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2019年12月の記事一覧

ライフオブブルー

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 教室の窓から綺麗な夕日と共に吹き込む涼やかな風がカーテンを揺らす。

 「……はぁー」
 俺――風島 清景(かざしま きよかげ)は一段落ついた目の前のプリントや教科書の類から、窓の外の夕日に染まる街に視線を移し、深呼吸の変わりに長めの溜め息を吐いた。
 「む、もう終わったのか?」
 頬杖をつきながら窓の外を眺める俺の対面から声が掛かる。俺は視線をその声の主――対面にいる少女へと戻した。
 

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『主人公交代』

 その空間は微睡みに揺蕩うようだった。
 前後は無く、上も下もない。
 体に感じる重力は無く浮遊するような不思議な感覚だった。
 空間に色は無く、白でも黒でもない。

 ただ、微睡みの中の意識だけはしっかりと不快を感じていた。
 
 少しずつ、自分の意識が自分のモノでなくなっていく感覚。
 耐えがたいほどの不快感。
 体は動かず、意識すらもうまく動かなくなっていく。
 
 この感覚はきっと、死に

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『転校生』

 「あー……、これで……おしまいか……」
 「…………」
 崩れたビルの片隅。
 無言で立つ少年―― 一門京太の目の前の少年は血に塗れていた。
 腹部に太い鉄骨が突き刺さり、とめどなく血が流れ出し続けている。
 もう助からない事を悟っている少年は諦観している。
 京太は意を決したように近づこうとしたが、少年が片手で京太を制止した。
 「――ッ」
 「……やめとけよ。……後悔する……だけだぞ? お前

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『経験値の高い魔物』

 ダンジョンがひしめき、魔物が跋扈する世界。
 人々は剣と魔法を引っ提げて、世界の開拓を目指している。

 茂みの中で息を潜める。
 気配を隠し、魔物の出現を待つ。
 狙っている魔物はただ一種類。
 その魔物こそが、私の伝説の足掛かりになるのだ。

 『金色の鶏』の噂を聞いたのは三日前だった。
 
       ♪ ♪ ♪
 その日、私は遂に念願の冒険者登録を済ませ、冒険者となった。
 ギルドの受

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