見出し画像

幻影をなぞって

2月になるたび、毎年吸い寄せられるようにこの曲へと帰ってくる。




あなたはthe cabsをご存知だろうか。
いまは活動していない、8年前に解散しているバンドだ。


この曲と、このバンドに出会ってから4回目の2月が来た。はじめは遠く離れた親友からの勧めだった。

the cabsわかる?めっちゃハマってるんだよね、SNSで繋がったその子はいろんな音楽を知っていて、お互いにいろんなアーティストを勧め合っていた。そんな彼女とももう今年で5年の付き合いである。

KEYTALKを好きだったわたしはもちろん名前は聞いたことがあった。認識はボーカルの義勝さんがやっていたバンドだったこと。軽い気持ちで聴いたことを覚えている。

YouTubeでとりあえずMVを探した。曲に限らず新しい何かを見聞きする時は再生回数がいちばん多い動画ではなく、なんとなく2番目3番目を選んでしまう癖はここからきたのかもしれない。その時は最初に『anschluss』を聞いた。


衝撃だった。なにからなにまで。
純文学を読んでいるかのように並んでいる詞のことばたち、短い映画を見ているようなMV。そして楽器隊と歌声のバランスが絶妙だった。


ぜんぶが脆くて儚くて、初めて、音楽を聴いて美しいと思った。


そこからするするthe cabsの音楽に魅了されていった。近くのCDショップにはなかったCDもすぐ通販を駆使して買ったし、歌詞カードに書かれていることばたちや短編の物語を読んで胸を打たれたりした。國光さんのブログだって全部読み漁って、ひとつの生きる糧にしていた。謎にヨーロッパに詳しくなって映画もたくさん見たのも。そして、生きていきましょうというリプライの返信はいまだに励まされ続けている。


好きとか愛してるとか、そういう言葉だけで片付けられないほどたくさんの新しい世界を教えてくれた。
救いを求めるように彼らの音楽を手繰り寄せて、求めて、たしかにわたしの中の宗教だった。

一時期よりは落ち着いたが、言葉にできないどうしようもない気分になったりすると最後の綱として定期的に彼らの曲で埋めている。アルバムを最後まで聴いていると小説を読み終わったような余韻と、とても素敵な作品に触れたような気分にさせてくれるから。


2/27。解散してから8年経つ日。
2月もあと一日で終わるし、春もそこまで来ている。

来年の2月もまた、彼らの音楽に思いを馳せたいと思います。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?