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#49 百鬼堂農園(2) 過剰融資契約

 「農業ほど知的な仕事はない。辞意表明をした静岡県の川勝知事は農業をやったことがないのだろう」との意見を、紙上で森永卓郎さんが開陳していた。なるほど、森永氏や伊藤翁の挑戦の記録を読めば、まさに農業とはそんなものという気がしてくる。

 妻はあまり私のやることに反対しない。おそらく夫のやることに興味がない。今回の市民農園契約プランを相談したところ、開口一番「私は絶対に手伝わない」と宣言し、その上で「でもやってみたら?」とのことだった。いつの間にか夫が畑をほったらかし、いつの間にか妻がその世話をしている、というのは絶対に嫌、とのことだった。納得。そういえばペットを飼いたいとなんとなく話したときも、似た反応だった。

 ベランダのプランターで花を育てるのが好きな妻は、野菜を育てること自体には興味はあるようで、水はどうの、育てるのが簡単な野菜はどうの、とあれこれ調べている。直前に差し迫った申し込みは、抽選もその場で行うため、直接会場に出向かなくてはならない。その日は私は仕事で妻は休日だった。意外なことに、妻が行ってくれるという。

 どうする。やるのか?かなり悩んで、妻に行ってもらうことにした。無理なら1年で契約をやめればいい。そもそも抽選に当たるか分からないし。いろいろな規則や条件があり、それを妻は会場からLINEで伝えてくれた。最終的な意志を問われ、申し込みを希望した。しばらくしたら「借りました」と通知がきた。3区画に3人の希望があり、抽選にならなかったという。

 別地域の農園では10坪契約があったが、うちの近くの農園は20坪(66.11570㎡)の区画しか選択肢がない。もっと狭くてもよかったのだが。半分でいいのに希望の倍近くを貸し付けるというのは、過剰融資ではないのか。・・・違いますね、全然。

 ああ、借りてしまった。やるしかねえ。いやまあ無理ならほったらかしてもいいか。でもマナーとして、雑草だらけにして隣の区画に迷惑かけたらいかんらしい。やっぱり、やるしかない。年4,000円と、比較的安いのが救い。無理せず、やれるだけやろう。

 広大な敷地にネギが1本だけ屹立していたっていいのだ。

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