぐ「闇のマッチングアプリ」も存在し、吹星姉妹はこのアプリを経由して、ある情報屋と契約しているのであった。”あいつ”とは、その情報屋の事である。

もも 「 そだね、確かこの裏掲示板で合ってるよ。 まぁ あいつは後回しにして、まずは作戦決めないと、夜になっちゃう。 」

ここ 「 おけ。 えーと、どれがビンゴかなぁ 」

ところどころ当事者のみが分かり得る隠語を使用して、非合法の取引を斡旋している闇の掲示板だ。

もも 「 んー あっ! これじゃね? 絶対これだろ!」

ここ 「 よしよし、じゃ 今夜〇〇時に、〇g 購入希望と。頼むぞ~ 釣れろよ~ 」

違法ドラッグの購入者のフリをして、掲示板に希望を投稿する。

< ピピっ > しばらくして、返信が来た。

ここ 「 よーし! 釣れたゼ! なになに? 取引場所は、廃ボーリング場の裏ね。 ヒッヒヒ 」

もも 「 やったね! さっ準備準備 」

パーカーコートに身を包んだ2人が、夜の街へと繰り出す。昼の顔=最先端の情報が行き交うオシャレな街とは、また印象が変わって見える、夜の繁華街。依然、活気に溢れているが、怪しさも倍に膨れ上がっているように見える。 ビルの屋上から、取引場所を確認する、もも。<小型の双眼鏡を覗き込んでいる>

もも 「 う~ん、まだ来てないみたい。 いざとなったら、ぶっ放すから安心して。 」<TSで、現場近くにいる’ここ”に通信する。>

ここ 「 おけ。 さて、どうやって捕らえるかなぁ~ うーん。 」

約束の時間から2分程が過ぎた頃、周囲を警戒しつつ、売人らしき人物がその姿を現した。キャップを深々と被り、タバコをふかしながら、壁にもたれかかっている。こちらも細心の注意を払いながら、“ここ”が売人へと近づいて行く。 < トコトコトコ >

ここ 「 ( ぼそぼそ )…く、薬、ありますか? 」

かすかに聞こえるような小さい声で売人に声を掛ける。

売人 「 え?…なんて? 薬? あるよ、あんたが購入者か。 」

ここ 「 …薬ホントにあるの? …ホントに? < ニタァ > バカに付ける方の薬、あんのー? 」< ガツっ と売人のノドボトケ辺りを掴む、ここ >

売人 「  グッ なんだ!? やめろ…  うぐぅ… 」

“ここ”の手を振り解こうとしても、がっちり握られた手が硯のように硬く、ピクリとも動かない。 窒息にて意識が遠のいて来る。

ここ 「 3 ・ 2 ・ 1 …ゼロ。 もうイイかな? ウチねぇ、握力強い方なんだー で、一回掴んだら離さないよ 」常人では無い握力を魅せ付ける。

泡を吹いて失神している売人。 “もも”がいるビルの屋上に向けて、全身を使ったジェスチャーで 「OK」 を必死に表現している、“ここ”。

もも 「 KO?? あっ うまくいったみたいね。にしても、正面からノドボトケ掴むって… クライマックスの悪の帝王の所業じゃん…  」

取引現場である、廃ボーリング場裏に合流した“もも”。 “ここ”と2人で何やら画策している模様。 まず、身動きが取れないように、売人をロープでキツく縛り上げる。

もも 「 おーい、そろそろ 起きろー 」

微炭酸のピンクグレープフルーツドリンクを売人の顔にボトボト掛ける。

売人 「 …ブハっ! 心地良い刺激っ! って、なに?? 」

微炭酸の刺激がちょうどよく、気持ち良く目を覚ます、売人。

ここ 「 あんたさぁー この仕事、誰から受けてんの? 上の人間教えてくんない? 」

売人 「 上の人間?そんなの知らねぇよ。 SNSで闇バイトに登録しただけだ。全て遠隔からの指示だから誰にも顔を合わすことなんてねぇよ。」

ここ 「 闇バイト? かぁー こいつ、下っ端中の下っ端だわ。ももぉ~ 残念だけど、ハズレ… 」

もも 「 ホントに知らないの? …ウソついてると、こうなるよ 」

転がっていた古いボーリング球に指を入れ、そのまま粉々に握り潰す。<バギ!>

売人 「 ヒー!? …お、お前ら何なんだよ。。バケモンか。ホントに何も知らねぇーよ…。 」 あまりの恐怖で失禁する売人。

ここ 「 ダサっ …やっぱ ハズレだわ。 こいつみたいな、何も知らない下っ端の売人は、ごまんといるっぽいね。こりゃ骨が折れるぜ。 」

もも 「 うげぇ。こんなうじ虫みたいなの、ひとりひとり潰していかないといけないの?? …しゃあないか、次いこ次! 」

< ピピっ > ホテルに戻る途中で、2人のスマホに情報屋から最新の有力な情報が入る。

ここ&もも  「 おっ これは! 」
< スマホ画面を見つめ、液晶に照らされた表情が、いつになく明るい >

情報屋から送られて来た最新ネタによると、これから約2時間後に「海景電波塔 第7倉庫」にて、違法ドラッグ系闇組織(橙)が龍國マフィアとドラッグの取引をする、という内容のものであった。 かなり危険な匂いがするが、違法ドラッグ系闇組織(橙)の手掛かりを得るには、またと無い絶好の機会と言える。顔を見合わせ、互いにうなずく2人。 その表情に迷いは無い。


( つづく )



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