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#67 最近よんだもの(17) アレ読んでますか?

 「存在のすべてを」(塩田武士、朝日新聞出版)

 面白かった。とてもよくできた感動的な物語。意地の悪い言い方をすると、「方舟を燃やす」のような、得体のしれない凄みのようなものはない。

 著者は元新聞記者。意図して書いているんだろうけど、ブンヤ稼業のプライドが見え隠れする。いやプライドとは違うな。なんだろな。取材も構成も描写も文句のつけようがないんだろうけど、ブンヤ臭がきつい。これは読み手としての自分の問題なのだが。

 この本を読み終えた翌日、著者と面識のある方とたまたま話す機会があった。許可を得ていないので内容は書きませんが。

 新聞社に入って三十数年、プロの技など使った記憶などない。人に会って話を聞いたり、資料に当たったりするのに必要なのは、技ではない根気だ。


 根気、ありませんよ。悪うございましたね。

 愚痴ってすみません。面白い小説なので、読んでみてください。


 「絶望からの新聞論」(南彰、地平社)

 著者は塩田さんと同い年の現役新聞記者。市民社会の成熟のために、健全なジャーナリズムが紙媒体である必要はないだろうけど、ネットでの独立性の確立は困難という気がしている。あまり詳細な感想は書かないけれど、世の中大変な事態になっている。何を信じてどうふるまうか。「方舟を燃やす」と密接にリンクしてくる。ファクトチェック、大変だよね。

 「新たな戦前」を生きる独立不羈のジャーナリストにとって、過酷な時代なのだなあ、と認識を新たにする。踏ん張りどころである。

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