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遠野で遠野物語を読んできたって話

岩手県遠野市に行ってきた。「遠野物語」を読みに。


始発で東京駅へ向かう。JR線のホームは、昨夜の喧騒の名残があった。なぜサーモンスライスがばら撒かれているの?

集合場所の遠野駅まで、新幹線、釜石線、と乗り継いで向かう。今回の旅のメンバーは三人。ひとりは職場の人。もうひとりはお客さん。勢いで遂行されることになった今回の旅。なんとも言えないメンバーでの旅なので、少し不安。何話せばいいのか分からなくて緊張する。朝早かったのに、車内では一睡もできなかった。

新花巻駅で乗り換える時、お客さんとすれ違った、ような気がする。でも、私は関係性を築けていない人との長距離移動が苦手。気づかないふりをしてやり過ごす。すんません。

岩手県、宮沢賢治色が強かった。地下道の天井、星空。釜石線のホーム看板、星空。銀河鉄道の夜インスパイアがすごい。駅の看板に「魚河岸」の文字があった。お〜、マイフェイバリットおでんの具、魚河岸揚げ。ここが名産だったのですね。


銀世界だった。車窓からの景色、どこを見ても雪、雪、雪。目を開けていられないのは、眩しさのせいなのか、眠さのせいなのか。


10時すぎに到着。駅で合流する。やっぱりさっきの人、お客さんだったわ。本が配られて、いよいよ旅の始まりを実感。

いたるところに河童。


まずは腹ごしらえ、ということでお昼を食べに行く。しかしながら、この時間、この街、開いているお店がない。Googleマップで「お昼ご飯」と検索して出てきた、商業施設内のフードコートを目指す。

郷土料理のひっつみがあった。豚汁みたいなもんだよね、これだけだと少ないかな〜と思い、カツカレーも注文。番号を呼ばれてびっくり。ひっつみを舐めていた。お椀がめちゃめちゃ大きい。

想像を超えてきた。あったかくてもちもち。


お腹ぱんぱん。バスに乗り、山口へ向かう。中心部からかなり離れた場所。第21話・山口の薬師堂58話・河童淵(姥子淵)18話・山口孫左衛門の屋敷跡111話・デンデラ野、などなど。しんとした空気の中、歩いて、本を開き、読む。物語の情景が、より浮かんでくるような気がした。


薬師寺の鳥居。
河童淵 with 遠野物語。


移動中は、橋にかかっていた氷柱を雪で落としたり、雪でつくった小舟とあひるを川に流してみたり。雪合戦もしたし、雪だるまも作った。いい感じの枝も拾ったし。寒いけど、元気に歩を進める。

雪だるま。擬態してる。
でか氷柱。


…はずだった。次第に天候が怪しくなる。強くなっていく雪。猛吹雪の中、1時間ほど歩いて伝承園へ。まじで寒い。寒すぎて私の髪の毛はパリパリに凍っていた。歩いている人もいない。たまに横を通る車をヒッチハイクしようかと思ったけれど、乗車率が高くて断念。どんどんみんなの元気がなくなっていく。伝承園は絶対あたたかいはず。行き先に見える大きな建物を指して「あれは伝承園?」「違う」のやりとりを3回ほど繰り返した。

なんとか伝承園に到着。と思ったら駐車場だった。トイレと自動販売機があったので、ここで休憩することに。あったか〜い飲み物、染み渡った〜。手が冷たすぎて、缶に触れた部分が黄色い。恐ろしい色になっていた。

伝承園。屋内施設。きっとあたたかいだろう。そう思っていた。けど否〜〜〜!否です。ちょうど工事期間だったからか、トイレも自販機も使用不可。屋内も暖房なし。まあ、通常時の我々だったら大丈夫でしたよ。でも、雪の中を3時間ほど歩き続けた私たちのからだはひえひえ、足はぐしょぐしょ。しかも、オシラ堂のある菊池家曲り家内は土足厳禁のため、靴を脱がなければならない。歩く度につま先をすり抜ける風に怯えながら進む。

でも、面白い施設だった。河童、座敷童、オシラ様についての解説もあったし、遠野物語の語り手である佐々木喜善の人生史もみることができる。次は万全の状態でまわりたい。

伝承園からはタクシーを使った。待っている間に近くの河童淵を見に行ったが思ったよりも遠い。伝えた場所に私たちがいないのでタクシーのおじちゃんに怒られた。ごめんなさい。この時に見た空、不思議な色合いで美しかった。

物悲しい水色。


遠野駅に戻り、午前中に訪れた商業施設「とぴあ」へ。夜食と次の日の朝食を手にいれる。スーパーを物色している間、お客さんがそわそわし始める。なんだ?と思って聞くと、どうやらラーメンを食べたいらしい。今から夜ご飯だぞ!?と思いつつ、あったか〜いラーメンスープをからだ中に巡らせたいという気持ちは分かる。予約してもらっていたお店に行く前に、お昼を食べた「紙風船」へ再入店。お客さんと職場の人が幸せそうに麺をすする姿を眺めていた。


お待ちかねの夕食。遠野駅近くのイタリアン。カウンターで、マスターと話しながら。愉快なマスター。厨房内は暑いのか、半袖だった。牛すじ入りミネストローネ。白子のオーブン焼き。ランプ肉の炭火焼き。遠野のにんにくと生姜が使われたカルボナーラ。マーマレード、ゴルゴンゾーラ、はちみつのピッツァ。デザートに、プリンとジェラート。オンシーズンは、マスターが運営している牧場でとれた牛乳を味わえるとのこと。これはもう、再訪するしかない。

その後、おすすめしてもらった「つるや」さんに移動。裏メニューの酢焼きそばで〆て!とのことで注文する。初来店にしていきなり裏メニューを頼むという無礼をはたらきつつも、快く作ってくださった。ありがとうございます。酢のツーンとする香り。でも強すぎず、さっぱりして美味しい。麺が普段食べているものより、ずっと細かった。ところどころおこげになっているのがまたいい。

酢焼きそばです。


宿に戻り、買い出ししたお酒とおつまみとともに晩酌。数えてみると4回も乾杯していた。学生時代に戻ったかのような感覚。何を話したっけ。あかん、ここだけ記憶が薄い。

気づいたら日付を超えていた。慌てて外に出て、シャボン玉をしにいく。氷点下の世界で、シャボン玉は凍るのか。これを確かめたくて、スーパーでシャボン玉セットを購入していた。気温は確か、-9℃くらいだったはず。ちゃんと凍りました。飛んだすぐはなんともないけれど、しばらくすると周りがぼんやりと曇っていく。表面が凍ったシャボン玉、重くなるのかだんだん下がっていって、割れた後も破片がふよふよと漂っていた。次はもっとガチガチに凍らせたい。シャボン玉アート作りたい。

これだと凍ってるかわかんないな。


帰宅して、これまたスーパーで購入したヤクルト1000を飲んで就寝。湯たんぽがあたたかい。防寒対策がしっかりしているからか、自宅よりも快適に眠ることができた。


※サムネは、ミネストローネ。

サポートしていただける日が、いつか来るのかなあ。