コーヒーブレイク

「おーい」
「......」
「いきてるかー？」
「死んでる……」
「お、死亡確認」
「遺灰は海が見える丘に埋めてください……」
「はいはい覚えてたらね。で、原稿の調子はどうなの？」
「駄目なので開き直って休憩します」
「息抜いてる場合か？　もっと全集中しなよ」
「現代は鬼狩らなくても生きていけるから……」
「ヘタレがよ……」
「……あれ？　コーヒーの作り置き残ってなかったっけ？」
「そこに無ければ無いですね」
「牛乳は？」
「そこに無ければ……無いですね……」
「店員さん、仕入れしろとは言わんから発注してもらわんと……」
「まぁまぁ落ち着いて、人間誰でも失敗はするよ」
「君の話をしてるんだけどね……」
「いいじゃんいいじゃーん、わたしが淹れるより上手いんだしさぁ」
「俺はブラックでいいけど牛乳使うの自分じゃない？」
「わたしがいつまでもブラックに勝てないと思っていたら大間違いだぞ！」
「さいですか」
「お、信じてないな？　砂糖を多めに準備して待ってるがいい」
「はいはい」
「はいは一回で」
「はいはい」
「むぅ……まぁ許そう。頼むぞバリスタ」
「エスプレッソは淹れんけどね」
「……今ふと思ったんだけどさ」
「何でしょう？」
「しょっちゅうコーヒー淹れてるんだからコーヒーメーカー買ったほうが楽じゃない？　わたし別に反対しないよ？」
「欲しくないこともないけど……コーヒーブレイクの語源って知ってる？」
「語源とかあるの？」
「コーヒーブレイクと言うのは、コーヒー豆をミルでゴリゴリ砕いて──つまりブレイクしてストレス解消したことから来てるんだよ。つまり手回しミルを使うのは伝統に則った儀式ってワケ」
「うわ、絶対嘘なやつじゃん」
「いや本当だって、マジマジ。調べてみ？」
「わかったから早く淹れてよ」
「信用以前に関心が無い……お客さんアイスとホットどっちですか」
「アイスで」
「かしこまり」
「ガムシロ2個ね」
「ほいほい……はいよ」
「ご苦労さん。そんじゃ、かんぱーい」
「かんぱーい……何に？」
「……休憩に？」
「まぁ何でもいいけど」
「それじゃ頂きます……まだ苦い！」
「コーヒーだからねぇ……」
「牛乳さえあればこんなことには……」
「自己責任なんだよなぁ」
「よくこんな苦いのいっつも飲めるよね。わたしはやっぱり甘くないと駄目。もっと甘くていいな、うん」
「甘いのは嫌いじゃないけど、ちょい苦いくらいのほうが目が覚める感じで好きかな、俺は」
「ふーん……まぁわたしはどんどん砂糖入れるけどね！」
「それはどうぞ、ご自由に」